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便所の落書きの掲示板

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  • 2021/02/16 05:38
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掲示板のコメントはすべて投稿者の個人的な判断を表すものであり、
当社が投資の勧誘を目的としているものではありません。

  • Amazon 新CEO に、マーケ業界は何を期待しているか?:AWSでの成功体験を活かす

    数カ月後、新たなCEOがAmazonの手綱を握る。その人物は、時価総額1兆ドル(約105兆円)を超える企業を、どのように舵取りしていくのだろうか。

    ジェフ・ベゾス氏の後任に指名されたのは、アンディ・ジャシー氏。同氏は2021年第3四半期から、Amazon舵を取ることになる。1997年、Amazon上場からわずか数カ月後に入社したベテラン社員であるジャシー氏は、この約15年間、AWS(Amazon Web Services)を率いてきた。かつて社内で付随的だった同部門は、ジャシー氏の手腕により、Amazonをテックジャイアントへと後押しするまでに成長。実際、AWSの2015年第4四半期の収益は24億1000万ドル(約2500億円)だったが、2020年第4四半期は、127億ドル(約1兆円)にもおよぶ。

    ベゾス氏はAmazonにエグゼクティブチェアマンとして残るため、これは完全な政権交代ではない。しかしそれでも、新CEOがいくつかの変化をもたらす可能性はある。セラーからエージェンシーまで、Amazonが提供するプラットフォームに依存してきた企業たちは、ジャシー氏がより統合型のビジネスを生み出し、AWSで得た学びをAmazonの事業拡大に活かすことを期待している。ジャシー氏はこれまで、テクノロジーとサービスにフォーカスしてきたことを考えると、リテールビジネスにどうその経験を活かしていくかは、まだ見えてこない。内部事情に詳しい者たちによれば、突然の変化も驚くような変化もないだろう、というのが業界を覆う、いまのところの空気のようだ。

    ジャシー氏への期待
    2020年は、Amazonにとってもリテール業界全体にとっても、きわめて騒々しい1年だった。Amazonは同年、Amazonは大幅な成長を遂げ、年間売上は前年比38%増の3861億ドル(約40兆円)を記録。ただし、相応のコストも伴った。ベゾス氏は2020年第2四半期の収支報告において、新型コロナウィルス関連への対応に第1四半期の利益40億ドル(約4200億円)を費やしたと発表。Amazonは需要高騰を経験したが、危機にも陥り、その需要に応えられる新たなインフラの構築に励んだ。続いて8月、コンシューマ部門を統括していた重鎮、ジェフ・ウィルキー氏が退任。ウィルキー氏はベゾス氏の側近のひとりだっただけに、業界に衝撃が走った。

    そして、そんなバタバタも収まりつつあるいま、Amazonの長期展望が見えてきている。「ベゾス氏はこれまで30年近くにわたり、自らの強い思想でAmazonを動かしてきた」と、Amazonのセラーやベンダー向けの支援を提供する、オルカ・パシフィック(Orca Pacific)の創業者/CEO ジョン・ギオルソ氏は述べる。「それだけに、劇的な変化が起きるとは思えない」。

    しかし、AWSを率いてきたジャシー氏の姿勢には、変化の展望を伺わせるヒントもある。「ジャシー氏がAmazonで築いたのは漸進的ビジネスであり、AWSの成長だけでも、過去20年における最大の成功物語といえる」とギオルソ氏。「もし彼が行動を起こし、同様のビジネスをあと新規に10ほど築けるとしたら、その先にはAmazonの勝利がある。あくまで、漸進的な形ではあるが」。

    セラーとブランドの統合
    では、どのような変化が期待されているのか。「Amazonは[歴史的に見て]顧客にフォーカスしてきた」と、コンサルタント会社ポディーン(Podean)の創業者/CEOマーク・パワー氏は指摘する。「Amazonのエコシステムでは、顧客だけでなくあらゆるパートナーが重要なのだが、その点をAmazonはいまだに理解していない」。つまり、複数の業界全体がAmazonの超強力なフライホイールのおかげで成長した一方、同社は依然、それらを統合できていない。それゆえ、「Amazonには、多くのサービスパートナーと、より良い関係を構築してもらいたい。我々は皆、もっと有意義な関係を求めている」。AWS時代に企業間関係を重視したジャシー氏に期待していると、パワー氏は強調する。

