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箱庭

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  • 2015/10/16 20:26
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    ひろきさん

    ここは閉めてしまうのですか? さみしいですね。
    まあ、連載物は続けて読まないと興味が薄れてしまうというのは分かりますが
    残念ですね。小説部屋で投稿しても同じことでしょうしね。ブログのほう
    お邪魔しますね。頑張って。

  • すみません。連載を載せるには難しくてブログを作りましたのでそちらで続きを書きます。すみませんhttp://hakoniwa6691.blog.fc2.com/

  • <章=10>
    「亮、子供をあやすのが上手くなったな」
    少し嫌味のような言葉に俺はあわてて木島の胸を押した。しかし、木島はさらに俺を腕の中に抱え込み
    「今頃知ったのか、俺の周りには可愛いお子様が俺を慕って集まるのさ。」
    「慕ってね、長い付き合いだが初めて知ったよ。亮なんかを慕ってきてもロクな大人にならないと俺は思うけどね。まぁ、今回は許してあげるから、その手を離せ! 」
    その男からはひしひしと怒りのようなものが伝わってきて、俺は腕の中でもがいていたが、その男の怒鳴り声に流石の木島も降参とばかりに両手を挙げた。
    抜け出そうと必死だった俺は、唐突に外された腕に勢い余って尻餅をつく羽目に。
    そんな俺に男は
    「ヒロ君、大丈夫? 亮は捻くれた子供だから許してあげてね。それよりね、あっちの彼だけど、こんなに酷いとは思わなくって俺のミスだよ。ちょっと病院まで戻ってもう一度来るから安心して」
    見上げる俺ににっこり笑った顔は、見惚れるほどの美しさだった。
    「亮、一緒にいてあげて。タクシー捕まえるから」
    「否、車出す。ヒロ一人で大丈夫だな」
    俺がうなずくと二人して部屋を出て行った。
    一人になると心細くなる。
    「氷を変えないと」あえて声に出して気持ちを落ち着かせる。
    氷を今度はビニールの袋と洗面器にも入れ水を少し張る。新しいタオルも必要か。ベットで眠る加納は相変わらず苦しそうな息遣いだ。額に乗せたタオルは氷が解けてびっしょりになっていた。袋に入れた氷を新しいタオルに包み乗せる。
    何でこんなことになったんだ。誰が…..。今はそんなことを考えても仕方ない。加納の熱を下げるのが先決。二人が帰ってくるまでにすることはないか考える。
    「いやぁぁぁぁ…..」
    突然、加納が奇声を上げ暴れだした。
    「大丈夫だから、俺が誰か解るか。もう大丈夫だから。俺がいるから。」
    暴れる体を抱きしめる。自分を抱きしめる腕から逃れようと思い切り俺の腕に噛みつく加納。それでも、抱きしめ何度も何度も大丈夫だと囁いた。加納の体から力が抜けていく。
    「嫌だぁ…..もう許して….お願い….兄さん….」
    気を失う前につぶやいた言葉、信じられない言葉だった。

  • >「おい、どうした?加納、こんな所で寝るな。」
    は、「おい、どうした? 加納、こんな所で寝るな」 とする。

    >2、3度話したぐらいだが
    は、二、三度....   とする。

    >違うのかーあんまりしゃべんないからそうなのかなーって思っただけ
    これは私も良く迷うんですが、「そうなのかなー」は
    「そうなのかなぁ」とか「そうなのか?」とか、自分の好きな作者の本をみて
    真似てみるのもいいと思う。

    また。

  • >>46

    ライターさん、ありがとうございます。

    昨日、久々に本棚の前に座り込んで大好きな童話の本を読みふけってました。
    もちろん、ライターさんからの指摘されたことを踏まえて。

    いつもは本の世界にどっぷりなのに、文章を見ながら考えながら読むと、楽しかったです。

    すごく勉強になりました。

    これからもよろしくお願いいたします。

  • >>43

    ヒロキさん

    ヒロキさんの書くものは下手なんかじゃないよ。むしろ上手だと思います。
    ただコンクールに作品をだすならそれなりの慣習に沿ってなければ
    それだけでアウトになるようなんです。

