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(株)スターフライヤー【9206】の掲示板 2016/04/15〜2019/09/16

国際定期便 復活の夢 

 5月の大型連休、黒い機体が台湾の桃園空港に到着した。連休中、北九州と台湾の間を計3往復するスターフライヤーのチャーター便だ。台北の空港では、消防車が放水のアーチで到着を歓迎した。こうしたセレモニーは、定期便就航の際によく行われるが、チャーター便では珍しい。
「そこまでやってくれたのか」。社長の松石禎己(62)は、台湾での歓迎ぶりを聞き、頬を緩めた。直前の4月、熊本地震が発生した。家屋の倒壊や土砂崩れなど、被害の映像は、台湾など海外にも流れた。九州の旅館・ホテルは団体客のキャンセルが相次いだ。松石は搭乗者数を心配した。だが、キャンセル客はほとんどなかった。3往復のうち2往復は、ほぼ満席となった。チャーター機で北九州空港に到着した観光客は、そこから大分・由布院や長崎・九十九島など、九州各地の観光地に出かけ、九州旅行を満喫した。

 「台湾のお客さまも黒の機体や、広いシート間隔に驚いていました」「お客さまから『サービスは洗練されており、心地よい。さすが日本で(顧客満足度)一番だ』と言われました」客室乗務員のこうした報告に、松石は手応えを感じた。スターフライヤーは今、チャーター便に力を入れている。

 保有機体の稼働率を高め、採算を改善する目的だ。平成27年度は、韓国との間で計38本のチャーター便を飛ばした。初めての台湾とのチャーター便も、目前の狙いはあくまで、保有機材の稼働率アップだ。だが、松石はチャーター便を通じて、将来の国際定期便の可能性を探る。
スターフライヤーは24年7月、北九州-韓国・釜山の定期便を新設した。国際定期便は起業以来、初めての試みだった。その後のアベノミクスによる円安効果もあり、訪日客は増加した。スターフライヤー釜山線の乗客数も、徐々に伸びた。
ところが、リースしていた航空機の返却にかかる費用が想定以上に高くなり、会社は25年度に30億円の最終赤字を計上した。再生には経営合理化が欠かせない。筆頭株主となった全日空の意向もあり、釜山線は26年3月に運休となった。唯一の国際線取りやめは、希望退職者の募集とともに、スターフライヤーの苦境を、内外に強く印象づけた。

 それだけに松石ら経営陣は、会社再生のシンボルとなる国際線復活を夢見る。

 経営効率化と原油価格の下落を背景に、27年度は過去最高となる25億円の最終黒字を達成した。業績のV字回復によって、29年~32年度に向けた投資資金も、27億円から39億円に積み増しできた。「全日空だって、国際線の赤字脱却に昭和61年の就航から18年もかかった。長期的な経営安定のために、もう一度、国際線に挑戦したい」

 松石は、30年度末に導入する新機材の就航先として、国際線も選択肢に入れる。スターフライヤーが使用するエアバス「A320」の航続距離は5500キロだ。本拠を置く北九州空港からは、中国や韓国、台湾、東南アジアの主要都市をカバーできる。「今は国内5路線だが、どこに何便飛んでいるか、何機の機体を保有しているか、即答できないほど大きな会社にしよう」

 松石は社内にこう語りスターフライヤーが再び上昇するには、規模拡大と同時に、中身の充実が欠かせない。松石が考える中身の充実とは、これまで磨いてきたサービスのさらなる充実であり、新たな「スターフライヤーらしさ」の創造だといえる。今年3月16日、北九州市門司区の「門司赤煉(れん)瓦(が)プレイス」に、新しい制服に身を包んだスターフライヤーの客室乗務員の姿があった。
就航10年の記念セレモニーの会場で、12月に導入予定の新制服を披露したのだった。
スターフライヤーの客室乗務員といえば、黒と白を基調にしたパンツルックだった。就航当時は業界初の取り組みで注目を集めた。だが、肝心の乗務員からは異論もあった。「お客さまとしゃがんで話すには、スカートの方が動きやすいんです」経営陣はサービス向上の観点から、制服一新に踏み切った。パンツスーツにスカートを加え、カットソーやベスト、ワンピースなど、上下9通りのパターンから乗務員が選べるようにした。さらにスターフライヤーは4月、30年度に導入する機材の客室仕様を検討するプロジェクトチーム(PT)を設立した。PTの議論では、座席の間隔を詰めて、座席数を増やす案も浮上した。座席数を増やせば、1回当たりの飛行の乗客が増えるかもしれない。
 だが、松石の考えは違った。