    最近の数字に、こうした関係性が明確に現れている。eコマース解析企業、マーケットプレイス・パルス(Marketplace Pulse)のジョー・カイザクーナス氏のツイートによれば、Amazonの2020年第4四半期マーケティング予算のうち、実に97%が広告収入によって「まかなわれた」。

    広告は、セラーおよびブランドの成功に不可欠な要素であり、エージェンシー勢はそのおかげで帝国を築いている。Amazonもこの恩恵を享受しているのだが、いまだ両者を完全には統合できていない。「広告は、どのブランドやセラーとも緊密に関係している」とパワー氏。「にもかかわらず、両者は完全にサイロ化している」。

    変化はすでにはじまっている
    エージェンシーのトンブラス・グループ(Tombras Group)で、VP/ディレクターを務めるケヴィン・パックラー氏によれば、変化はすでにAmazon内部ではじまっているという。「AWSの成長から得た教訓の多くは、すでにAmazon Advertisingチームに伝えられている」と、同氏は米DIGIDAYの姉妹サイトのモダンリテール(Modern Retail)の質問にeメールで回答した。「ただ、エージェンシーやブランドにとっての大きな変化がすぐに起きるとは思えない」とパックラー氏。というのも、これらは組織面での変化であり、ハンズオフおよび自動化の推進を基本とする、Amazonのマーケットプレイス戦略からはかけ離れているからだ。

    とはいえ、こうしたAmazon内部での微細な変化も重要だ。これまでも同社は、セールス、およびアカウントエグゼクティブといったのインフラストラクチャーを整備するために採用を推進し、社全体の成長を促進してきた。もちろんこれは、ほかの団体/テック企業にもよく見られるものだが。

    詰まるところエージェンシー勢は、ジャシー氏がAmazon Advertisingの改善に、AWSの戦略を適用することを願っている。「もしもアンディが物置のなかを探し回り、AWSといった道具を見つけたとする。そして、それらを上手く使えば、Amazonはアドフラウドといった問題に、ほかの誰にもできない規模で取り組めると気づいたとしたら?」とパックラー氏は書いている。いまのところ、そうした問題への対応は、大半がいわばモグラ叩き状態なのだが、同氏いわく「アンディがAWSで得た実践的知識は、非常に興味深い。ひょっとしたら、新たなタイプのアドネットワークが、数年のうちに登場するのではないか」。

    一方、コンサル企業のボブスレッド・マーケティング(Bobsled Marketing)のCEO キリ・マスターズ氏は、フルフィルメントサービスはすでに成熟しており、より大規模のB2Bビジネスに成長できると確信しているようだ。同氏は最近、フォーブス(Forbes)誌に掲載された寄稿のなかで、「AWSは元来、Amazon内部における束縛/制約の解決を目的として発展したもの。Amazonはその漸進的余剰能力を、他企業や政府といったサードパーティに販売できた。同様に、Amazonは自社が抱える問題を解決するために、物流システムを構築したのであり、いまやその余剰能力を他企業/組織に転売できる状態にある」とした。さらにマスターズ氏は、その後のメール取材で「ジャシー氏がトップの座に就くことで、今後この動きは持続性をさらに増すと考える」と述べている。

    大局的な見解
    とはいえ、ほとんどのセラーおよびエージェンシー幹部らは、Amazonのビジネス手法自体に、大きな変化はないと見ている。というのも詰まるところ、ジャシー氏は20年以上にわたり同社の幹部を務めてきた人物だからだ。ボックス(Vox)の最近の記事のなかで、多くの事情通は同氏について、ベゾス氏の病的ともいえる顧客中心主義を共有する人物、と評している。

    「コロナ禍がなければ、(CEOの交代も含めた)Amazonの一連の動きは1年前に起きていたと思う」と前出のギオルソ氏は述べる。「予断は許されないが、状況が少しずつ落ち着いてきたいま、Amazonは着々と計画を遂行している」。

    [原文:With Jeff Bezos’ upcoming departure, Amazon agencies hope Andy Jassy applies AWS playbook to other services]

    CALE GUTHRIE WEISSMAN(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)

  • アマゾン創業者「ベゾスCEO退任」でマスコミが報じていない2つの重要ポイント

    アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が、最高経営責任者(CEO)を退任すると発表した。ベゾス氏の動向を追い続けてきた立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は「退任の背景には公私における2つの大きな変化があるのではないか」と指摘する――。

