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北越工業(株)【6364】の掲示板 2018/08/12〜2024/03/07


石油輸出国機構(OPEC)からの輸入は直近ピーク(08年)の約5割と31年ぶりの低水準にまで下がってきたことで、「中東の重要性は薄れてコストを払ってまで介入しなくなる」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミスト)。
米国が長らく「世界の警察官」として振る舞ってきた理由の一つはエネルギーの安定確保だ。国内油田の資源減少が鮮明になっていた1973年の第4次中東戦争は石油危機につながり、急激な物価上昇で世界経済に打撃を与えた。
このため原油依存を深めていった中東では、91年の湾岸戦争など地域の秩序維持を主導してきた。だが昨年12月に内戦の続くシリアからの米軍撤収を表明。エネルギー安全保障の観点から中東に積極関与する政策の後退が鮮明になっている。
一方で米国は石油危機の経験で禁止していた原油輸出を2015年の解禁後から急速に伸ばしており、18年11月最終週にはサウジやロシアなどに次ぐ世界4位の規模にまで膨らませている。
市場では米国の存在感に関し、「OPECが減産で価格を上げようとする『神通力』が低下する」(楽天証券の吉田哲コモディティアナリスト)と、相場の押し下げ要因になるとの見方が強い。
原油相場は足元で1バレル50ドル前後で推移している。米国の増産は「想定以上のペースで続けば上値を抑える」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之首席エコノミスト)とも意識され、原油収入に財政を頼るロシアや中東の統治基盤を揺さぶる可能性もある。
米国の原油と石油製品を合わせた輸出は昨年11月に週間で一時的に輸入を上回り、同じ基準で遡れる1991年以降初めて純輸出になった。シェールオイルの生産は掘削資金の調達環境などで振れる面もあるが、著名アナリストのダニエル・ヤーギン氏は「20年代初頭には年間でも純輸出国に転じる」と予測する。
トランプ政権は世界へのエネルギー供給を源泉に新たな覇権をめざしている。原油の輸出入収支は17年に1100億ドル(約11兆円)のマイナス。モノ全体の赤字の14%を占め、輸出拡大で貿易赤字を減らす思惑もある。天然ガスはすでに17年に純輸出国に転じた。米国はエネルギー消費大国から輸出大国への道を走り始め、資源を背にした世界の政治力学に変化を及ぼしそうだ。
(ニューヨーク=中山修志、久門武史