新機能のお知らせ
各銘柄ページに新設された「適時開示」タブより、最新の適時開示情報を簡単にご覧いただけるようになりました。
ぜひご利用ください。
【新機能】適時開示情報が閲覧可能に!
ここから本文です
Yahoo!ファイナンス
投稿一覧に戻る

ソフトバンクグループ(株)【9984】の掲示板 2016/10/17〜2016/10/20

ニュースを斬る
ソフトバンク孫社長、「必然」の10兆円ファンド
ジョブズとバフェットを融合した経営者への布石

大西 孝弘 日経ビジネス
2016年10月18日(火)

ソフトバンクグループの孫正義社長。8月の日経ビジネスのインタビューで「我々はプラットフォームに徹する。要するにパートナーシップモデルなんです」と語っていた。

 「やはり始まった」。10月14日、金融やIoTに詳しい関係者はこうつぶやいた。

 ソフトバンクグループは同日、サウジアラビアの公共投資ファンド(PIF)と共同で投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を設立すると発表した。

 最大1000億ドル(10兆円強)規模を目指し、IT(情報技術)関連企業に投資するという。ソフトバンクが今後5年で250億ドル以上、PIFが450億ドルを出資する方針だ。他にも投資家の出資を募る。
 ソフトバンクの孫正義社長は「ファンドは、今後10年でテクノロジー分野において最大級のプレイヤーとなることでしょう」というコメントを寄せた。

 同社は7月に、半導体設計専業の英アーム・ホールディングスの買収を発表した。その時からファンド設立やIoT関連企業の買収があるだろうと、業界筋ではささやかれれてきた。同社の幹部も「IoTで世界で勝つなら、当然の構えだ」と話す。なぜか。

 既にスマートフォンなどモバイルインターネットの分野で、米アップルや米グーグルが莫大な利益を上げているように、ITの世界は勝者総取りのビジネスだ。
 あらゆるモノがインターネットにつながるIoTにおいては市場規模が拡大し、その傾向に拍車がかかるだろう。

 従来はスマホのOS(基本ソフト)など、コア技術を押さえることが勝者の条件であったが、IoT時代においてはバリューチェーンが複雑で、1つのコア技術を押さえても勝者になれない可能性が高い。センシングから通信、データの統合や分析などハードからソフトまでバリューチェーンを垂直統合し、陣地をより多く押さえた企業が勝者になり得る。半導体設計という上流中の上流でシェアを押さえても、バリューチェーン全体への影響力は限定的だ。

 既に競合他社は垂直統合に動いている。米グーグルや米アップルが関連企業を次々と買収。日本企業でもトヨタ自動車が人工知能の研究所をシリコンバレーに設立したり、走行データを保管・分析するための新会社をマイクロソフトと設立したりしている。ファナックも半導体大手、米エヌビディアと技術提携するなど垂直統合の動きを見せている。

ロシア要人の翌日にサウジ要人と会談

 こうしたグループ作りのため、孫社長はアーム買収以降も世界中を飛び回り、日本政府の外交も活用している。

 安倍晋三首相は9月1日、首相官邸でサウジのムハンマド副皇太子と会談。翌2日にはウラジオストクでロシアのプーチン大統領と会談した。

 実はそのタイミングで、孫社長はウラジオストクに飛ぶ予定だった。IoTとは関係がないが、ロシアの送電会社のオレグ・ブダルギン社長と会い、電力網の国際連携に関する覚書を締結するためだ。孫社長の現地入りはキャンセルとなったものの、プーチン大統領は電力網の国際連携への支援を表明したという。

 その翌日の3日には孫社長は来日していたサウジのムハンマド副皇太子と会談。その時に撮影された膝と膝が触れ合わんばかりの距離に収まる二人の写真がある。まさにひざ詰めでファンド設立を議論したとみられる。

 サウジ側にも思惑がある。同王子は王位継承順位2位で次世代のサウジを担う人物であり、4月に改革構想「ビジョン2030」をまとめた。原油安で財政が悪化するなか、国家の持続的成長のために石油以外のビジネスの拡大を狙っている。実際、6月には配車サービス大手の米ウーバーテクノロジーズに35億ドル出資した。