     ※本稿は、2月3日にClubhouseで行われた公開インタビューの内容を再構成したものです。

    ■ベゾスのメッセージにある「事業の順番」が非常に重要

     私は筋金入りの「ベゾス・ウォッチャー」です。ジェフ・ベゾスが出演した動画はほぼ見ており、ベゾスが株主に向けて書いたレターや取材で述べたコメントなども、可能な限りすべてウォッチしています。

     それだけに米国時間2月2日に発表された、「ベゾスは2021年内にアマゾン最高経営責任者(CEO)を退任し、取締役会長に就任する」というニュースを聞いたときは、少なからずショックを受けました。

     今回の退任にあたってベゾスがアマゾン従業員に宛てたEメールが、ネット上にアップされています。そこには、

     「会長になることで、引き続きアマゾンの重要な新規事業に従事しながら、デイワン・ファンド、ベゾス・アース・ファンド、ブルーオリジン、ワシントン・ポスト、その他の情熱に時間とエネルギーを注ぐ」

     とあり、ここからCEO退任後にベゾスが行おうとしている活動の内容を推し量ることができそうです。

     ベゾスはこれまで何度も、「自分は宇宙事業をやるためにアマゾンを立ち上げた」と語っています。そこから考えると、「まずは宇宙事業会社のブルーオリジンに注力するのではないか」と感じますが、今回のメールでは宇宙事業は、教育支援や恵まれないファミリーを支援する慈善活動基金の「デイワン・ファンド」、気候変動対策を行う「ベゾス・アース・ファンド」に続いて3番目に挙げられているに過ぎません。

     ベゾスは話すときも書くときも順番を重視する人なので、メールに示されたプライオリティを見るかぎり、今後は宇宙事業もさることながら、社会活動的なファンドの運営により大きな力を入れていくもではないかと予想しています。これまで「カスタマーセントリック(顧客中心主義)」を掲げ、ひたすらビジネスに突き進んできたベゾスが、ここにきて「社会問題を解決する」という方向に大きく舵を切ったことが感じられます。

    ■ベゾスの行動は「離婚の年」から大きく変わっている

     ベゾスは現在、世界一の資産家とされていますが、これまであまり社会活動には熱心ではありませんでした。アマゾンという企業も長年、マーケティングへの評価では企業ランキングの上位にあるのに、CSR、ESG、SDGsなどのランキングでは低い順位に留まっていました。それがなぜ、突然変わったのでしょうか。

     私は、今回の退任と活動のシフトにつながる分岐点として大きかったのは、マッケンジー夫人との離婚だったのではないかと感じています。

     2人の離婚は2019年1月に発表され、同年4月に成立しています。その結果、マッケンジーさんは、アマゾン株の4%に当たるおよそ383億ドル(約4兆1500億円)相当の資産を受け取ることになりました。その後、マッケンジーさんは離婚成立後に、総額185億ドル(約2兆円)を慈善事業に寄付すると発表しました。さらに翌20年7月に17億ドルを、それから12月までの間にも42億ドル(約4200億円)を寄付しており、今や慈善活動家として知られるようになっています。

     ベゾスの行動が変わったのは、この離婚の年からでした。

    ■「このままだと滅びかねない人類を救う」という壮大な意思

     離婚から4カ月後の2019年9月には、アマゾンCEOとして「気候変動対策に関する誓約(The Climate Pledge)」に調印しています。この誓約は「2040年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする」ことを掲げたもので、アマゾンはGAFAはもちろん米国企業の中でも、もっとも早い時期にカーボンニュートラルを宣言したのです。その後の2020年2月には気候変動対策を目的とする、基金100億ドル(約1兆円)の「ベゾス・アース・ファンド」を設立しています。

     ベゾスのアマゾン起業はもともとは私欲追求の面が強かったと私は見ていますが、その行動原理は2019年以降、明らかに変わってきています。今のベゾスは「このままだと滅びかねない人類を救う」という壮大な意思のもとに動いており、そこにはやはりマッケンジーさんの影響が強く感じられます。気候変動対策においてもGAFAの他の企業には負けたくないという競争心も行動原理に働いていると思います。

     ベゾスのCEO退任の理由としてもうひとつ考えられるのは、このところ強まっているGAFAへの逆風です。

    共和党と民主党の意見が一致する「GAFA叩き」

     GAFA批判はアメリカでも勢いを増しており、2020年にはそのCEOたちが一斉に上院の公聴会に呼び出され、ベゾスも辛辣な言葉を浴びせられています。

     それまでは民主党側がGAFAにきびしかったものが、トランプ政権の終わり近くになってGAFAがトランプ個人のアカウントを凍結したことで、親トランプの共和党保守派もGAFAに強い憎悪を抱くようになっています。今や共和党と民主党の意見が一致する数少ない政策が「GAFA叩き」なのです。

