ここから本文です
投稿一覧に戻る

ブロックチェーン未来図の掲示板

日経新聞

ビットコインキャッシュ一時「3倍」、「インサイダー調査」が示す市場の未成熟

2017年12月21日 9:45 

インターネット上の仮想通貨ビットコインキャッシュ(BCH)が前日20日に急伸した。既に日本時間の同日午前には、過去最高値の1BCH=3000ドル台を付けていたが、夜間にかけてさらに上昇。コインベースが運営する米大手電子取引所では、その約3倍の9500ドルという異常値を付けたようで、その後、取引がすぐに停止した。BCHは本家ビットコインに比べて認知度が低く、取引の自由度を示す流動性は本家に遠く及ばない。このためまとまった規模の買い注文による振れ幅はかなり大きい。背後には法定通貨をも揺さぶる巨額の機械取引「アルゴリズム」の影も見え隠れする。

20日のBCH急伸の要因は3つ考えられる。まずはビットコインの情報サイト「Bitcoin.com」の幹部がツイッターで「ビットコインは使いものにならない。全額売却しBCHに乗り換えた」とつぶやいたことだ。Bitcoin.comは本家の送金遅延問題などに批判的な論調で知られるが、「全額乗り換え」に投資家は強く反応した。2つ目にビットコインのマイニング(採掘)コスト上昇に音を上げた中小マイナー(採掘者)の流入。最後に「コインベースが当初来年1月に予定していたBCHの取り扱いを年内に早める」との観測だ。

コインベースの動きについては、正式発表がない段階でうわさが流れていた。ツイッターのコメントにも登場し、市場参加者のBCH買い意欲を高めた。そんな不穏な空気が漂う中でコインベースが運営する電子取引所GDAXが実際にBCH取引を始めたために「9500ドル」が実現したわけだ。GDAXはすぐに売買停止に踏み切った。

BCHの大幅高をもたらしたとされる材料は中小マイナーの悲鳴も含め、ツイッターが深くかかわっている。ツイッターは個人にとって大切な情報源となるだけでなく、ヘッジファンドなどの主要投機筋がアルゴリズムを組むときの重要なツールだ。市場では「何らかの形でアルゴが相場を揺さぶった可能性は高い」(外国証券の顧客担当者)との声が聞こえてくる。

20日のBCH狂騒曲は、大口注文に弱い仮想通貨市場の未成熟さを浮き彫りにした。欧米メディアによるとコインベースはその後、社員に対するインサイダー取引の疑惑について調べる考えを示したという。巨大な法定通貨の市場ではインサイダーの問題はまず耳にしない。実際の通貨には遠く及ばない仮想通貨の市場規模の小ささを改めて認識した投資家が少なくないはずだ。

〔日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 今 晶〕