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ブスの部屋の掲示板

 FRBは9月時点で2兆4654億ドルの米国債と1兆7823億ドルのMBS(住宅ローン担保証券)を保有しており、総資産が4兆5180億ドルとなっています。2008年のリーマンショック直前の総資産は9000億ドル弱でした。

 FRBの量的緩和(新規の資産取得)は2014年10月に完全に終了していますが、これまでは保有債券が償還になるとその全額を再投資していました。

 10月からその再投資額を徐々に減額して保有資産を縮小することになりますが、最初の3か月は毎月100億ドル(国債60億ドル、MBS40億ドル)ずつ縮小し、以後3か月毎に100億ドルずつ縮小額を拡大して、1年後の2018年10月から毎月500億ドルずつ縮小するはずです。

 つまり2017年の縮小額は300億ドル、2018年は4200億ドル、2019年以降は6000億ドルずつの縮小となります。ここでFRB 保有資産は年間4000億ドルほど償還されていますが、このスケジュールだと2019年以降は保有債券を市場に売却しなければなりません。

 そこは縮小開始後に再投資される債券をできるだけ短期債にして、市場への影響を最小限にするはずです。

 ところで同じ9月時点のFRBの負債は、1兆5807億ドルの紙幣発行残高と2兆3601億ドルのReserve Balances(日銀当座預金と同じで傘下銀行の預け金)があります。それに3667億ドルの債券レポ残高などが加わり総負債は同じ4兆5180億ドルとなります。

 ここでFRBが保有資産を縮小しても、このReserve Balancesが縮小となるため、実際に市場から資金が吸収されるわけではありません。

 ここでドル紙幣とは厳密にいうとFRBが保有する米国債を小口・無利息・無記名に分割したもので、FRBは常に「紙幣発行残高を少し上回る米国債」を保有していなければなりません。

 その辺を考えると現在2兆4654億ドルあるFRBの米国債保有残高は、せいぜい7000億ドルほどしか減らせないことになります。FRBは最終的に保有資産をどれだけ縮小するかを公表していませんが、仮に保有資産を2.5兆ドル縮小して総資産を2兆ドルとするなら(それでもリーマンショック前の2倍強)、現在1兆7823億ドルあるMBS残高をゼロにする必要があります。

 確かにリーマンショック時に、市場が完全に崩壊していたMBSを「どさくさに紛れて」FRBに押し込み、後から景気対策(あるいは雇用対策)のためと理屈をつけたものが「量的緩和」であるため、イエレン議長としてはそんなMBSは早くFRBの資産から消してしまいたいと考えているはずです。実際にそういう意味の発言もあります。

 つまり米国の量的緩和とは住宅ローンを含む不動産対策でしかなかったはずで、FRBの保有資産縮小も米国不動産への影響に最も注目しなければなりません。

 そのMBSは今でも米国債に比べると流動性がかなり落ち、毎月少しずつ償還されるものの残存年数はFRBが保有する米国債よりかなり長いはずです。つまりFRB保有資産縮小の「米国債券市場に対する影響」とは、1兆7823億ドルあるMBSの行方となり、長期にわたってMBSの流通・発行市場に影響が出るはずです。

 それほど遠くない時期に米国政府が、日本の外貨準備やGPIFやゆうちょ・かんぽ資金によるMBS購入を迫ると予想します。それがFRBの保有資産縮小の日本に対する「最大の」影響と考えます。

 FRBの保有資産縮小が本格的な金融引き締めになるとは認識されていないはずで、米国株式は上昇を続けています。

 しかしFRBの保有資産縮小の影響は、このように複雑であるはずで、今後「思いもかけないところに影響が出る」こともありそうです。