 投資拡大を目論む中で、新たなパートナーとして目をつけたのがソフトバンクだった。中国・アリババ集団への投資実績などで、孫社長の手腕は世界的に知られている。

 一方の孫社長は、投資余力を高めることでIoTの陣取り合戦で先手を打てる。各国の独占禁止法は基本的に水平分業の視点からシェアを見て独占的な地位かどうかを判断しており、垂直統合にはあまり目を向けていない。IoTのバリューチェーンを押さえられれば、価格支配力が高まりそうだ。

 ファンドは、ソフトバンク戦略財務担当のラジーブ・ミスラ氏などに、ある程度任せる体制をとるだろう。ファンドの拠点はミスラ氏がいるロンドンに置く。世界中の情報が集まるうえに、アーム本社と近いという利点もある。

 ファンド設立の財務負担はどうか。

 ソフトバンクは今後5年間で少なくとも250億米ドルを出資するが、1年当たり平均では50億ドルとなり、従来と出資規模が大きく変わる訳ではない。

 14日の東京株式市場は好材料と受け止め、株価は一時、前日比4%高の6736円まで上昇した。

 SMBC日興証券の菊池悟アナリストは、「財務的に新たなマイナス要因にはならないだろう。次のアクションに注目したい」と指摘する。

左手で稼ぎ、右手で張る

 孫社長はかつて自身の経営スタイルを、著名投資家のウォーレン・バフェット氏に重ねてこう語った。

 「バフェットは左手に保険などキャッシュフローを生み出す会社を持ちながら、右手でコカ・コーラやジレットなどに投資している。我々はモバイル事業でキャッシュフローを生み、インターネット企業に投資する」。

 通信事業で収益基盤を築き、変動の大きなインターネット事業分野で相乗効果や利益の上積みを狙うといったイメージのようだ。その両手がどんどん巨大化し、構えているだけで迫力を持つようになっている。

 孫社長が尊敬する経営者は事業家においては米アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズであり、投資家においてはバフェットだ。この二人の役割を右手と左手に例えることもできる。

