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るんるん♪の掲示板

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  • 2021/06/18 08:13
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当社が投資の勧誘を目的としているものではありません。

  • ソニーのSnapdragon 888搭載フラグシップ「Xperia 1 III」を写真でチェック

    ソニーから、Xperiaシリーズ最新モデルとして発表された「Xperia 1 III」と「Xpera 10 III」。今回、外観のみとなるが、いち早く実機を撮影する機会を得たので、それぞれの実機写真を紹介する。

    ■ Xperia 1 III

     Xperia 1 IIIは、Xperia 1 IIの後継として位置付けられる、Xperiaシリーズ最新のフラッグシップモデルだ。デザインは従来モデルから大きく変わっておらず、ディスプレイ側から見ると、見た目にはほとんど違いが感じられない。

     ただ、Xperia 1 IIIでは背面ガラスがフロスト仕様(いわゆるすりガラス)となっているため、Xperia 1 IIのような光沢感はあまりなく、落ち着いた印象だ。光沢感の強いXperia 1 IIのほうが高級感があるものの、このあたりは好みによって印象が変わるだろう。個人的には、フロストガラスの方が指紋の痕がはっきりと残らないため、好印象だった。

     今回は5G Sub6対応モデルのみ手にできたが、サイズ感はXperia 1 IIとほとんど違いが感じられず、手にした印象もXperia 1 IIとほとんど変わらない。重量もXperia 1 IIから5gほど重くなっているが、こちらも違いは感じられなかった。とはいえ、やや大ぶりな筐体なのは従来同様なので、手の小さな人には少々手に余ると感じるかもしれない。

     背面カメラ部は、従来モデルからひとまわり大きくなっている。これは、望遠レンズに屈曲光学系レンズを採用していることが影響している感じだ。ただ、カメラ部の盛り上がりは、近年のスマートフォンの中では低い方で、こちらは従来モデルとほとんど変わっていない。

     前面カメラは800万画素で、従来同様にディスプレイ上部ベゼルに配置。そのため、ディスプレイには切り欠きやパンチホールはない。

     ポート類は、下部側面にUSB Type-C、上部側面に3.5mmオーディオジャックを配置。また左側面にはSIMカードトレイがある。SIMカードトレイにはNano SIMを2枚装着可能で、一方はmicroSDカードとの排他利用となる。

     右側面には、上からボリュームボタン、指紋認証センサー一体型電源ボタンがあり、Xperia 5 IIより搭載されている「Googleアシスタントキー」を新たに搭載。また、シャッターボタンも引き続き搭載しているが、操作性を高めるためにボタン上部がエンボス加工されている。

     専用ケースのスタンド機能付きカバーは、Xperia 1 IIIを横向きに立てて置けるスタンドが背面に用意されており、動画コンテンツを視聴する場合などに便利。また、裏面カメラまわりはケースが黒で塗装されており、光が反射して映り込まないように配慮されている。

    ■ Xperia 10 III

     Xperia 10 IIIは、Xperiaのミドルレンジモデルとして初の5G対応モデルだ。とはいえ、デザインは従来モデルを踏襲しており、Xperia 1 III同様に見た目にはジュライモデルから大きな変化は感じられない。

     実際に手にしてみると、Xperia 1 IIIよりコンパクトで持ちやすいという印象だ。ただ、従来モデルのXperia 10 IIIと持ち比べでは、ほとんど違いは感じられなかった。とはいえ、Xperia 10 IIと並べてみると、サイズがコンパクトになっていることがはっきりわかる。

     カラーは、ブラック、ホワイト、ブルー、レッドの4色で、こちらはXperia 1 IIIに比べるとポップな印象で、このあたりはミドルレンジモデルらしい部分だろう。

     ディスプレイ部は、Xperia 1 III同様の対称デザインを採用しており、バランスの取れた美しいデザインと感じる。

     背面カメラは従来モデル同様の3眼仕様だ。レンズの仕様は異なるものの、見た目にはその違いは全くと言っていいほど分からない。カメラ部の盛り上がりも同様だ。前面カメラは、こちらもディスプレイ上部のベゼル部に搭載する。ディスプレイに切り欠きやパンチホールがない点も従来同様だ。

     下部側面にはUSB Type-Cポート、上部側面には3.5mmオーディオジャックを配置。左側面にはSIMカードトレイがある。右側面の物理ボタンは、上部からボリュームボタン、指紋認証センサー一体型電源ボタン、シャッターボタンとなる。

     専用ケースのスタンド機能付きカバーは、仕様はXperia 1 IIIと同じだ。

    PC Watch,平澤 寿康

  • ソニー、5G対応新フラッグシップ「Xperia 1 III」。ミドルレンジの「Xperia 10 III」も

    ソニーは4月14日、5G対応スマートフォン新モデルとなる「Xperia 1 III」、「Xperia 10 III」の2機種を発表した。いずれも日本を含むワールドワイドで2021年初夏に発売予定。また「Xperia 5 III」も発表しているが、こちらは日本での発売は未定。

    ■ Xperia 1 III

     Xperia 1 IIIは、Xperiaシリーズの最新フラッグシップモデル。

     デザインは従来モデルを踏襲。メタルフレームとガラスを組み合わせ、全面は上下、左右のベゼル幅を揃えた対称デザインを採用することで、シンプルさと高級感を両立。

     背面はフロストガラス仕様で、従来モデルのような光沢感が抑えられている。また、前面と背面のガラスには米Corning製強化ガラス「Gorilla Glass Victus」を採用しており、強度も高められている。カラーはフロストブラック、フロストグレー、フロストパープルの3色を用意する。

     サイズは71×165×8.2mm(幅×奥行き×高さ)、重量はSub6モデルが186g、Sub6/ミリ波対応モデルが188g。

     機能面で大きな強化ポイントとなっている背面カメラは、超広角、広角、望遠、3D iToFセンサーの4眼仕様。全レンズがZEISSレンズで、T*コーティングが施されている点は従来同様だが、望遠レンズは新たに屈曲光学系レンズを採用している。

     新採用の望遠レンズは、焦点距離を70mmと105mm(いずれも35mm換算)に切り替えて利用できる可変式望遠レンズとなっている点が大きな特徴。シームレスな光学ズームではないが、焦点距離を切り替えることで高品質な望遠撮影を可能としている。また、光学式手ブレ補正機能も搭載する。センサーは1/2.9型デュアルピクセルセンサーを採用。なお、ソニーによると、デュアルピクセルフォトダイオードセンサーに焦点距離切り替え型望遠レンズを組み合わせてスマートフォンに搭載するのは世界初とのこと。

     超広角レンズは16mm/F2.2で、1/2.6型 1,200万画素デュアルピクセルセンサーとの組み合わせ。広角レンズは24mm/F2.2で1/1.7型 1,200万画素デュアルピクセルセンサーとの組み合わせで、光学式手ブレ補正に対応。全レンズでデュアルピクセルAFにも対応する。

     また、ソニーのデジタルカメラ「α」シリーズが持つスピード性能をXperiaへ、というコンセプトのもと、カメラの機能面も進化している。

     全レンズでコンティニュアスAFに対応するとともに、フォーカスを合わせたい被写体をタッチすると、AIで物体を認識して追い続けるリアルタイムトラッキング機能を搭載。最大60回/秒のAF/AE演算と、AF/AE追従の最大20コマ/秒高速連写に対応するのは従来同様だが、画像処理アルゴリズムの進化によって、連写撮影中に画像を複数枚重ね合わせることによるノイズ低減を実現し、薄暗い場所でも鮮明な写真が撮影できる。このほかにも、独自AIでデジタルズーム時の画質劣化を補正するAI超解像ズームの搭載や、背景ボケ機能の進化などを実現した。

     加えて、Xperia 1 IIから採用された本格撮影アプリ「Photography Pro」に、より簡単な操作を実現し、一般的なスマホカメラに近い操作を実現した「BASICモード」が追加されている。これに伴い、標準のカメラアプリが廃止となり、Photography Proが写真撮影の標準アプリとして設定されてる。

     動画撮影では、動画撮影時の手ブレ補正機能が進化。FlawlessEye対応のハイブリッド手ブレ補正機能の採用で、暗所での歩きながらの動画撮影でも手ブレが抑えられるという。また、本格動画撮影アプリ「Cinema Pro」では、4K HDR 120fpsのスローモーション撮影にも対応。このほかUSB Type-Cにデジタル一眼カメラなどを接続して外部ディスプレイとして利用することも可能だ。

