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エイベックス(株)【7860】の掲示板 2015/04/16〜2016/11/17

山田:この10年間でネットの世界は大きく変わりましたが、この10年は短かったですか。もっと本来はやるべきことがあったなという後悔はありますか。

■経済誌は僕が出るような雑誌ではない

 松浦:後悔というよりも、そもそも社長をやること自体が突然のことでしたから。

 正直に言いますけれども、これまで僕は経済誌などのインタビューにはほとんど出たことがない。なぜかというとコンプレックスがあったんです。僕が出るような雑誌じゃないと思ってしまう。「大好きだった音楽を作っていたら、会社が大きくなり、たまたま社長になってしまった」という思いがどうしてもある。大学時代に経済のことを一生懸命勉強して会社に入って叩き上げで社長になった、ということではない。ですから今日もドキドキしているんですよ。

 山田:この1年ぐらいで切り替えている感じでしょうか。

 松浦:昨年までは代表取締役が4人いる形だったわけですが、この6月からは僕1人になった。そういうこともあって、過去10年とは違う立場になった。これはもう変えなければいけないと。

 これまで、決算会見などは僕がやらなくても財務の最高責任者が「私がやりますよ」と言ってくれた。だって僕が出るよりも担当者のほうが詳しく話せるし、そもそも人の前で話すのは苦手だし、好きなほうではなかったので。だから、「出ないでも大丈夫と言ってくれるので任せます」という気持ちでいた。

 だけど、5月の決算会見に自分自身が出てみて、やっぱり自分で話すと違うっていうことがよくわかった。話の内容はさておき、人柄は直接会わないと伝わらない。それが会見に出たことで少しは伝わったのではないかと思うし、そこがやっぱり大事だと思いましたね。

 山田:ライブで実際に表情を見ながら話を聞くと情報のビット数が違うわけですね。

 松浦:僕がどんな人間なのか、ということは伝わったと思います。僕のことをネットでみるとよくわからない人になっているし、いったい何者なのか、という見方があったんだと思います。アナリストもそう思っていたはずなので、直接説明をするべきでした。

 山田:今回の変革を成功させるカギはなんでしょうか。

■若い社員にチャンスを回すようにしたい

 松浦:人ですね。ほんとにガラッと変えないといけない。今のエイベックスは昔からの会社みたいに、部長がいて課長がいる組織。このままだと若い社員に全然チャンスが回ってこない。少子高齢化で人数が減っているとはいっても、そもそもこのビジネスって若い人が盛り上がって初めて全体が盛り上がるものです。なるべく若いほうに若いほうに移していきたい。

 ただ、これまでの30年間で会社は急成長して、猫の手も借りたいという思いでさまざまな人が入ってきました。ですが、これから新たな制度を作るにあたっては、年長者であっても実力がなければさまざまなプロジェクトにも入れないということがありうると思います。

 とにかく若い社員にチャンスをあげないと、ほんとに頭のいいやつは辞めますよね。ここにいても上が詰まっていたらしょうがないって思って当然です。いま若手の社員とよく会って話をするんですが、不満が「うわーっ」て来るわけですよ。でもちゃんと聞いて答えてあげれば、それなりに収まるところもある。みんな思いを言う場所がなかったんですね。

 山田:グーグルでは毎週金曜日の午後、全世界の社員とトップがビデオカンファレンスを通じて直接対話するそうです。不満があればどんどん言え、と。

 松浦:アメリカ人だったらすごい意見がいろいろ出てくるでしょうね。下からも平気で突き上げをすると思うし。

 そういうことをやろうっていう案もありました。でも社員が多すぎて全員を集めた朝礼みたいなことができない。上から下へのメッセージというのは本当に伝わらなくなっているんですよ。

 これは僕の責任でもある。自分がいなくても会社がまわるようにしよう、と考えていた時期もあったので。なるべく社員と会わないようにしていた時期もある。ですが、完全に変えました。

(山田 俊浩)


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