 孫社長は左手でIoT関連のイノベーションを起こし、右手でその価値を膨らませるイメージを持っているようだ。

 現代において、ジョブズとバフェットを兼ね備えた実績を持つ人物はいない。孫社長はその両者を兼ね備えた経営者になることを目指しているように見える。

 アーム買収とファンド設立で、ファイティングポーズは整った。これから孫社長による、怒涛のM&A(合併・買収)のラッシュが始まる。

ソフトバンクグループ(株)【9984】 ニュースを斬る ソフトバンク孫社長、「必然」の10兆円ファンド ジョブズとバフェットを融合した経営者への布石  大西 孝弘	日経ビジネス 2016年10月18日(火)  ソフトバンクグループの孫正義社長。8月の日経ビジネスのインタビューで「我々はプラットフォームに徹する。要するにパートナーシップモデルなんです」と語っていた。   「やはり始まった」。10月14日、金融やIoTに詳しい関係者はこうつぶやいた。   ソフトバンクグループは同日、サウジアラビアの公共投資ファンド(PIF)と共同で投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を設立すると発表した。   最大1000億ドル(10兆円強)規模を目指し、IT(情報技術)関連企業に投資するという。ソフトバンクが今後5年で250億ドル以上、PIFが450億ドルを出資する方針だ。他にも投資家の出資を募る。  ソフトバンクの孫正義社長は「ファンドは、今後10年でテクノロジー分野において最大級のプレイヤーとなることでしょう」というコメントを寄せた。   同社は7月に、半導体設計専業の英アーム・ホールディングスの買収を発表した。その時からファンド設立やIoT関連企業の買収があるだろうと、業界筋ではささやかれれてきた。同社の幹部も「IoTで世界で勝つなら、当然の構えだ」と話す。なぜか。   既にスマートフォンなどモバイルインターネットの分野で、米アップルや米グーグルが莫大な利益を上げているように、ITの世界は勝者総取りのビジネスだ。  あらゆるモノがインターネットにつながるIoTにおいては市場規模が拡大し、その傾向に拍車がかかるだろう。   従来はスマホのOS(基本ソフト)など、コア技術を押さえることが勝者の条件であったが、IoT時代においてはバリューチェーンが複雑で、1つのコア技術を押さえても勝者になれない可能性が高い。センシングから通信、データの統合や分析などハードからソフトまでバリューチェーンを垂直統合し、陣地をより多く押さえた企業が勝者になり得る。半導体設計という上流中の上流でシェアを押さえても、バリューチェーン全体への影響力は限定的だ。   既に競合他社は垂直統合に動いている。米グーグルや米アップルが関連企業を次々と買収。日本企業でもトヨタ自動車が人工知能の研究所をシリコンバレーに設立したり、走行データを保管・分析するための新会社をマイクロソフトと設立したりしている。ファナックも半導体大手、米エヌビディアと技術提携するなど垂直統合の動きを見せている。  ロシア要人の翌日にサウジ要人と会談   こうしたグループ作りのため、孫社長はアーム買収以降も世界中を飛び回り、日本政府の外交も活用している。   安倍晋三首相は9月1日、首相官邸でサウジのムハンマド副皇太子と会談。翌2日にはウラジオストクでロシアのプーチン大統領と会談した。   実はそのタイミングで、孫社長はウラジオストクに飛ぶ予定だった。IoTとは関係がないが、ロシアの送電会社のオレグ・ブダルギン社長と会い、電力網の国際連携に関する覚書を締結するためだ。孫社長の現地入りはキャンセルとなったものの、プーチン大統領は電力網の国際連携への支援を表明したという。   その翌日の3日には孫社長は来日していたサウジのムハンマド副皇太子と会談。その時に撮影された膝と膝が触れ合わんばかりの距離に収まる二人の写真がある。まさにひざ詰めでファンド設立を議論したとみられる。   サウジ側にも思惑がある。同王子は王位継承順位2位で次世代のサウジを担う人物であり、4月に改革構想「ビジョン2030」をまとめた。原油安で財政が悪化するなか、国家の持続的成長のために石油以外のビジネスの拡大を狙っている。実際、6月には配車サービス大手の米ウーバーテクノロジーズに35億ドル出資した。   投資拡大を目論む中で、新たなパートナーとして目をつけたのがソフトバンクだった。中国・アリババ集団への投資実績などで、孫社長の手腕は世界的に知られている。   一方の孫社長は、投資余力を高めることでIoTの陣取り合戦で先手を打てる。各国の独占禁止法は基本的に水平分業の視点からシェアを見て独占的な地位かどうかを判断しており、垂直統合にはあまり目を向けていない。IoTのバリューチェーンを押さえられれば、価格支配力が高まりそうだ。   ファンドは、ソフトバンク戦略財務担当のラジーブ・ミスラ氏などに、ある程度任せる体制をとるだろう。ファンドの拠点はミスラ氏がいるロンドンに置く。世界中の情報が集まるうえに、アーム本社と近いという利点もある。   ファンド設立の財務負担はどうか。   ソフトバンクは今後5年間で少なくとも250億米ドルを出資するが、1年当たり平均では50億ドルとなり、従来と出資規模が大きく変わる訳ではない。   14日の東京株式市場は好材料と受け止め、株価は一時、前日比4%高の6736円まで上昇した。   SMBC日興証券の菊池悟アナリストは、「財務的に新たなマイナス要因にはならないだろう。次のアクションに注目したい」と指摘する。  左手で稼ぎ、右手で張る   孫社長はかつて自身の経営スタイルを、著名投資家のウォーレン・バフェット氏に重ねてこう語った。   「バフェットは左手に保険などキャッシュフローを生み出す会社を持ちながら、右手でコカ・コーラやジレットなどに投資している。我々はモバイル事業でキャッシュフローを生み、インターネット企業に投資する」。   通信事業で収益基盤を築き、変動の大きなインターネット事業分野で相乗効果や利益の上積みを狙うといったイメージのようだ。その両手がどんどん巨大化し、構えているだけで迫力を持つようになっている。   孫社長が尊敬する経営者は事業家においては米アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズであり、投資家においてはバフェットだ。この二人の役割を右手と左手に例えることもできる。   孫社長は左手でIoT関連のイノベーションを起こし、右手でその価値を膨らませるイメージを持っているようだ。   現代において、ジョブズとバフェットを兼ね備えた実績を持つ人物はいない。孫社長はその両者を兼ね備えた経営者になることを目指しているように見える。   アーム買収とファンド設立で、ファイティングポーズは整った。これから孫社長による、怒涛のM&A(合併・買収)のラッシュが始まる。