     ディスプレイは、アスペクト比21:9の6.5型有機ELパネルを採用。表示解像度は1,640×3,840ドット、HDR表示、リフレッシュレートは最大120Hzに対応。スマートフォンで4K/HDR/120Hzディスプレイの搭載は世界初だ。また、従来同様にHDR/BT.2020/10bitカラー対応のクリエイターモードを搭載するとともに、出荷前に全個体でディスプレイのキャリブレーションも実施される。

     このほか、240Hz残像低減技術、240Hzのタッチサンプリングレート対応で、プロレベルのゲームプレイにも対応。ゲーム関連機能としては、「ゲームエンハンサー」にサウンドセッティング機能を追加、120fpsでのゲーム録画に対応、録画ボタンをタッチすると約30秒前から録画される「RTレコード機能」などの強化も実現している。

     オーディオ機能は、従来同様に3.5mmオーディオジャックを備えるとともに、ハイレゾ音源に対応。有線ヘッドフォン使用時の最大音圧を約40%向上し、ひずみも低減しているという。

     前面のステレオスピーカーは従来から音圧を約40%向上した「フルステージステレオスピーカー」へと進化。Dolby Atmosはソニー・ピクチャーズとの協業による独自チューニングを施すことで、音の定位感や立体感を忠実に再現。さらに、立体音響「360 Reality Audio」を本体スピーカで再生できる。

     搭載SoCはSnapdragon 888 5Gで、メモリは12GB、内蔵ストレージは128GB/256GBまたは512GB。外部ストレージとしてmicroSDカードも利用可能。外部ポートはUSB Type-Cと3.5mmオーディオを用意。

     5Gモバイル通信は、Sub 6対応モデルとSub 6/ミリ波対応モデルを用意。グローバルモデルでは、SIMトレイにnano SIMを2枚装着でき、一方はmicroSDカードとの排他となる。

     バッテリ容量は4,500mAhで、30分で約50%の急速充電や、3年間劣化しにくい長寿命を実現。Qi準拠のワイヤレス充電や、ほかのQi対応機器を充電できる「おすそわけ充電」にも対応する。防水/防塵仕様はIP65/68準拠。

    ■ Xperia 10 III

     Xperia 10 IIIはXperia 10 IIの後継となるミドルレンジモデルで、Xperiaシリーズのミドルレンジモデルとして初の5G(Sub6)対応となる。

     こちらもデザインは従来モデルを踏襲。ディスプレイ面は上下、左右のベゼル幅が均一の対称デザインを採用するとともに裏面にもガラスを採用し、シンプルながら高級感を実現。ガラスにはGorilla Glass 6を採用し、強度も優れる。もちろんIP65/68準拠の防水/防塵仕様となる。

     サイズは68×154×8.3mm(幅×奥行き×高さ)と、従来モデルからの小型化を実現。重量は169g。カラーは、ブラック、ホワイト、ブルー、ピンクの4色を用意。

     ディスプレイはHDR表示対応の6.5型有機ELパネル。アスペクト比21:9、表示解像度1,080×2,520ドット。マルチウィンドウ機能が進化し、表示中のウィンドウ上に別のウィンドウを重ねて表示できるポップアップウィンドウ機能が追加されている。

     背面カメラは、16mm/F2.2、1/4型800万画素の超広角、27mm/F1.8、1/2.8型1,200万画素の広角、54mm/F2.4、1/4型800万画素の望遠の3眼仕様。とくに動く被写体や暗いシーンでの撮影を強化している。プレミアムおまかせオートにペット認識機能が追加され、動くペットもぶれずに撮影できる。また、最高10fpsの高速連写時にも自動で明るさを最適化する。

     SoCはSnapdragon 690 5Gを採用し、メモリは6GB、内蔵ストレージは128GB。コネクタはUSB Type-Cと3.5mmオーディオジャックを用意。IP65/68準拠の防水・防塵仕様にも対応。バッテリ容量は4,500mAhで、Xperia 1 III同様に3年間劣化しにくい長寿命仕様となっている。

    ■ Xperia 5 III

     Xperia 5 IIの後継モデルとなるXperia 5 III。SoCはSnapdragon 888 5Gを採用し、Xperia 1 IIIと同じ背面カメラを搭載。ディスプレイは6.1型のフルHD+有機ELディスプレイを搭載。筐体はXperia 5 IIよりわずかに小型化されている。2021年初夏にワールドワイドで発売予定だが、日本での発売は未定だ。

    PC Watch,平澤 寿康

  • ミッドレンジ初の5G「Xperia 10 III」。イヤフォンジャック搭載

    ソニーモバイルコミュニケーションズは、Xperiaのミッドレンジモデルで初めて5G通信に対応した「Xperia 10 III」を初夏以降に日本を含む国・地域で発売する。カラーはブラック、ホワイト、ブルー、ピンクの4色。価格は未定。本体色に合わせたスタンド付きカバー「Style Cover with Stand」も展開する。

    Xperia公式YouTubeアカウントにて、新製品の紹介ビデオも公開。なお、動画内では「Xperia 1 III」「Xperia 5 III」も同時に発表。「Xperia 10 III」は別記事を参照のこと。「Xperia 5 III」については日本国内での取り扱いは未定となっている。

    6型でアスペクト比21:9のHDR対応有機ELディスプレイを搭載。3年経っても新品時と比較して80%を切らない、という劣化しにくいバッテリー(4,500mAh)を搭載。5Gへの対応と大容量を搭載しながら、外形寸法は154×68×8.3mm(縦×横×厚さ)、重量169gで、Xperia 10 II(157×69×8.2mm/151g)よりも縦3mm、横1mm小型化しているのも特徴としている。

    カメラは16mm/F2.2、27mm/F1.8、54mm/F2.4のトリプルレンズを搭載。動く被写体や暗いシーンを強化したとしている。

    標準カメラアプリにて、被写体やシーンを自動で判別して撮影できる「プレミアムおまかせオート」に新しく「ペット認識」を搭載。犬や猫を認識するとシャッタースピードとISO感度を最適化し、フォーカスの合った撮影ができるとしている。

    また、子どもなどの動く被写体の撮影に使える高速10コマ/秒の連射機能では、フレームごとに自動で明るさを最適化する機能を搭載した。

    21:9の縦長ディスプレイを活かしたマルチディスプレイも強化。最大3画面表示できるようになり、よりスムーズなマルチタスクをサポートするとしている。アプリショートカットやマルチウインドウへのアクセスも簡略化し、使い勝手を向上したとしている。

    3.5mmステレオミニ端子を装備。BluetoothコーデックはLDACもサポートする。圧縮音源などをハイレゾ相当にアップコンバートする従来のDSEE HXから、AI技術を利用する「DSEE Ultimate」をXperia 10 IIIでも採用した。

    SoCはQualcomm Snapdragon 690。メモリは6GB。ストレージは128GB。インターフェイスはUSB-C。

    横置きにして動画視聴などをサポートするスタンド付きカバー「Style Cover with Stand」は、握り心地、触り心地の良い素材を採用。新たに抗菌素材によるコーティングも施している。

    AV Watch,野澤佳悟

  • 映像と音に包まれる新感覚! ソニー最新5Gスマホ「Xperia 1 III」「Xperia 10 III」速報レポート

    ソニーが、Xperiaに新しい最上位5G対応モデル「Xperia 1 III(エクスペリア ワン マークスリー)」と、ミドルレンジモデル「Xperia 10 III(エクスペリア テン マークスリー)」を発表しました。ひと足早く触れることができたグローバルモデルのファーストインプレッションを報告します。

    ソニー「Xperia 1 III」「Xperia 10 III」の詳細を写真で紹介

    Xperia 1 IIIとXperia 10 IIIはそれぞれ日本を含む世界の各国・地域で、今年の初夏以降に発売予定の5Gスマホです。ミドルレンジのXperiaに初めて5G対応モデルが投入される形となります。国内の販売価格は明らかにされていませんが、それぞれ現在販売中の「II」の後継機になるモデルです。参考までに、Xperia 1 IIの発売当時価格が12万円前後、Xperia 10 IIは4~5万円台でした。