     ベゾスもアマゾンのトップでいるかぎり、今後も議会に呼び出されたり、批判を浴びせられることは避けられないでしょう。プライドの高い人なので、「もうそういう目に遭いたくない」ということも、本音の部分ではあったと思います。

    ■後任はアマゾン最古参の一人で、DNAを完璧に受け継ぐ人物

     ベゾスというカリスマ創業者の退任は、アマゾンのビジネスにどう影響するでしょうか。

     実は私は今回の決断は、アマゾンにとってもプラスに働くだろうと感じています。

     ベゾスは2017年のアニュアルレポートに添付した株主レターに、「いかにして大企業病からアマゾンを守るか」という話を書いています。そのための方法論のひとつが、「重要な問題以外の決定権はどんどん委譲していくこと」でした。

     権限委譲の目的は意思決定を早くすることです。もともとそういう考えで経営しているので、ベゾスがCEOから会長になるとは、「経営の決定に関与する際のハードルをもう一段上げる」程度のことなのです。

     新しいCEOのアンディ・ジャシーは、1997年にハーバード・ビジネススクールを卒業してすぐに、創業間もない時期のアマゾンに入社しています。アマゾン最古参の一人であり、ジェフ・ベゾスの経営者としてのDNAを完璧に受け継ぐ人物です。今回のCEOの交代で、アマゾンの経営が大きく揺らぐことはなく、むしろエンパワーメントによって意思決定スピードはさらに早くなるでしょう。

    クラウド事業でマイクロソフトを突き放したい

     「今回のCEO交代は、アマゾンの危機感の表れである」という見方もあります。

     今回の交代はアマゾンがコロナ禍の下で最高益を達成したタイミングで発表され、その意味では「花道」となるわけですが、ベゾスの視点に立って周囲を見回すと、小売業ではウォルマートがDXに成功してアマゾンを追ってきており、クラウドビジネスではマイクロソフトが急激にシェアを伸ばしています。数字上は最高益でも、ライバルたちがすぐ後ろから迫っている状況なのです。

     そんな中で新CEOにジャシーが起用された理由は、彼がアマゾンのクラウドビジネスAWS(Amazon Web Services)を立ち上げた人物であり、同事業のトップだということが大きいでしょう。

     AWSはアマゾンの事業の中でももっとも成長が期待されるビジネスです。しかし、これまでベゾスの下には3人の経営幹部が同レベルで並んでいて、組織としての意思決定が遅れがちとなり、クラウド分野でマイクロソフトの追撃を許していました。

     AWS担当のジャシーをCEOに引き上げたことでクラウド事業の展開が加速すれば、マイクロソフトを突き放す未来も見えてくるはずです。

    ■「製造現場のDX」にも参入してきた

     日本ではあまりニュースになりませんでしたが、アマゾンは2020年12月、「アマゾン・モニトロン」によって、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に進出しました。モニトロンは設備保全のためのセンサーをAIとセットで提供し、製造現場の設備故障を事前に予測するサブスクリプションサービスで、これを開発したのもAWS部門です。

     これまで日本では、「製造現場のDXはGAFAの手の及ぶ世界ではない」と信じられてきました。ところがそこにアマゾンが参入してきたのです。

     モニトロンが謳っているのは表面的には顧客へのサポートですが、本当にやろうとしているのは、製造業がこれからやろうとしているDXを先取りし、製造業のエコシステムをプラットフォーマーとして支配し、産業の覇権を握ることです。

     アマゾンは今後もこうしたかつてないサービスの提供によってプラットフォーマーの地位を確立し、これまで以上の成長を続けていくものと、私は予想しています。

  • イーロン・マスク氏、ウォール街の新たな「賢人」?