    童話ではどうなのか分からないけど、少なくとも小説ではそうみたいですよ。
    少しづつ、指摘させてもらうね。気悪くしないでくださいね。

    「!」「?」などの感嘆記号のあとはワンスペースあける。
    数字は「1,2,3」ではなく「一、二、三」とする。

    ぼちぼち行きましょう。

  • ポエムの箱庭
    ≪ビィトウィーンザシーツ≫

    テーブルの間をすり抜けていく
    しなやかに、優雅に
    穏やかなひと時を求め
    安らぎを求める人たち
    キャンドルに灯をともしていくように
    好みのカクテルを届けていく
    君の唇から紡ぎだされるカクテルの名を
    耳より眼で見つめてしまう
    俺の指から君の指に
    吸い込まれるように流れていくグラス
    その指を絡めとり、胸に引き寄せたいと
    その濡れた唇を啄みたいと
    君のためだけに俺は作ろう
    君の瞳と同じ琥珀色のカクテルを
    そして君に言おう
    カクテル名と同じ言葉を
    指を絡ませ君を誘おう
    素直な気持ちのまま・・・

  • >>41

    ライターさん、おはようございます。
    文芸社さんですね。調べてみます。ありがとうございます。下手な文章だなぁと自分では思っているんだけど、悪い所をたくさん指摘してもらって向上ですよね(^ ^)

  • ポエムの箱庭
    《道化師》
    今宵の道化師のステージは
    幕を降ろします。
    でも、道化師は鏡に背を向け、
    家族のもとに作られた笑顔のまま急ぎ足。
    道化師は仮面を外す事を
    忘れてしまいました。
    辛い表情も、悲しい表情も
    家族を悲しませるから
    道化師の体に蔓延るイバラは
    容赦無く蔓をのばし
    真っ赤な血の色の蕾をつけ
    花咲く頃には
    闇の色に染められてます。

    道化師の仮面の下
    頬を伝う涙は
    誰が拭うのでしょうか

    道化師の素顔は
    皆の記憶から消え
    いつしか仮面が素顔と化した頃
    道化師は闇の花に埋れ
    安らかに眠るのでしょうか

  • 書き始めましたね。
    もう大丈夫みたいだね。
    書くことを楽しんで下さい。

    文芸社で絵本(文字だけもあり)の募集がありましたよ。
    一度応募してみてるのも勉強になると思う。

  • >>39

     別途の傍らでただ見守る事しかできないでいる俺に
    「ヒロ、向こうに行ってろ」
    いつの間に来たのか木島が一人の男性を連れて部屋にいた。
    「俺もいる」
    「診察が終わったら呼んでやるから、今はリビングで待ってろ」
    俺がここにいては加納を診ることができない。
    「わかった、木島さんすみません」
    「バカ、誤るな」
    木島の後ろにいた男にも軽く会釈をして俺は部屋を出た。
    何も考えられずぼんやりとしていた。家族の時のように……手のひらから砂が零れ落ちるように……消えていかないでほしい。
     寝室のドアがそっと開いた。出てきたのは木島一人だった。
    「木島さん…..加納は」
    「ヒロ、大丈夫だ。熱が高いのは傷のせいだろう。ケンカした時のようなもんだ。それより彼は何者だ」
    「クラスメイトで、このマンションに住んでます。2、3度話したぐらいだが、一度寝た」
    木島にしては珍しく驚いた顔をした。
    「ヒロ、あの子とはもう関わるな。はっきりとは言えないがヤバイ気がする。」
    「俺も関わりたくない。そう思ってる、でも思っていても気になって仕方ないんだ。今にも壊れそうで。なのに、強がってる姿が痛々しくてたまらないんだ」
    「自分と重ねるなよ。体の至る所に傷がある、背中は特にひどいし、最近のものだ。たぶん鞭のようなもので撃たれたものだろうということらしいが。骨まで見える程酷いものから明らかにプロの手による傷もある。この意味わかるな」
    「プロって……でも、何か…..」
    俺にも何か出来るのではと、口を開きかけたが、言葉が出てこない。想像の範疇を越えてる。俺には何もできない。
    呆然と立ちすくむ俺を木島は、優しく抱きしめてくれた。