    モバイルゲームが快適に楽しめる!120Hz駆動のディスプレイを採用
    約6.5インチの4K/HDR有機ELディスプレイを搭載。Xperiaとして初めて120Hz駆動のパネルを搭載しました

    Xperia 1シリーズはソニーがテレビやカメラ、オーディオプレーヤー等で培ってきたエンターテインメントやデジタルクリエーションの技術を総まとめにしたフラッグシップスマホです。2019年にXperia 1として新しいスタートを切ってから、早くも3世代目となりました。

    アスペクト比を21:9という映画館のスクリーン比率に近づけた、約6.5インチのシネマワイドディスプレイは健在。Xperia 1 IIからのハイライトである4K/HDR対応に加えて、新しく120Hz駆動のパネルを採用しました。

    例えば、最大120コマ/秒のハイフレームレートで制作されているゲームコンテンツが、より滑らかに表示されるなどの効果があります。タッチパネルの応答速度も最大240Hz対応なので、動画表示の滑らかさに加えてタッチ操作の応答感度の良さも実感できそうです。残念ながら、今回筆者が触れてきたグローバルモデルは、まだディスプレイの機能が未完成でした。なので、Xperia 1 IIIによる動画視聴、ゲーミング体験の報告はまた別の機会に譲りたいと思います。

    4つの焦点距離を3つのレンズでカバーするXperia 1 IIIのカメラ
    「3つのレンズ」で「4つの焦点距離」を実現するメインカメラユニット

    Xperia 1 IIIは、本体の背面に「3つのレンズ」で「4つの焦点距離」を実現するメインカメラユニットを搭載しました。縦に並ぶ3つのレンズは、上から16mmの超広角、24mmの広角、間にオートフォーカス性能の向上を実現する3D iToFセンサーを挟み、最下段に2つの焦点距離を併せ持つ可変式望遠レンズになります。スマホのカメラアプリからズーム比率を変えると、内部でレンズユニットが70mmと105mmの焦点距離に合わせて形が変化する仕組みです。

    すべてのレンズユニットには光量を多く取り込めるレンズと、感度の高いデュアルフォトダイオードセンサーが搭載されています。さらに広角、望遠レンズには光学式手ブレ補正も載せて、明るく高精細な写真・動画の撮影を可能に。3つのレンズはすべて画質に定評のあるT*(ティースター)コーティングを施したツァイスレンズ。ソニーがデジタル一眼レフカメラのαシリーズで培ってきた高速オートフォーカス、画面タップで選択した被写体に焦点を合わせながら自動追尾できるリアルタイムトラッキングの機能など、まさに「デジタル一眼顔負け」な機能が満載です。

    Xperia 1 IIIでは従来のXperiaシリーズにプリインストールされていた、標準の「カメラ」アプリが廃止されました。ソニーのカメラシリーズ「α」、「サイバーショット」のユーザーインターフェースや機能に近づけた「Photography Pro」をメインのカメラアプリとしたことが理由です。筆者はふだん、ソニーのデジタルカメラを使っているので、使い勝手の近いPhotography Proは扱いやすく感じますが、スマホのカメラに凝った機能は要らないという方も多くいると思います。その点、Photography Proはユーザーインターフェースを「ベーシックモード」に切り換えると、従来のカメラアプリに近いシンプルな撮影が楽しめるので安心です。前述の通り、今回触れた実機はカメラ機能がまだ動いていなかったため、本格的なハンズオンレポートはまた後日にしたいと思います。

    内蔵スピーカー&イヤホン出力の音がパワーアップした
    前面に搭載するスピーカーユニットを改良しています

    音楽や動画の再生性能も進化した、Xperia 1 IIIの「オーディオ」についてはグローバルモデルの実機による体験ができたので、インプレッションを報告します。

    注目したいポイントが大きく2点あります。ひとつは本体に内蔵するスピーカー、および3.5mmヘッドホンジャックからの出力がパワーアップして、いっそうメリハリの効いたサウンドになったことです。

    ソニーではこれらの高音質化について、本体内部の設計とパーツの選定に見直しをかけつつ、ソフトウェアの改善を図ることで実現したと説明しています。ステレオスピーカー、およびヘッドホンジャックから出力されるサウンドの音圧(音の密度)は約40%アップしました。ボリュームを上げた時に音が歪まないように余裕を持たせたことにより、特に騒音に囲まれがちな外での音楽再生が快適になります。

    Xperia 1 IIIのサウンドをソニーのデモルームで試聴しました。内蔵スピーカーによるステレオ音源の再生ではボーカルの音像がより前に押し出され、迫力のあるサウンドが味わえます。バンドの楽器は、それぞれ鳴っている位置がはっきりと捉えられる定位の鮮明さが特徴的でした。

    動画のサウンドをXperia 1 IIと比べてみると、Xperia 1 IIIは内部スピーカーボックスの構造を変えたことで低音がビシッと引き締まりました。ドルビーアトモスに対応したサラウンドコンテンツを再生すると、高さ方向に音場が広がり、細かな効果音の粒立ちがはっきりとしたようです。

    ソニー独自の360度音楽体験にフル対応
    Xperia 1 IIIにはフロストブラック/フロストグレー/フロストパープルの3色カラーバリエーションが揃います

    そしてもう1つの注目ポイントが、ソニー独自の立体音楽体験技術である「360 Reality Audio」の高音質再生に、Xperia 1 IIIが対応したことです。360 Reality Audioは、対応する音源を配信するアプリと組み合わせて、あらゆるヘッドホン・イヤホンとの組み合わせで手軽に楽しめる音楽体験ですが、内蔵スピーカーで360度全天球の周囲に広がる没入型音楽体験を味わえるスマホは、Xperia 1 IIIが初めてとなります。

    Xperia 1 IIIにプリインストールされる360 Reality Audioの音源を聴きましたが、スマホのスピーカーから鳴っていることが信じられないほど豊かに広がるサウンドは圧倒的。背後や足下にまで広がる音の生々しい包囲感と、縦横無尽に音源が移動しながら鳴り響く感覚は、360 Reality Audio独特の魅力。初めて体験した方にもすぐに“違い”がわかると思います。

    360 Reality Audio体験を満喫するためには、対応する音楽コンテンツが必要です。2021年4月14日時点では、日本国内で360 Reality Audioの音源を配信するサービスはAmazon Music HDしかありません。Xperia 1 IIIが日本で発売される頃に、どの音楽配信サービスで360 Reality Audioが楽しめるようになるのかはまだ不明です。本機には通常のステレオ音源にバーチャライズ処理をかけて、360 Reality Audio風の立体サウンドに変換する「360 Spatial Sound」という機能も搭載されます。まずはこちらからXperia独自のオーディオ体験を満喫するとよいでしょう。

    意外と本命はこっち!? 5G対応「Xperia 10 III」の魅力
    女性も片手で持ちやすいサイズ感を実現した約6.0インチのXperia 10 III

    Xperia 1 IIIはソニーの4Kテレビ、ゲーム機のPlayStation、デジタルカメラにオーディオのプレミアムモデルを愛するファンも、唸らせるハイクオリティ&高機能の最強フラッグシップモデルになりそうです。

    本機には4G LTEと高い互換性を持つ5G Sub6のほかに、さらにパフォーマンスに優れた5Gミリ波に対応するモデルが揃うようです。5Gミリ波対応のXperiaは、今年プロフェッショナルモデルの「Xperia PRO」が国内で発売されています。Xperia 1 IIIも、ミリ波とSub6の両対応モデルが日本で発売される可能性が高いと思います。

  • >>2510

    もうひとつの新製品であるXperia 10 IIIも5G Sub6のネットワーク通信に対応する新しいスタンダード機です。現行モデルのXperia 1 IIよりも本体サイズを小型化しながら、バッテリーの容量を900mAhほどアップして4500mAhに。アスペクト比が21:9のHDR対応ディスプレイ、有線・無線接続によるハイレゾリューションオーディオ体験などエンターテインメント性能も充実。カメラ構成は、明るく高精細な写真・動画が撮れるトリプルレンズ仕様です。

    新しいXperiaには純正のスタンド機能付きカバーが発売されます

    Xperia 10 IIは現在、日本国内では携帯電話事業者を通じてのみ販売されています。Xperia 10 IIIは機能と性能のバランスがよく、デザインがとてもスタイリッシュなスマホなので、Xperia 1 IIのようにSIMロックフリーの端末をソニーの直販サイト等で発売すればかなり注目されるのではなでしょうか。筆者もぜひ1台買いたいです。各新製品の国内モデルに関連する詳報を期待しながら待ちましょう。