    【2月3日 AFP】イーロン・マスク(Elon Musk)氏は今や、ソーシャルメディアで一言二言つぶやくだけで、市場を動かせるウォール街(Wall Street)の巨人となりつつある。

     米電気自動車(EV)大手テスラ(Tesla)と宇宙開発企業スペースX(SpaceX)の最高経営責任者(CEO)であるマスク氏のツイッター(Twitter)への投稿が、暗号資産(仮想通貨)のビットコイン(Bitcoin)や米ゲームソフト小売り大手ゲームストップ(GameStop)の株価を動かした。

     そのマスク氏は1月31日、招待制の音声チャットSNS「クラブハウス(Clubhouse)」に進出。

     火星植民地化の野望や暗号通貨、人工知能(AI)などについてひとしきり語ると、ゲームストップの株騒動で注目を集める米新興ネット証券ロビンフッド(Robinhood)のブラッド・テネブ(Vlad Tenev)CEOに14分間のインタビューを行った。

     ゲームストップをめぐっては先週、ソーシャルニュースサイト「レディット(Reddit)」などで連絡を取り合った米個人投資家が、値下がりを見込んでいたヘッジファンドの空売りに対抗し同社株を購入、株価が急騰する出来事が起こった。これを受け、ロビンフッドはゲームストップ株の取引を制限した。

     マスク氏はテネブ氏に「教えろよ」と話し掛け、「先週何が起こったんだ? なぜゲームストップ株を買えないんだ? みんな答えを求めてる。詳細と真実を知りたがってる」と続けた。

    ■一言の力

     テスラ株の上昇により先月、世界一の富豪の座に就いたマスク氏には、ツイッターで4500万人近いフォロワーがいる。ファンからは先見の明(めい)があるとみなされており、その発言は一部投資家を動かす力を持っている。

     マスク氏が1月29日、ツイッターのプロフィル欄を「#bitcoin」という一言に変更しただけで、ビットコインの株価は一時約20%上昇した。

    ■「ナルシシストでショーマン」

     ポーランドのゲーム開発会社CDプロジェクト(CD Projekt)や、電子商取引(EC)プラットフォーム「ショッピファイ(Shopify)」、ハンドメード製品の通販サイト「エッツィー(Etsy)」の名をマスク氏が口にするだけで、これら企業の株価は高騰した。マスク氏は、愛犬用の手編みのニット帽をエッツィーで購入したようだ。

     ニューヨーク大学(New York University)の経済学者アスワス・ダモダラン(Aswath Damodaran)教授によると、影響力のある人物が企業の行方を左右することは過去にもあった。

     100年以上前の銀行家ジョン・モルガン(John Pierpont Morgan)や1980年代に米自動車大手クライスラー(Chrysler)を率いたリー・アイアコッカ(Lee Iacocca)の発言は、市場を動かすことができた。

     また、著名投資家ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏の一言一言は、多くの投資家に注目されており、出身地にちなみ「オマハの賢人(Oracle of Omaha)」と呼ばれている。

     だが、マスク氏は「非常に意識的に、ある種の無法者、アウトサイダー的なペルソナ(仮面)を作り出している」と話すのは、南カリフォルニア大学(University of Southern California)のコミュニケーション学教授クリストファー・スミス(Christopher Smith)氏だ。「それが、ITマニアのカルチャーと共鳴する」

     スミス氏は、米アマゾン(Amazon)創業者ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏のような経済界の大物は、自らの事業ポートフォリオに基づいて語るが、マスク氏は「おそらくもっと自分が注目されたいナルシシストで、ずっとショーマンだ」と述べた。

     自らのツイッターがいまだ市場を動かす力があり、それに伴う法的問題も発生する可能性に気付いたのか、マスク氏は2日、「ツイッターをしばらく休止する」と投稿した。もちろん、ツイッターに。(c)AFP/Juliette MICHEL

  • ●電気自動車の世界をこじ開ける

     こうしたスペースXの躍進と歩を合わせるように、テスラも幾度もの苦難を乗り越えながら今や自動車業界ナンバーワンの時価総額を実現するまでになっています。最初のロードスターは10万ドルを超える高額な車でしたが、2012年に「モデルS」、2015年にSUV車「モデルX」を発売、2017年に生産を開始した4ドア車「モデル3」は3万5,000ドルからと一般の人でも手が届く価格を実現しています。

     中でも「モデル3」の量産化を悪戦苦闘しながらも実現したことが、テスラの評価を高めることにつながっています。ただし、その苦労は並大抵のものではありませんでした。

     テスラにとって初の量産車と言える「モデル3」に関して、当初マスク氏は「週5000台生産」と約束しますが、その難しさは大変なものでした。マスク氏は「私たちはそろいもそろって空前絶後の大バカだった」と語り、2018年4月から「工場での泊まり込み生活」を始めます。