  • <章=9>
    眠っているのだろうか、膝に顔を埋め身動きしない。
    「おい、どうした?加納、こんな所で寝るな。」
    俺の声にかすかな声が漏れるが言葉になっていない。
    「大丈夫か?」
    肩に手をやるとかなり熱い。よく見れば髪もしっとりと汗で湿っている。
    「加納、熱があるじゃないか。しっかりしろ」
    ドアを体で押さえながらなんとか加納を抱き上げた俺は、急いで自分のベットに寝かした。
    とりあえず医者だ。だが、何があったか解らない以上下手に救急車は呼ばない方がいいだろう。
    「木島さん、遅くにすいません。」
    「どうした、さっき別れたとこだろう、面倒事か?」
    「流石ですね。ちょっと、内密に医者をお願いしたいのですが」
    「おい、穏やかじゃないな。怪我でもさせたんじゃないだろうな」
    「違います、俺にはそんな元気、今日はありませんよ。家の前でダチが熱出してるんで俺のベットに運んだんですけど、なんだか暴行されたような感じで」
    「解った、すぐ行く」
    木島にはあまり世話をかけたくなかった。しかし、今回は、そうも言ってられそうにない。
    いったい何があったんだ、この一週間の間に。
    とりあえず、タオルに氷をくるんで額に乗せてはみたものの、加納の苦しげな表情はあまり変わった様子はないが、少しは楽になっていてほしいと願うしかなかった。

  • <章=8>
    その日から加納が学園に来なくなった。あんな事のあった後だけに少しは気になっていたが、シャドウでのライブがあったりして、忙しさを理由に思考の隅に追いやっていた。
    だが、暇になってくると気になって仕方なかった。もう、加納の姿を見なくなって1週間になっていたから。学園側には何か連絡が入っているのか担任は普段と変わりない。
    放課後、何もしないでいられなくなり、
    「同じマンションだし、覗いてみるかな」
    と、言い訳のようにぼそりとつぶやきを漏らしながら自転車を走らす自分が気恥ずかしかった。
    加納の新聞受けに新聞が押し込められていた。何日も帰っていない証拠のようで、不安になる。
    『どこに行ったんだ?』
    どうすることも出来ず、帰ることにした。階段を下りていく途中で一人のサラリーマンとすれ違った。軽く会釈をされたが、見覚えのない男だ。
    木島に相談しようかと一瞬考えたが、やめた。
    龍也が木島との関係をよく思っていないと知ってから龍也の前では従業員の顔でいるようにしていた。今日も木島と服のサイズの話をしていた時、何気なく木島が俺の腰に腕を回しただけで、龍也はふきんを投げてきた。
    「ヒロ、オーナーには恋人いるんだから騙されるなよ!」
    「龍也、いい加減にしないか。俺はヒロにはもう手は出さないよ」
    「もう…….って手を出したんですか?」
    龍也が俺の腕を引き
    「ヒロ、お前はどうなんだよ?」
    龍也の心配が可笑しかった。嬉しかった。
    「龍也、心配するなって、このオヤジは俺の嫌いなタイプだから」
    龍也から見えないように木島の手は俺の背中を悪戯していたのだが・・・・。
    そんな事も気づかない龍也は俺の言葉に
    「そうだよな」
    嬉しそうに納得する龍也が可愛くて、
    「俺が好きなのは龍也だよ」
    と、軽く触れるだけのキスをした。
    目を丸くして固まった龍也に店中が爆笑した。和やかな時間に加納の事を忘れていた。
    明日は学校が休みなため、シャドウを出たのがいつもより遅くになってしまった。
    玄関の前に黒い塊、なんだ……と近寄れば人だった。よく見ればそれはいなくなっていた加納だった。