    山本 敦

  • ソニーGの1.1兆円「史上最高益」決算、ドル箱“ゲーム・エンタメ”事業の現状とは?
    …2021年の展望を探る

    売上高8兆9994億円。純利益は前年比でほぼ倍増して1.1兆円。ソニーグループ(以下、ソニー)の2020年度連結業績は、最終利益で「史上最高益」という好業績で着地した。

    好調さの牽引役は、過去にも言及してきたとおり「ゲーム」だ。いわゆる「巣ごもり需要」と「PlayStation 5(PS5)需要」が重なっての結果と言える。一方で、不調が続く家電やイメージセンサー、映画事業へのマイナス影響は続いており、今後への懸念もある。

    通期決算に合わせて公表した2021年度の業績予想では、営業利益・最終利益ともに減益を見込むものの、売上高はさらに成長するという、手堅い予想をしている。

    ソニーの好調は2021年度も続くのか。決算説明会の発言も交えながら「ソニーの今」を深掘りしていこう。

    ソニーの強さを支える「ゲーム事業」の強さ
    冒頭の通り、ソニーの2020年度決算は、数字の上では「絶好調」の一言に尽きる。

    売上高・最終利益ともに、ソニーとしては過去最高の結果となった。2021年2月に発表した第3四半期の決算にて「純利益1兆円超」が予告されていたこともあり、結果自体を驚く声は少ない。むしろ、ゲームなどの好調を背景に、より高い利益水準を予想していたアナリストもいたほどだ。

    事業セグメント別に見ると、利益に大きく貢献したのは「ゲーム」と「金融」。2019年度との比較で言えば、圧倒的に大きく伸びたこの2分野だ。

    とはいえ、改めて見れば、営業利益で大きなマイナスになったのはイメージセンサーを中心とした「イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)」分野くらいというのは、不調の事業も含めて状況に適切な対応を打ってきた結果、と言える。

    ゲームについては、やはり稼ぎ頭であり、利益貢献度も高い。売上高は前年比で34%増、2兆6563億円というビジネス規模になった。

    ゲーム事業の絶好調には、ポイントが2つある。

    いわゆる「巣ごもり需要」を軸とした、オンラインからの収益拡大と、PS5の立ち上げに伴う売り上げ増加だ。

    ネットワークからの販売比率の増加は、そのままソニーのプレイステーション向けネットワークへの依存度となり、ネットワークサービスの収益増加・ゲーム機としてのアクティブユーザー数増加につながり、ソニーにとってはビジネスの安定感が増すことを意味する。

    決算の補足資料として公開された図表には、PS4やPS5の販売台数、ソフトの販売本数に加え、「デジタルダウンロード比率」も記載されている。

    2020年度を見ると、コロナ禍がスタートした第1四半期と第4四半期で、ソフト販売数量のうち、ネットワークからのダウンロード販売比率は70%を超えている。

    ソニーグループ副社長兼CFOの十時裕樹氏は、この“好調”を「巣ごもり需要と季節要因によるもの」と説明する。2021年度以降も好調を維持すべく努力はするだろうが、すっと7割越えが続くわけでもない……と予測しているのだろう。

    通常、新しいゲームハードウエアの立ち上げ年は、マーケティング費や製造・研究開発コストなどが収益を圧迫し、「売り上げは上がっても、利益は大幅に下がる」ものだった。だがPS5では、ネットワークから生まれる収益を背景に、そこまでの収益悪化はない。

    PS5自体は「戦略的な値付け」(十時CFO)=製造原価を下回る価格で販売されているため、短期的には販売数量の増加は収益を圧迫するのだが、「そこまで影響は大きいものではなく、2021年度中に、周辺機器などを含めたトータルの売り上げでカバーできる」(十時CFO)。

    課題はやはりPS5の台数確保だ。

    半導体不足の影響もあるが、その他の要因もあり「(PS5の生産は)すぐに数を増やせる状況にはない」と十時CFOはいう。とりあえず、2021年中にはPS4の2年目と同等以上となる1480万台以上の出荷を目指す、としている。

    日本が軸になった「音楽」「スマホ」事業
    売り上げ拡大・利益貢献という意味で興味深いのが「音楽」事業だ。

    音楽もコロナ禍で制作やライブ収益などに影響が出たものの、ストリーミングサービスからの収益拡大と、アニメ・モバイルゲームの収益拡大が寄与した。

    後者のアニメ・モバイルゲームは、具体的に言えば日本のIP事業、ということだ。大ヒットした『鬼滅の刃』を扱うアニプレックスなどのアニメ部門や、『Fate/Grand Order』などのヒットスマホゲームを多く抱えるのもこの部門。「音楽事業の3割が(人気IPによる)これらの事業」(十時CFO)というから、影響力は非常に大きい。

    ただし、それぞれのヒットが2021年度に与える影響はかなり保守的に見積もられており、2021年度は減収に転じると予想されている。

    2021年4月1日より、テレビなどの家電とカメラ、スマートフォンなどのコンシューマ事業を合わせて「ソニー」となったが、これらをまとめた「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)分野」は、若干の減収だが営業利益は519億円の大幅増益となっている。

    EP&S事業も半導体不足やコロナ禍での物流網への影響を受け、販売数量の減少が起きたものの、「機動的に調達先を変更するなどの施策」(十時CFO)を打っていき、利益率の高い製品へと事業リソースを集中することで利益率を確保している。2021年度もこの路線は継続する。

    ソニーのXperia事業が悲願の「通期黒字」
    中でも興味深いのは、スマートフォン事業の営業利益が227億円と黒字になったことだ。

    ソニーのスマートフォン事業は長年赤字に苦しめられており、2019年度も営業赤字だった。先日は韓国・LGエレクトロニクスがスマホ事業からの撤退を決めるなど、事業環境は世界的に厳しい。その中でまとまった額の黒字化に成功したのは、非常に興味深い。

    西田宗千佳

  • ソニーG株が2カ月ぶり下落率、今期営業益は4.3%減の見込みと発表

    (ブルームバーグ): ソニーグループ株が一時前日比5.3%安の1万1185円と2月24日(5.5%安)以来の日中下落率となった。今期(2022年3月期)連結営業利益について前期比4.3%減の9300億円を見込むと28日に発表。ブルームバーグが集計したアナリストの予想平均9703億円を下回った。

    シティグループ証券の江沢厚太アナリストは28日付のリポートで、今期のプレイステーション(PS)5」販売計画(1480万台超)は市場予想(1720万台)を下回り「ネガティブな印象」と指摘。EBITDA(利払い・税金・減価償却・償却控除前利益)目標も「成長を期待する市場参加者には失望的に映る可能性がある」と述べた。

    28日の発表によると、今期は音楽やゲーム分野などで減益を見込む。同時に発行済み株式の2.02%に相当する2000億円、2500万株を上限とした自社株買いも決めた。

    ソニーG、今期営業益4.3%減の9300億円-ゲームや音楽など減益

    十時裕樹CFO(最高財務責任者)は決算会見で、今年度から始まる中期経営計画について、「売り上げと利益のバランスの取れた成長」を目指すと説明した。

    (c)2021 Bloomberg L.P.