     マスク氏の泊まり込み生活は続き、6月の誕生日も工場で過ごしたといいます。工場に泊まり込む理由をこう話しています。

    「私はテスラで働く社員に多大な恩恵を受けています。私が床の上で寝るのは、道の反対側にあるホテルに行けないからじゃない。ここで働く誰よりも悪い環境に身を置きたいからなんです。社員が苦痛を感じているのなら、その何倍もの苦痛を感じたいのです」(『クーリエ』2018.7.31)

     それはマスク氏自身「片足を地獄につっこんだまま」と表現するほどの厳しい戦いでしたが、7月1日に週5000台の目標を達成。そこからテスラの本当の成長が始まっています。そして2020年9月には「3年以内には2.5万ドルのEVを実現できる。それも完全自動運転機能付きで、だ」(『週刊東洋経済』2020.10.10)と新たな目標をマスク氏は口にしています。それはこれまではニッチなプレミアム市場で戦っていたテスラが、本格的に自動車業界のボリュームゾーンで勝負をすることを意味しています。

     日本のトヨタも2025年までには販売する車の半分を電動車とすることを宣言していますが、今後は電動車市場においてテスラとトヨタ、さらには米欧の自動車メーカーが正面からぶつかることとなるのです。

    ●マスク氏の夢

     スティーブ・ジョブズ氏もたしかにいくつもの業界で革命を起こしましたが、マスク氏が乗り込んだ業界は自動車やロケット開発、電気事業とまさに国家的な事業ばかりです。


     マスク氏の企業家としての評価は、危うさもある一方で、国家を相手にして革命を起こしたという点で「不可能を可能にしていく経営者」として常に世界の注目を集め続けています。そうした注目度の高さから時に「何気ないつぶやき」がテスラの株価を大きく下げることもありますが、もし今の勢いで会社を経営し続けることができれば、5年後の自動車市場は今とは違うものになるでしょうし、もしかしたら火星に向かってロケットが打ち上げられるかもしれません。

     マスク氏自身、こんな夢を口にしています。

    「火星で死にたい。衝突事故ではなく」(『日経ビジネス』2012.11.5)

     イノベーションの条件は「クレイジー」であることですが、まさにマスク氏はみんなが「クレイジー」という夢を実現する正真正銘のイノベーターなのです。

  • 迫る破産危機にイーロン・マスクは何をした? スペースX、テスラの逆転劇の裏側

    世界が注目する実業家、イーロン・マスク氏。前編では、生い立ちからスペースXを創業するまでの半生をたどり、マスク氏の基礎が見えてきました。十分すぎる富を得てもなお、なぜ無謀と言われた宇宙ビジネスに挑戦し、破産寸前まで追い詰められたテスラをどうやって時価総額1位まで導いたのか──。「不可能を可能にする経営者」と言われる理由に迫ります。

    ●無謀と思われた「宇宙ビジネスの価格破壊」への挑戦

     2002年、スペースXを設立したマスク氏が事業開始にあたって目指していたのは「宇宙分野のサウスウェスト航空」になることでした。同社は格安航空会社の雄として低価格、低コストを実現、企業としても優良企業として知られています。スペースXも同様に、宇宙ビジネスの「価格破壊」を実現しながら優良企業を目指そうとしました。

     長い間、宇宙ロケットの打ち上げは各国政府の手厚い支援を受けた大手企業が担い、軍需産業と同じく価格やコストよりも性能や国の威信の方が重視されています。そして、ロケットの開発にはとてつもないリスクがつきまといます。

     1957年から66年まで、米国では400基を超えるロケットが打ち上げられ、そのうちの100基以上が爆発しています。

     その事実からも分かるように、スペースXのような実績を持たない民間企業が短期間(計画では設立から15カ月で打ち上げを行う)でロケットを開発して打ち上げるだけでなく、いずれは火星に人を運ぶなど、あまりに無謀な挑戦でした。

     さらにロケット開発には莫大な資金が必要になります。当時、マスク氏はペイパルの売却によって1億ドルを超える資金を手にしていましたが、国が用意する資金とは比較になりません。

     こうした不利な条件を抱えていたにもかかわらず、設立から数年でロケットの打ち上げを相次いで成功させたばかりか、国際宇宙ステーションに物資や人を運ぶNASAとの巨額契約にこぎ着け、大手企業を押しのけて商業用の人工衛星の打ち上げも多数受注するようになったのですから、「すごい」の一言ですが、もちろんそこに至る道は平たんではありませんでした。