  • >>36

    寝室のドアーを開け、ベットの前まで来て振り向くと、俺のすぐ後ろにいた加納を抱き寄せる。
    「約束だったよな、部屋では激しくだったよな」
    見上げる加納の瞼が閉じるのを待ち、唇を合わせる。軽く啄ばむようなキスを繰り返し、下唇を挟むようにすれば吐息をつくように薄く開いた唇に舌を滑り込ませ、舌を絡めとる。
     肩を弾ませ、俺の胸に顔をうずめる加納の後ろ髪に絡ませた指を引けば、さっきまでの強気の態度が嘘のように泣きそうな瞳があった。
    「何を隠してる?」
    「……..」
    「俺とこのまま先に進んで、お前は楽になれるのか?」
    「何言ってるんだよ。僕が誘ってるんだよ。僕じゃ出来ないってんなら仕方ないけどね」
    俺を見上げる加納の頬を流れていくものが、無理に笑って話す言葉より心を映し出していた。
    「そうだな!何かを忘れるために抱き合うのもいいのかもな」
    ベットに腰掛けたまま俺は、加納の腕を引いた勢いのまま倒れこみ組み敷く。
    制服のボタンを外し、肌に指を滑らせれば、加納は唇を噛み締めきつく瞼を閉じている。
    「悪いな、これ以上は無理みたいだ。今日はこのまま少し休もう」
    俺は、身体を横にずらし腕に加納を抱きこむ。
    腕の中で、声を殺し肩を震わせ泣く姿を愛しいと思う。俺達は似たもの同士なのかもしれない。
     震えがいつの間にか寝息に変わるまで俺は、加納のぬくもりを感じてた。そっと、加納から腕を解きベットから降り、夕飯を作りにキッチンに。
     オムライスを皿に盛り、寝室を覗けば加納はまだ眠っていた。仕方がないかとルームランプをつけ、キッチンのテーブルにラップをかけたオムライスとメモを残しバイトに向かう。
     空が闇から光への準備が始まる頃、俺はバイト先から家への道を走っていた。
    一人ベットに置いてきた男の事が何故か気にかかって仕方ない。バイト中もそうだ。思考の片隅に追いやったはずなのに、ふと気がつくとあいつのことを考えてる。何かを隠し持ってるような人間には近づきたくないと思うのに…….苦々しい想いが俺を苛立たせる。
    そんな俺を嘲る様にからのベットが俺を迎える。
    「くそっ!!」
    振り回すあいつに腹が立つのか、振り回されてる自分に腹が立つのか。
    数時間しかない睡眠を取る為に布団を頭から被り、目を無理やり閉じる。悪夢を見そうだ。

  • <章=7>
    マンションのエレベーターの壁に背を預け、ため息をこぼしながら、思考をバイトに行くために切り替えるべく家に帰ってからのことを思い浮かべていた。
     だが、エレベーターを降り、家の玄関の前に佇む加納の姿に俺の思考は否応なくさかのぼる事になった。
     人の近づく気配に顔を上げた加納は、
    「遅いよ、僕の行った事信じてなかったの?」
    「いや」
    軽く返事を返し、玄関を開け加納を先に通した。
    「上がっていい?」
    「あぁ」
    「弘樹ってたくさんの言葉をしゃべるのって、損だと思ってる?」
     変なことを言い出す加納に俺は、眉間に皺を寄せ見つめてしまった。
    「違うのかーあんまりしゃべんないからそうなのかなーって思っただけ。深い意味ないからそんな年寄りみたいに皺作らないの」
    にこやかに笑いながら、部屋に入っていく加納。そんな加納を見ていると加納が何をしに来てるのかを忘れそうになる。
    俺は、鞄をソファーに投げ、キッチンで自分のコップにお茶を入れながら加納に話しかける。
    「何か飲むか?」
    「ううん、今はいいよ。ありがとう」
    「どうする、すぐベットに行く?」
    首を少し傾げながら聞く加納に、忘れようとしていた事を思い出す。
    「ほんとにするのか?」
    俺は、あまりにも明るく言ってくる加納に戸惑いを感じ、確認をしてしまう。
    「うん、そのつもりだけど…….弘樹は僕じゃ相手に出来ない?」
    「いや、そんなことはないと思うが、わからない」
    「じゃーお試しみたいでいいじゃん。行こう」
    俺の手からコップを奪い、テーブルに置いて俺を促す。
    「解った。こっちだ」