  • ソニーの絶好調決算の“罠” 各ニュースで割れる「PS5」と「鬼滅の刃」の扱いの差

    ソニーグループの2020年度(2021年3月期)通期連結決算が28日、発表されました。各メディアは、最終的なもうけを示す「当期純利益」が約1兆円を超え、売上高、本業のもうけを示す営業利益と合わせて、いずれも過去最高になったことを取り上げました。ですが、決算の記事を書く記者やライター泣かせでした。

     同社の売上高は約8兆9994億円、営業利益は約9719億円は過去最高でして、ここも見出しどころですが、やはり大台の1兆円を突破した当期純利益はインパクトがありました。ですが好調の理由になると少し困ることがあります。決算短信にある通り「ゲーム事業が好調」としたり、「新型コロナの巣ごもり」効果」としたり、各グループが概ね良かったことをとすると、内容が抽象的すぎてインパクトに欠けるのです。

    <ソニーグループ 売上高の前年比プラス要因>

    ・ゲーム事業、金融事業の大幅増収

    <マイナス要因>

    ・映画事業の大幅減収

    <営業利益のプラス要因>

    ・ゲーム事業、エレクトロニクス事業、音楽事業の大幅増益

    <マイナス要因>

    ・イメージング&センシング事業の大幅減益

    ソニーグループ2020年度決算 補足資料(3ページ)

     記事にするには、読者に伝わるようより具体的な事例が好まれるのです。そうなると、世界的な品切れ状態にある新型ゲーム機「PS5」のヒット、アニメ映画「鬼滅の刃」の社会的ブームを理由にすると、読者は「なるほど!」となります。見出しも立つし、バッチリなのです。

     しかし困ったことにPS5は、売上高には貢献していますが、利益への直接的な貢献はゼロどころかマイナスです。理由は単純で、製造価格よりも安く売っている「逆ザヤ」(戦略的価格)のためですね。要するに、ソニーグループの「過去最高益」と、「PS5のヒット」を合体させると、事情が分かる人が見ると「え~?」となるのです。

     「鬼滅の刃」も、ソニーグループの最高益に貢献しているのですが、音楽事業の中の三つめの主要因になります。アニメビジネスを計上する音楽事業では、ストリーミングサービスや映像メディアのプラットフォームの増収の方が大きいのです。

    <音楽事業の売上高 前年度比増の理由>※上から順に主要因

    ・音楽制作におけるストリーミングサービスからの収入増加

    ・映像メディア・プラットフォームの増収

    ・「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の貢献などによるアニメ事業の売上増加

    ・モバイル向けゲームアプリケーションの収入増加

    <営業利益増の理由>

    ・増収の影響

    ・Pledis株式の一部譲渡にともなう売却益(65億円)

    ・海外での事業譲渡にともなう利益計上(54億円)

    ソニーグループ2020年度決算 補足資料(18ページ)

     興収400億円に迫ろうかという、映画史に残るであろう社会的大ヒットを飛ばしており、年間売上高9兆円を誇るソニーグループの決算に「鬼滅の刃」の固有名詞が刻まれたこと自体に意味はあります。しかし、アニメビジネスの構造上仕方のないところもあるのですが、これだけ世間をにぎわせたのですから、ビジネス的にもっと報われてほしいと思うのです。

     今回のソニーグループの決算記事は、売上高と利益を切り分けて、事業のポイントを意識をしないと難しいのです。ソニーグループは、分かりやすく書いているのですが、記者やライターがPS5と鬼滅の刃を意識しすぎると“罠”になっていて、「PS5と鬼滅の刃のヒットなどで、過去最高益になった」となりがちなのです。

     逆に言えば、PS5と鬼滅の刃について、触れても因果関係をキッチリ書き分けている記事、媒体は安心できるとも言えますね。

  • ソニーは最終利益1兆円超えでも慎重に、2021年度は減益見通し

     ソニーは2021年4月28日、2021年3月期(2020年度)の業績を発表。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を逆に追い風とし、売上高、営業利益、純利益などの主要指標で過去最高を達成する好決算となった。

    主要指標で過去最高を更新、純利益は1兆円超え
     ソニーの2020年度連結業績は、売上高が前年度比9%増の8兆9994億円、営業利益が同15%増の9719億円、税引前利益が同49%増の1兆1924億円、当期純利益が同101%増の1兆1718億円という結果となった。これらの主要経営指標は全て過去最高を更新している。

     セグメント別で見ると大きな伸びを見せたのが、家庭用ゲーム機「PlayStation 5」(以下、PS5)の発売などがあったゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野と、映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の記録的なヒットがあった音楽分野で、COVID-19による“巣ごもり需要”が大きくプラスに働いた形となる。

    巣ごもり需要をつかんだゲーム事業と音楽事業
     G&NS分野は売上高が34%増の2兆6563億円、営業利益が1038億円増の3422億円となり、同分野としては過去最高益を更新している。PS5販売に関するハードウェア売上高の伸長と共に、巣ごもり需要の好影響が続いており、ゲームソフトウェアやネットワークサービスの増収があったという。

     ソニー 副社長 兼 CFOの十時裕樹氏は「2021年3月におけるプレイステーションユーザーの総ゲームプレイ時間は2019年3月と比べて20%増と好調を維持している」と語っている。また、ソフトウェア販売についてもデジタル比率(ダウンロード利用)が高まっているとし「巣ごもりの影響はある。2020年4~6月は旧作のデジタル比率が高かったが、2021年1~3月については、新作タイトルによるデジタル販売が好調だった」と語っている。

     ネットワークサービスについては、会員制サービスであるPlayStation Plusの会員数が2020年度は大幅に伸長。2021年3月時点で4760万人となり、1年間で約610万人増加した。「2021年度は、2020年度のような大幅な拡大は見込んでいないが、2020年度に増加した有料会員数の維持、拡大を目指す」(十時氏)。ソニーでは早期からリカーリングビジネスへのシフトを訴えてきていたが、ゲーム事業についてはこのシフトが順調に進んでいることを示している。

     一方でPS5については、需要に対し供給が追い付いていない状況が続いている。当初計画だった前世代機PS4の初年度販売台数である760万台を上回る780万台の販売を行ったが不足感が続いている。販売2年目を迎える2022年3月期(2021年度)もPS4の2年目販売台数である1480万台を上回る販売を行う計画。半導体を中心としたデバイス供給への制約が想定されることから販売台数を大きく増やすことが難しい状況だとしている。「強い需要に応えられるよう、引き続き部材の確保を進め、目標を上回る台数の生産と販売に向けて取り組む」(十時氏)。

     音楽分野については、ストリーミング売上高の成長に加え、同分野に含むアニプレックスが手掛けた映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が記録的なヒットとなったことから、売上高は前年度比11%増の9399億円、営業利益は457億円増の1881億円となった。アニメやモバイル向けゲームアプリを含む映像メディアプラットフォームからの利益貢献は前年度から大きく増加し、同分野の営業利益の3割弱を占めるまでに伸長したという。

    マイナス影響を抑え込んだエレクトロニクス分野
     テレビやデジタルカメラなどエレクトロニクス製品を扱う、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野(EP&S分野)については、COVID-19による需要面、供給面でのマイナス影響があったものの、テレビやデジタルカメラの製品ミックス改善、モバイル分野のオペレーション費用削減などが貢献。売上高は前年度比4%減の1兆9207億円と減収になったが、営業利益は519億円増の1392億円と増益となった。

     十時氏は「2020年度は年間を通じて、断続的に部品サプライチェーンで供給面の制約が生まれ、大きな影響を受けたが、代替品手配なども含め変化に機敏に対応することで高い収益力を確保できた。2021年4月からEP&S分野は“新生ソニー”(従来の企業としてのソニーはソニーグループへ商号変更)として集結した。2021年度は新たな体制で変化に強い運営を進める」と述べている。

     スマートフォン端末などのモバイル事業の改善について「主に3つの要因があると考えている。1つは、ビジネス地域を絞り込んだという点だ。大部分を日本に寄せた形とし、収益性を改善した。2つ目が高付加価値商品への特化だ。製品ミックスを高付加価値帯に寄せたことで収益力を高めた。3つ目がオペレーション費用の削減である。設計の効率化などに取り組み効率的な運営を行えるようにした」と十時氏は語っている。

     CMOSイメージセンサーなどを扱うイメ―イング&センシング・ソリューション分野(I&SS分野)は、米中貿易摩擦などによる主力顧客の販売減の影響を受け、モバイル機器向けイメージセンサーの販売が減少し前年度比5%減の1兆125億円の売上高となった。また、営業利益も減収影響や研究開発費の増加により前年度比897億円減少の1459億円となつた。

     モバイル機器向けイメージセンサー事業では、市場環境の変化により、2021年度に販売台数を2019年度並みに戻し、2022年度から収益面でも2019年度並みを戻すというロードマップを描き、対策に取り組んでいるところだが「順調に進んでいる」(十時氏)という。

     半導体不足などの状況が不安視されているが「イメージセンサーに用いるロジック回路半導体については、生産計画をカバーするキャパシティー確保はめどが立っている」(十時氏)。2021年4月20日には、長崎工場で新棟Fab5の完成披露を行ったが「生産能力増強は計画通りに進めており、事業拡大ペースに応じて今後も増築や拡張、設備導入などを進めていく」(十時氏)としている。