    ●スペースXとテスラ、どっちをとるか、それとも共倒れか

     スペースXが初めてロケットの打ち上げに挑戦した2006年3月には、発射からわずか25秒で制御不能となり地上に落下。2007年3月に2度目の挑戦をし、この時もロケットは空中分解して爆発しています。3度目の挑戦となる2008年8月は、ロケットの第一段と第二段が切り離された際に爆発事故を起こしています。


    「こんなことでへこたれるな。すぐに冷静になって、何が起きたのかを見きわめて、原因を取り除けばいい。そうすれば失望は希望と集中に変わるんだ」(『イーロン・マスク』p192)

     マスク氏はこのように語り、うちひしがれる社員を励ましましたが、実はマスク氏自身もこの時期にはどん底を迎えていました。

     マスク氏は2004年に「テスラモーターズ」に出資、電気自動車の開発に取り組んでいましたが、「ロードスター」の開発が遅々として進まず、マスク氏は資金的に苦境に立たされていました。

     テスラがロードスターの開発に要した期間は4年半、資金は1億4,000万ドルにのぼっています。その多くをマスク氏は個人資産と個人で調達する資金で支えていますが、一向に車は完成しませんでした。

     一方で、スペースXの相次ぐ失敗もあって、「スペースXを取るか、テスラを取るか、それとも共倒れか」という選択を迫られることになりました。「共倒れ」にはもちろんマスク氏も含まれていました。

     自動車開発も宇宙ロケット開発も莫大な資金を必要とします。開発に要する期間も長いうえ、当然、そこには失敗のリスクもあります。だからこそ、自動車や宇宙ロケットをつくることのできる国は限られていますし、国の支援を受けることで開発を進めている企業が少なくありません。

     マスク氏のように個人資産でこうした巨大産業に挑戦するのはたしかに無謀といえますが、それを支えるのはマスク氏の「電気自動車の未来を切り開きたい」「人類を宇宙に送り込みたい」という強い使命感です。

     だからこそマスク氏は、テスラとスペースXを救うために個人資産をつぎこみ、現金をつくるためにマクラーレンなどの資産を次々と売り払い、友人に借金までして挑戦を続けています。こう残しています。

    「最後の1ドルまで会社のために使いたい。一文無しになってジャスティン(当時の妻)の実家に間借りせざるを得なくなったら、それはそれで受け入れるさ」(『イーロン・マスク』p184)

    ●「ファルコン1」打ち上げ成功、迫るテスラの破産危機

     マスク氏の執念がようやく実る日が来ます。2008年9月、これが失敗したらすべてを失うという4度目の挑戦の日、ついに「ファルコン1」を軌道に投入することに成功しました。それは、周囲の「できるわけがない」という侮蔑を覆す快挙であり、マスク氏は「この地球上で達成できたのはわずか数カ国しかありません」と高らかに勝利宣言をしています。

     最高の瞬間でした。しかし、テスラの破産の危機も迫っていました。テスラを救うためにマスク氏が取り組んだのがNASAとの交渉でした。ちょうどNASAが宇宙ステーションへの補給契約の相手を探しており、4度目の挑戦でロケット打ち上げに成功した実績を背景にマスク氏は交渉を進め、2008年12月に16億ドルのロケット打ち上げ契約(12回分の補給契約)を獲得しています。

     この契約のおかげで倒産の危機を免れることができたテスラは、2008年に超高級スポーツカータイプの「ロードスター」をようやく完成させることができました。発売当初、大手自動車メーカーの反応は冷ややかで、「あんな車は誰でもつくれる」と無視していました。

     しかし、電気自動車にしてスポーツカーというコンセプトが響いたのか、俳優のレオナルド・ディカプリオやブラッド・ピット、ジョージ・クルーニーや、カリフォルニア州知事も務めたアーノルド・シュワルツェネッガー、グーグルのラリー・ペイジといった著名人の支持を得ることができました。

     同時にロードスターは、電気自動車に対しての一般的な「ダサい」というイメージを覆し、電気自動車でもすごい車がつくれることを証明したという点で画期的な車となりました。マスク氏の望んでいた最初の革命は起こすことができたました。次なる問題は、スペースXと同じく「より良く、より安く」を実現することでした。