  • <章=6>
    今度は、俺の胸に重みを感じ、わずかに体を起こしてみた。その重みは加納の頭だった。
    俺の胸に頬を預け、
    「起きてたんだろ?何故逃げなかった?」
    「嫌じゃないのか?男に寝込みにキスされて」
    加納は顔の位置を変え、俺に視線を合わせ尋ねてくる。
    「たいした事じゃない、感情が伴わないキスなど、今更だ」
    「じゃ~、もっとしてもいいって事?」
    俺は、加納の視線から逃れ、空を見ながら
    「好きにすればいい。但し、ここでは遠慮したい」
    俺の返事を聞き、加納は体を起こし笑い始めた。
    「おかしいことを言うね、弘樹は」
    「場所変えたら、僕を抱いてもいいってこと?」
    「・・・・」
    返事のしない俺に加納は、
    「どっちなの?」
    と聞いてくる。
    俺は、腕を頭の上に伸ばし、勢いをつけて上体を起こしながら、隣に座る加納に
    「俺は、抱いた事は一度もないが、それでもいいならお前次第だな」
    「ふ~ん、いいよ!弘樹、僕の好みだしね。抱いた事はなくても抱かれた事はあるってことでしょ?」
    「ああ」
    「じゃ~問題なし!やり方解るってことだもん。」
    「今日、帰りに弘樹家行っていい?」
    「バイトに行くまでなら、好きにすればいい」
    「OK!今度は約束のキス弘樹からしてよ」
    俺は、何の躊躇いもなく、加納に触れるだけのキスをした。
    「部屋では、もっと激しいキス期待してるね」
    加納は、それだけ言い残すと、立ち上がり屋上を後にした。
     完全に覚め切らない眠気を、大きく伸びをする事で排除して屋上の扉を抜け、教室に向かった。教室には何人かのクラスメートが雑談に花を咲かせていたが、その中には加納の姿はなかった。自転車置き場かな?と思い鞄を抱え、向かったがそこにも加納の姿はなかった。仕方なく一人自転車を走らせながら、さっきの加納の笑いながらの言葉を、だが、言葉の軽さとは裏腹に俺を見つめる瞳の強さを思い出していた。

  • <章=5>
    何事もなく俺は、学園と家とバイト先を行き来する以外は、無気力に過ごしていた。龍也からの誘いを用事があると、断る日が増えてきて、昼も三人が一緒に食べる事もなくなってきていた。
     そんなある昼休み、俺は、弁当を持って屋上に来ていた。だいぶ陽射しが強くなってきたから、屋上には誰も来ない。だから、静かでいい。
     だが、今日は先客、加納が給水塔の影で寝ていた。風が少し伸びた髪を躍らせている。遠目には気持ち良さそうに寝ているように見えたのに、側によると彼の頬には涙の後、瞼にはまだ雫が残っていた。
     静かに横に座り込み、俺は弁当を食べることにした。何故かは自分でも解らない、ただなんとなくそうしたいと思った。
     加納が眼を覚ました時、一人にしたくなかった。いつ目覚めるかなんて知るもんか、それでもそれしか思いつかなかった。
     弁当を食べ終えても加納は目覚めそうにない。
     風が気持ちよく昼寝には丁度良い。6時限目は確か体育だったな。体を動かしたくないなーと、俺も加納の隣に横になった。青い空と白い雲、心地よい風、睡魔が訪れるには時間はかからなかった。
     遠くで野球部の掛け声が風に乗って聞こえてくる。覚醒前のぼんやりした頭で、放課後まで寝てしまったか、と重い瞼を開けた途端、俺の視界には瞼を閉じて近づく加納の顔が写った。そして、俺の唇にそっと触れる加納の唇の感触を残し離れていった。俺は、慌てて目を閉じ、気づかない振りをした。