    2021年度目標は慎重な姿勢
     2020年度はCOVID-19の“巣ごもり需要”における特需を受けた一方で、マイナス面での影響を抑え込んだことで過去最高の好業績となったが、ソニーグループとしての新たな節目となる2021年度の業績については慎重な姿勢を見せる。売上高については、前年度比8%増の9兆7000億円を見込むが、営業利益は同419億円減の9300億円、税引前利益は同2874億円減の9050億円、純利益は同5118億円減の6600億円を見込んでいる。なお、ソニーでは2020年度までは米国会計基準を採用していたが、2021年度からIFRS採用としている。

     また、2021~2023年度の経営指標として、調整後EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization)の3年間累計額4兆3000億円を新たに掲げた。「従来経営指標としてきた営業キャッシュフローは、金融分野などでは適用しにくく、期ずれが起こりやすい。金融分野も一体化したことで、どういう事業体でも評価しやすい調整後EBITDAを採用した」と十時氏は狙いについて語っている。

    MONOist

  • 最高益1兆円のソニーにも、忍び寄る半導体不足の影 インテル“再参入”で状況は変わるか

    ソニーの純利益が1兆円を突破し、過去最高益を記録したというニュースは、コロナ禍の閉塞感が続く大型連休前、前向きな話題となった。移動制限や出社抑制など、さまざまなコスト削減要因があったとはいえ、前期比2倍以上の1兆1718億円という数字はインパクトがある。

     ソニーグループ全体の利益を押し上げたのは、言うまでもなくゲーム事業と金融事業だった。巣ごもり需要でゲームのプレイ時間が増えたこと、プレイステーション 5(PS5)の世界的なヒットといったプラス要因もあるが、それ以前に吉田憲一郎氏が社長兼CEOに就任してから進めてきた、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)戦略が成功した結果でもある。金融に関してもD2C戦略が当たったといえるだろう。

     D2Cはソニーグループ全体の戦略骨子になるものだが、とりわけゲーム部門では加入型サービス「PlayStation Plus」の伸びが顕著だった。今後、中期的にはPS5からの収益も伸びることが期待できる。

    “PS5足りない”が“世界情勢の不安定”を投影している
     PS5については、消費者視点だと「いつになったら普通に買えるのだ」という、身近な話題に目線がいくかもしれない。

     決算では、PS5の生産台数が需要に追い付かず、慢性的な品不足に陥っている状況について「半導体不足だけが原因ではなく、すぐに増産できるわけではない」とくぎを刺す場面もあった。もちろん、半導体が調達できたからといって最終製品の組み立てを一気に何倍も引き上げることは難しいだろう。しかしそれ以前、半導体不足の解消にはそもそも時間がかかる。

     PS5に使われているAMD製半導体チップは、台湾TSMCの7ナノメートルプロセスを用いた生産設備で作られている。この生産プロセスは、世界中のさまざまなテクノロジー製品に使われており、ソニーだけが欲しがっているわけではないから、当然奪い合いになる。

     将来のコスト抑制も考えると、PS5のチップを再デザインして5ナノメートル、あるいはそれ以上に進んだプロセスに移植して生産することも視野に入れているはずだが、その場合もアップルやクアルコムなどのスマホ勢をはじめ、最先端の半導体を必要とするあらゆる企業と、限られた生産キャパシティーを奪い合うことになる。

     半導体チップは今日発注して来月に納品されるようなものではなく、来期、あるいは来年の生産キャパシティーを予約しておいて、そこで生産するといったスケジュールで動く製品だけに、なおさら管理は難しい。

     加えて、ご存じの方も多いだろうが、最先端の論理回路系半導体チップの生産はTSMCの独壇場だ。何とか韓国サムスンが食らい付いているものの、TSMCの生産キャパシティーをどこまで確保できるかが目の前の経営課題になるほど、世界のハイテク企業は台湾の一企業に頼らざるを得ない状況なのだ。

     この状況をさらに複雑にしているのが、米中関係の悪化。トランプ政権時代に発動した中国への制裁的な輸出制限はもちろん、ファーウェイに対する禁輸措置、取引制限は苛烈を極め、TSMCに先端チップを発注していた彼らはまともに製品開発を行えなくなってしまった。

    インテル新CEOが地政学的なバランスに言及
     そうした背景の中で、米インテルのCEOに就任したパット・ゲルシンガー氏が新しい戦略を発表した。最先端の半導体製造技術から脱落しかけていた(いや「していた」という方が正しいか)インテルが、2023年に量産開始を予定している7ナノメートルプロセス(TSMCの5ナノメートルに相当)を採用する工場を、米アリゾナ州で2024年までに2拠点同時に立ち上げるという。

     その投資金額は200億ドルにも達する。この計画発表で、日本の半導体関連銘柄の株価が上昇したほどだ。

     インテルが脱落しかけていた先端技術開発に復帰することを意味するが、同時に他社製品を受託生産する「ファウンダリ」という事業を始めると発表している。これまでインテルは自社製品しか生産していなかったが、今後はTSMCと同じように他社向けの半導体チップも作るということだ。

     インテルの工場で生産するためには、インテルの生産技術に合わせて回路設計を行う必要があるため、TSMCが使えないならインテルで作ろう、と簡単に計画変更できるわけではない。しかし、彼らが本当に最新鋭の工場を2カ所も同時に立ち上げられるならば、TSMC一強の状況にくさびを打ち込むことになるだろう。

     ゲルシンガー氏は最先端の半導体技術がアジアに集中している地政学的なリスクも、強調している。米国ハイテク企業の多くが最先端の半導体技術に依存している。アップルはもちろん、マイクロソフト、グーグルなども最先端技術を駆使した半導体チップを独自に設計、調達している。TSMCが米国内に工場を建設する計画を立てているものの、長期的なリスク、あるいは国際的な紛争の火種になりかねないからだ。

     ゲルシンガー氏なりの、米バイデン政権に対する(支援の)アピールの一つとして、この計画をぶち上げたと考えるのが自然だろう。あるいはすでに政府には話を持ちかけているのかもしれない。

    TSMCとインテルが手を結ぶ可能性も?
     インテルが新戦略を発表した直後、日本の菅義偉首相は日米首脳会談に挑み、台湾海峡の平和について、共同声明の中で言及したのはご存じの通りだ。

     万が一、台湾が国際紛争に巻き込まれることになれば、ハイテク産業は世界的な大混乱に陥ることになる。米中貿易摩擦の中で、米国は中国に対して半導体材料や半導体製造装置、あるいはファウンダリサービスなど、あらゆる側面から“兵糧攻め”を仕掛けている。

     中国がこの状況を打開するために、彼らが「わが世界の一部」と考える台湾の支配を強める方向へと向かっても不思議ではないわけだ。過去の世界的な紛争、戦争は、国家的な発展を確保するための資源確保が目的であることが多かった。

     現代において、国の産業を発展させる源泉ともいえる半導体のために、中国が何らかの手を打ってくるだろうことは十分に予想しておかねばならない。

     中国はすでに戦争の準備を始めているという見方もあるが、もしそれが現実になれば中国の隣国である韓国も巻き込まれることは必至で、サムスンが半導体技術でどれだけTSMCに追いすがろうとも、米国からの視点ではリスク回避の手段とはなりない。

     ここでインテルの話に戻ると、彼らは米政府を通じてTSMCと手を握る方法について模索しているのではないだろうか。

     TSMCの視点で考えれば、現在は首元が極めて涼しく、ひんやりとした殺気を感じている状況かもしれない。いつ中国中央政府が自分たちに手を伸ばし始めてもおかしくない。そうした中で台湾世論は、もともとある反中国の空気が強まっている。

     同じ台湾の鴻海科技(フォックスコン)は、日米ハイテク機器メーカーとの関係を強め、中国の安価な労働力を活用して世の中を変えた。しかし創業者のテリー・ゴウは、事業を拡大する中で中国政府との関係を強めていき、現在は習近平との距離が極めて近い人物と見なされている。

     台湾総統を目指していたテリー・ゴウが20年の総統選を諦めたのも、台湾世論が習近平と近しい彼に「ノー」を突きつけたからだ。すでにフォックスコンの経営から退いている彼だが、自らと一族の命の未来のために中国側に寄らねばならない事情があったのかもしれない……とまで言及すると、言い過ぎだろうか。

