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オンコセラピー・サイエンス(株)【4564】の掲示板 2018/11/16〜2018/11/26

がんに効く薬』
近畿大学医学部外科学教授
奥野清隆
 筆者の専門である大腸癌を例に挙げよう。大腸癌は基本的には治りやすい癌であり、第III期(ステージIII)までであれば手術によって70%以上が治る(5年生存が得られる)。しかし手術不能であったり、遠隔転移(肝転移や肺転移、脳転移、あるいはこれら複合)を有する第IV期(ステージIV)となると途端に成績が悪くなる。この状態で特に治療を行わなければ平均8か月程度の余命である。それが最近になって平均生存期間も20か月から24か月。さらに分子標的薬(アバスチンやアービタックス)の併用で平均2年以上に改善されている。あくまでも平均であるが、かつてはせいぜい8か月程度の余命であったものが2年近くも延長したのである。これは確かに大きな進歩である。

 ところが筆者らが東大、中村祐輔教授らとともに精力的に行っているがんペプチドワクチン(+経口抗がん剤療法)は少し変わった経過をとることが多い。画像診断上、縮小することが少ないのである(もちろん強力な抗がん剤療法のように退縮がみられることもあるが頻度は少ない)。「余り効いていないなあ。がんは小さくなりませんねえ。」と患者さんとともにため息をつきながら、それでも他の療法もないのでがんペプチドワクチンを打ち続けていて、ふと気が付けば「え、もう2年たつねえ」とか「3年経過したねえ」ということが多いのである。FOLFOX, FOLFIRIやそれに分子標的治療薬を加えて平均生存期間が2年以上になったと大騒ぎすることを難無くクリアすることが多いのである。しかも生活の質(quality of life: QOL)が損なわれることが少なく、「無事、定年まで勤められました」とか「やりかけていた仕事をまとめることが出来ました」と感謝されることが多い。しかしこれは現在の抗がん剤の基準(RECIST)に従えば不変(No Change)であり、効果はないということになる。果たしてこれは適切だろうか。