  • <章=4>
     携帯から流れる軽快なアニメソング。
    『達也の野郎、また目覚まし音を変えやがったな』
    唸り声をあげながらもそんな事を思いながらも体を起こす。
    眼が覚めてくると、急に空腹を感じる。身支度を整え、学ランの上にエプロンを引っ掛け、朝食を作る。プレーンオムレツとトーストと牛乳。弁当は昨日の残りのてんぷら、きんぴら、白和え、玉子焼き、ししとう…….こんなもんだなと弁当箱を鞄に放り込む。
     今日は帰りに買い物して帰らないとな、と所帯じみたこと考えながら玄関に鍵をかけ、ふと癖のように、また、加納が落ちてくるじゃないかと階段の上を見上げてしまう。
     学園では、俺から話しかけるのは、龍也と一海以外誰もいない。もちろん話しかけてくるものもいない。学園の外では、加納は屈託のない笑顔で話しかけてくるが、学園では、一切話しかけてこない。それどころか視線さえ合わそうとしない。
     俺にとってはその方が楽なのだが、こうも態度が180度違うと気にはなるものらしい。
     放課後、龍也が一海を連れ、教室にやってきた。今日は、このままバイト先である『シャドウ』に向かうためだ。
    「ヒロ、もう帰れるか?」
    そんな龍也の呼びかけに
    「ああ」と片手を挙げて答える。
    龍也の横では、一海が恥ずかしそうに会釈する。
    そんな一海の仕草がほほえましく、可愛くて俺は顔が緩む。
    龍也は、珍しく優しい表情を見せた俺に、
    「一海は俺のだからな」
    と、笑いながら突っ込みを入れてくる。
     内心、俺がドキリとした事など気づかずに一海を促し、廊下を歩いていく。
     二人の後姿を眺め、俺はいつまで耐えれるだろうと心の動揺を覆い隠す。そんな俺達を教室の隅で冷めた表情で見ていた者にも気づいてはいなかった。

  • <章=3>
    うるさい鳥の囀りに浅い眠りから覚まされる。目覚ましから起きろのサインは出されてはいないが、寝直すまでもなく起こされるだろう時間なのは確かのようだ。
    「仕方ない、起きるか」
     声に出して、自分に勢いをつける。自分に言い聞かせるような独り言が、最近多くなってきた。
     部屋から部屋に動くたび、頭を下げなければ通れない自分のでかさに、うんざりする。
    「天井の高い家に住みて~な~。」
     ダチに言わせると、贅沢なやつと一言で済ませられるが、俺にとっては、不便なんだよ。
    「今日は早く起きてしまったし、自転車で行くかな 。」
    俺は、簡単に朝食を済ませ自転車置き場に向かった。

    自転車置き場には先客がいた。加納美幸が地面に四つんばいになって、植え込みに頭を突っ込んでいる。
    「そんなところに座り込んで何やってんだ。」
    加納は、植え込みから顔を上げ、状況とは不似合いなにこやかな声で、
    「あ~、おはよう。」
    「だから、おはようじゃない。何やってんだ。」
    「うん、落とした自転車の鍵を、蹴飛ばしちゃって」
     俺は、その言葉を聴いて、ため息をついた。
    俺は自転車に跨り、
    「後ろに乗れ!早くしろ!」
     彼は、ぽや~と真昼の行灯みたいな表情で、俺を見上げたまま動かない。
    「いい加減にしろ!ちゃっちゃっと動け!」
    「はい!」
    彼は、弾かれた様に後ろに飛びのいた。
    「鞄は置いていくのか?」
    「あー忘れてたー」
     何とも呑気な声の後、はははと作り笑いをしながら、鞄を抱え後ろに戻ってきて、俺の腰に腕が回る。
    俺は、それを確認して、自転車を走らした。
    『こいつは何なんだ。宇宙人か~。俺には理解できん。』
     心の中で叫びながら、ペダルを扱ぐ足に苛立ちが乗り移ったように力が入る。
    「はや~い、はや~い、弘樹すご~い。」
     俺の苛立ちなんか知ってか知らずか、脳天気な歓声が風に流されていく。
    脱力と苛立ちを乗せ、一路自転車は学園まで疾走したのは、言うまでもないか。
    学園での生活は、カセットテープがリピートし続けるように過ぎていった。

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