     ではTSMCは中国側に歩み寄るのか、それとも米国に歩み寄るのか。台湾が中国に程近い島国であることは変えられない。とはいえ、米国との関係を強化していくのがTSMCの基本的な考え方であることは、彼らが北米に工場を建設していく計画からも見て取れる。

     自らのDNAを残していくことを最優先に考えるならば、インテルによるTSMCの買収はないにせよ(何しろTSMCの時価総額はインテルの2倍を上回っている)、両社によるジョイントベンチャー立ち上げは視野に入っているのではないだろうか。

    本田雅一

  • ソニーが米チャットサービス・Discordと提携 「PlayStation Network」と統合へ

    ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が5月3日(米国時間)にブログで、チャットサービス「Discord」を運営する米Discordとの提携を発表。自社のオンラインサービス「PlayStation Network」(PSN)を、「Discord」へ統合することを明かした。

    統合の詳細は不明だが、コンソールとモバイルのPSN上で「Discord」を使用可能にするべく準備中とのこと。実現は2022年初旬を予定しており、今後の数ヶ月間に新たな情報を公開すると予告している。

    またSIEが米Discordへ少額投資(シリーズHラウンド)を行ったことも明らかにされた。

    ゲームのクロスプレイに欠かせない「Discord」
    低遅延のボイスチャット機能がゲームのクロスプレイに最適だとして、ゲーマーを中心に重宝されている「Discord」。

    コロナ禍によるステイホーム現象で需要が高まり、2020年末の月間アクティブユーザーは前年比で2倍の1.4億人を数えるまでになった。

    この人気サービスを周りが放っておくはずもなく、米Discordの買収の噂が浮上。その筆頭が100億ドル(約1兆800億円)を用意していたとされるマイクロソフトだったのだが、4月に米Discord側から買収交渉が打ち切られたと報道されていた。

    ゲームとしても近年、『Apex Legends(エーペックスレジェンズ)』や『Among Us(アモングアス)』を筆頭に、複数人でパーティーを組んでプレイするゲームが増えている。

    こうしたクロスプレイが可能なゲームは、比較的息が長く、SIEの狙いの1つとしても、自社タイトルをよりロングテールに楽しんでもらいたいという意図がありそうだ。

    Yuuki Honda

  • ソニー、3年間で半導体に7000億円投資。シェア回復へ増産投資を再開

    ソニーは、2021~23年度を対象とした第4次中期経営計画で、イメージング&センシング・ソリューション事業(I&SS=半導体事業)に約7000億円の設備投資を行う。20年度から延期した増強案件に加え、製造プロセスや大判化対応などを充実させて、CMOSイメージセンサー(CIS)の利益率向上を図っていく。

    ファーウェイ問題で投資を一時延期
     同社は当初、18~20年度にI&SS事業に約7000億円の設備投資を予定していたが、米国の制裁に伴って、スマートフォン用の大手顧客の1社だったファーウェイへの出荷停止などでCISの増産計画を一部先送りし、結果的に6171億円にとどめた。ただし、長崎テックに建設していた増設棟「Fab5」は予定どおり21年4月に稼働させ、CISの月産能力も当初の計画どおり20年度末時点で300mmウエハー換算13.9万枚まで増強した。

    21年度は数量シェア回復へ
     CISについては、ファーウェイへの出荷停止で失った数量シェアの回復を21年度中、収益性の改善を22年度中に実現する考えだが、数量シェアの回復については見通しがほぼ立っているという。下期に画素サイズ0.7μm品の量産を立ち上げる予定で、22年度には高付加価値品の投入を進めていく。

     23年度時点の月産能力については見通しを公表しなかったが、22年度に強い需要が想定されており、20年度に延期した増強案件に加え、22年以降に計画していた一部の増強案件も前倒しで進めるため、21年度は3050億円(うちCIS向けは2850億円)の設備投資を計画する。

    20年度は減収減益も生産は復調
     先ごろ発表したI&SS事業の20年度業績は、売上高が前年度比5%減の1兆125億円、営業利益が同38%減の1459億円だった。このうちCISの売上高は同6%減の8722億円。設備投資額は1940億円(うちCIS向けは1800億円)だった。

     21年1~3月期の月産能力13.9万枚に対し、ウエハーの投入実績は12.8万枚。自社生産能力をフル稼働させ、スマートフォン新モデル向けの生産や在庫の積み増しなどを進めた。

    21年度は増収減益を想定
     4~6月期には月産能力を14.1万枚まで高め、ウエハー投入量も13.8万枚まで増やす予定で、自社生産能力はフル稼働を維持する。足元では半導体不足が顕著になっているが、CISに用いるロジック半導体はパートナー各社の協力で21年度の生産計画をカバーするキャパシティーをすでに確保できていると説明した。

     21年度のI&SS事業の業績見通しは、売上高が同12%増の1兆1300億円(うちCISは同11%増の9700億円)、営業利益が同4%減の1400億円を見込む。デジカメ向けCISの需要回復などで増収を見込むが、研究開発費を250億円増やす計画であることなどが減益要因になる。今後の計画の詳細は5月末に開催予定のIR Dayで説明する予定だ。

    津村 明宏

  • ソニーグループの格付け見通しをポジティブに変更=S&P

    [東京 20日 ロイター] - S&Pグローバル・レーティングは20日、ソニーグループの格付け見通しをポジティブに変更したと発表した。長期・短期格付けはA─/A-2で据え置いた。

    S&PはソニーGについて、ゲームやエンターテインメント事業をはじめ分散された事業ポートフォリオからの経常的な収入を拡大させており、事業運営の安定性を一段と高めつつあると評価した。今後も規律ある財務運営のもとで、潤沢な営業キャッシュフローにより成長投資をおおむね賄うことで、非金融事業の主要財務指標を非常に健全な水準に維持できるとみている。

  • 際立つソニーの好決算 水をあけられたパナソニックとの明暗

     * * *
     日本企業の2021年3月期決算が出揃い、新型コロナウイルスの影響による明暗がくっきり分かれた。人流の抑制で運輸や観光業などが巨額の赤字に苦しむ一方で、巣ごもり需要の恩恵を受けた企業や、世界的な半導体不足を受けた半導体関連企業は好業績に沸き、なかでも国内外への投資が絶好調だったソフトバンクグループは日本企業で過去最高となる4.9兆円もの最終利益を計上。業績の二極化がより鮮明となる「K字回復」の様相となっている。

     そうしたなか、私が出色の決算として注目しているのがソニーグループである。かつてどこにもないモノをつくる“ソニーらしさ”が失われたと指摘された同社だが、見事に環境の変化に順応して、創業以来初となる1兆円超の最終利益を叩き出した。ソフトバンクグループの決算も話題になったが、こちらは浮き沈みのある投資を中心とした利益であるのに対し、ソニーは消費者と対話してほしいモノをつくり出す実業で稼ぎ出している点が大きく異なる。

     具体的には、半導体の一種でデジタル化に欠かせない画像センサー「CMOSイメージセンサー」に加え、子会社が制作や配給に携わった『鬼滅の刃』がメガヒットしたほか、巣ごもり需要でPlayStation 5やゲームソフトの売り上げが増加し、音楽配信などのコンテンツビジネスも花を咲かせている……。このように人々の欲求に応えるモノやサービスを次々と世に送り出していることが大きい。株価に左右される“時代のあだ花”とも言えるソフトバンクグループとは一線を画し、消費者が欲しいモノをつくり出せているうちは安定的な収益が見込めるに違いない。

    特に、かねてよりライバル視されてきたパナソニックとソニーの明暗は、はっきり分かれた。パナソニックも環境の変化に適応しようとビジネスを進めてきたが、どうしても変化に追いつけていないことは前期決算からも明らかだ。パナソニックの2021年3月期決算は売上高が7兆円割れと8.9兆円のソニーに大きく水を開けられ、最終利益は1650億円とソニーの7分の1にすぎない。時価総額もパナソニックの2.9兆円規模に対し、ソニーはその4倍以上となる13兆円規模で、市場の評価もソニーに軍配が上がっている。パナソニックが割増の退職金を加算して希望者を募るリストラ策に打って出るのもソニーとの差が開いていることの表れだ。

    環境適応力の差が浮き彫りに
     なぜここまで差が開いてしまったのか。その違いは行動経済学の「フレーミング効果」で説明できる。フレーミング効果とは、物事をある“枠(フレーム)”に当てはめて思い込むこと。両社の業績の差を見る限り、パナソニックの経営陣には“そこまで劇的な変化は必要ない”といった「先入観(フレーム)」があったように思えてならない。そこには「まだまだこのままで行けるはず」という「心の慣性の法則」が働いていたのかもしれない。

     環境の変化がもう少し緩やかな時代ならそれでも良かったのかもしれない。しかし、コロナの感染拡大によって世界は激変を迫られた。環境の変化のスピードは格段に早まり、変化に適応できる企業とそうでない企業の違いをコロナは浮き彫りにしたのだ。

     進化論を唱えたダーウィンは、「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものではなく、変化に対応できる生き物だ」という考えを示したと言われている。ソニーの創業者である井深大氏は会社の設立目的に、「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」「国民生活に応用価値を有する優秀なるものの迅速なる製品、商品化」を掲げ、この理念が“ソニーのDNA”として受け継がれてきた。

     パナソニックの創業者である松下幸之助氏も「日に新たな経営」という名言を残し、同社にも“DNA”として息づいているはずだ。コロナ禍のいまだからこそ、世界的な変化にどう対応していくか。企業もヒトも問われている。

    真壁昭夫

  • 26日付の日刊工業新聞は、ソニーグループが経済産業省主導により、同社と半導体受託製造世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が合弁で熊本県に半導体工場を建設する構想が浮上したと報じた。前工程中心で総投資額1兆円以上を見込むもよう。

    構想では、両社が年内にも半導体製造の合弁会社を設立する見通しで、TSMCが主体となり同社以外の日本企業も一部出資して枠組みに参加する可能性があるとしている。

  • 経産省主導でソニーと台湾TSMCが半導体合弁構想、熊本に1兆円新工場

     経済産業省主導によりソニーグループと半導体受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が合弁で熊本県に半導体工場を建設する構想が浮上した。経産省が仲介役となり、関係者の調整を進める。前工程中心で総投資額1兆円以上を見込む。ただ、誘致実現には欧米に見劣りする補助金など支援策の大幅拡充が不可欠。国を挙げた半導体サプライチェーン(供給網)再構築への本気度が問われている。

    ソニーがルネサス株取得に動く?

     構想では両社が2021年内にも半導体製造の合弁会社を設立する見通し。TSMCが主体となり、ソニーG以外の日本企業も一部出資して枠組みに参加する可能性がある。

     前工程工場は熊本県・菊陽町にあるソニーGのイメージセンサー工場近くに建てる計画。自動車や産業機械、家電などに使う回路線幅20ナノ―40ナノメートル(ナノは10億分の1)のミドルエンド品を生産するもよう。線幅40ナノメートル未満の工場は国内で初めてとなる。投資の分担はソニーGが土地・建屋の手当て、TSMCが製造プロセスを受け持つ方向で調整する。パッケージなどの後工程工場も熊本県内に新設する見込み。

     TSMCの工場誘致を主導する経産省は別の構想も同時並行で進めており、状況は流動的だ。TSMCの工場進出をめぐっては半導体産業が集積する九州地方を中心に検討し、熊本のほかに北九州市なども候補に挙がっている。「TSMCはいろいろな支援措置がないと日本に進出できない。他方で外国企業が日本に来てすべてブラックボックスでやられても大胆な支援はできない。政府は現在、様々な可能性を追求している」(政府関係者)。

    誘致実現には欧米に見劣りする補助金など支援策の大幅拡充が不可欠

     TSMCは日本の車載用半導体市場に期待しているようだ。半導体不足で減産を強いられる自動車メーカーにとって、国内の新工場はサプライチェーン(供給網)リスク軽減の大きな助けとなる。TSMCに一部生産委託する車載用半導体大手のルネサスエレクトロニクスなどにも朗報となる。ソニーGは自社製品向け半導体を安定調達するとともに、将来的に合弁工場をイメージセンサーの生産にも活用できそうだ。

     米中対立やデジタル変革(DX)時代の到来、相次ぐ半導体工場トラブルが重なり、主要国にとって“産業のコメ”と呼ばれる半導体のサプライチェーン見直しが喫緊の課題となる。先進国は工場誘致に向けた支援策を準備する。米国議会で半導体産業育成に520億ドル(約5兆7000億円)を投じる法案が審議中だ。欧州も半導体などデジタル分野に今度2―3年で1350億ユーロ(約18兆円)以上を投資する。日本政府の出方が注目される。

  • ソニーの大化けに学ぶ株価10倍「テンバガー」の見つけ方

     投資した株が10倍以上に大化けすることを「テンバガー」と呼ぶ。すべての投資家の夢である。テンバガーというと中小型の仕手っぽい銘柄をイメージしがちだが、意外にもソニーが9年かけてテンバガーの仲間入りを果たした。何が大化けの原動力なのか、勉強することは無駄ではない。

     最近10年を見ると、ソニーの株価の底値は2012年11月の772円。信じられない株価だが、事実ここまで落ちた。それが昨年12月に1万円を突破し、本年2月には高値1万2545円をつけたものだ。ほぼ9年で株価は10倍どころか16倍に値上がりした。

     ソニーは、長らく家電とエレクトロニクスを中核事業とする「ものづくり」の国際優良株として評価され、「世界のSONY」と呼ばれた。しかし、リーマン危機に家電販売の低迷などが重なり、2009年から6年間で累積1兆円もの最終赤字を計上。市場ではさかんにソニーの危機説が叫ばれ、株価も1000円を割り込んだ。

     転換のきっかけは、従来あったゲーム・音楽・映画といったコンテンツビジネスへの経営資源の注力。同時に、テレビ事業の分社化、パソコン事業の売却、大規模な人員削減などバッサリと大リストラも進めた。

     ある意味、「世界のSONY」というメーカーの看板を下ろし、ソフト=コンテンツで継続課金するビジネスモデルへの転換を図ったことが成功につながったのだ。いま売り上げの5割をゲーム・音楽・映画のコンテンツ事業が占めている。20年前のITバブル期に7割を占めていたエレクトロニクス事業は2割に低下だ。

     国際競争力やブランド力が落ちた家電・パソコンに見切りをつけ、時代の先を読み、稼げるエンタメ事業に大きく舵を切る。大胆な賭けだが、それが大当たりしたのである。

     ソニーが変身したように、いま必死に儲かるビジネスモデルに業態の転換を図っている企業は他にもある。メガバンク、大手製薬、総合IT企業……。第2、第3のソニーを探してみよう。テンバガーになる夢を見るのも株投資の醍醐味だ。(丸)

  • ソニー、物流ドローン参入に意欲

    他社と連携も
    自社製ドローン「エアピークS1」

     ソニーグループの川西泉執行役員AIロボティクスビジネス担当は14日、千葉市美浜区の幕張メッセで会見し、将来の物流用飛行ロボット(ドローン)市場への参入に意欲を示した。同社は主に空撮向けの自社製ドローン「エアピークS1」の出荷を9月に始める。川西執行役員はドローン事業の今後について「他社と積極的に組むと同時に、ゆくゆくは可搬重量が大きく長距離を飛べる物流用ドローンも開発したい」と述べた。

    ソニーがルネサス株取得に動く!?

     同日開幕したドローン展示会で会見した川西執行役員は「量産で安定供給できる強みとカメラやセンシング技術を生かせることがドローン市場に進出した理由」と説明した。エアピークS1は独自開発の17インチプロペラやビジョンセンシングプロセッサー、アルゴリズムを搭載する。消費税抜きの市場推定価格は100万円前後。日米両国で販売し、欧州での発売も視野に入れる。販売台数目標は明らかにしていない。

     大口径プロペラにより加速性能が良く、空中停止から3・5秒で時速80キロメートルに到達する。最大可搬重量は2・5キログラム。国家安全保障の観点から中国製ドローンの使用を控える動きが進む中、ソニーなど国産メーカーには追い風が吹く。

  • 時事通信によると、ソニーグループ傘下の米ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は16日、インターネットで音声コンテンツを聴ける「ポッドキャスト」の英番組制作会社サムシンエルスを買収すると発表した。近年好調なゲームや音楽、映画などの娯楽分野で収益基盤の強化を図る。買収額は不明。

    新型コロナウイルス禍の「巣ごもり」需要で音声配信市場は成長を続けている。SMEは今回の買収で有能な番組制作スタッフを手中に収め、コンテンツを拡充して事業の世界展開を進める。

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