     最初の打ち上げに成功して、NASAとの大型契約を締結して以降、スペースXは下請け業者に頼ることなく、すべてを米国国内で自前でロケットをつくり上げることで圧倒的な低コストを実現しています。たとえば、日本のH-IIAロケットの打ち上げコストが約100億円とすると、スペースXのファルコン9は約6,000万ドルと3~4割安くなっています。

     「宇宙ロケットのライバルで脅威を感じているのはスペースXだ」と日本の関係者が危機感をあらわにするのも当然のことです。NASAからの信頼も厚いものがあります。2014年9月、NASAはスペースシャトルの後継機として2017年に初飛行を目指す有人宇宙船の開発を、当初ボーイング一社のみと見られていた下馬評を覆して、スペースXが26億ドルで受注しています。

     当然、それまでNASAが行ってきた有人宇宙飛行の責任を民間企業に引き渡すことについては強い反対や懸念もありました。実際、スペースXはその後も幾度もの事故を経験していますが、マスク氏の「人前での失敗を恐れない」大胆さと、「大切なのは事故や故障よりも、そこからどうやって修正するか」という考え方によって最終的には「これまでに建造されたロケットの中で最も信頼性が高いものの1つ」という評価を獲得するまでになっています。

     さらに同社のロケットは、これまで一度だけの使い切りが常識だったロケットを回収・再利用が可能なものとすることで、安全性に加え低価格も実現しています。

     その結果が2020年11月、日本人宇宙飛行士の野口 聡一さんを乗せた「クルードラゴン」の打ち上げ成功であり、ISSへの到着につながっています。現在、スペースXは「自社の宇宙船で人間を軌道へ運んだ最初の、そして唯一の企業」(『ナショナルジオグラフィックニュース』2020.11.16)という評価を得ています。

  • イーロン・マスクの知られざる半生、壮大すぎる夢追い人の“基礎”はこうして作られた

    今や世界第2位の富豪まで上り詰め、一時はアマゾンのジェフ・ベゾス氏を抜いて世界一にもなったイーロン・マスク氏。CEOを務めるテスラは、ガソリン車から電気自動車へのシフトの引き金をひき、創業者でもあるスペースXは民間で初めて人類を宇宙に運んだ唯一の会社です。なぜ、マスク氏はこれほどの企業を20年足らずでつくりあげることができたのでしょうか。「世界を救う」ことを夢見た少年が、世界中からその一挙手一投足を注目される実業家になるまでを、前後編に分けてたどっていきます。前編となる今回は、マスク氏の基礎が見えてきました。

    イーロン・マスク氏の基礎はこうして作られた

    10歳でプログラミング習得、12歳で自作のゲームソフトを売る
     イーロン・マスク氏は1971年6月28日、父エロル・マスク、母メイ・ホールドマンの長男(3人兄弟)として南アフリカ共和国の首都の1つ(行政府)であり、アフリカ有数の大都市でもあるプレトリアで生まれています。

     父親のエロルは地元のエンジニアであり、何か分からないことがあるとすぐに「どうなっているの?」と尋ねるマスク氏に何でも教えてくれました。母親のメイは栄養士で、モデルもやっていたという美貌の持ち主でした。マスク氏が8歳の頃に両親は離婚、マスク氏は母親に連れられて弟や妹とともに南アフリカの都市を転々とします。

     子ども時代のマスク氏は無類の読書好きでした。1日に2冊の本を読み、ファンタジー小説やSF小説をたくさん読んだことがのちの「世界を救う」という夢につながっているかもしれないとマスク氏は話しています。

     コンピューターにも人一倍関心を持っていました。10歳でプログラミングを独学でマスターし、12歳の時には自作の対戦ゲームソフトを売り、500ドルを手にしているほどです。

    過酷な労働を経てようやく米国へ、大学院は2日で退学
     マスク氏は12歳の時、母親の元を離れて父親の元に行き、18歳の時に母親の出身地カナダに単身移住しています。米国の「やる気さえあれば何でもできる」という精神と、最新のテクノロジーへの憧れから米国への移住を試みますが、そう簡単ではありませんでした。

     隣国カナダで母親の親戚の家を転々としながらチェーンソーを使った木の伐採やボイラー室の清掃といった過酷な労働の日々を送ったのち、1989年に19歳でカナダのクイーンズ大学に入学。2年後に奨学金を得てようやく米国のペンシルベニア大学ウォートン校に進んでいます。

     同校で物理学と経済学の学士号を取得したマスク氏は1995年、応用物理学を学ぶため名門スタンフォード大学の大学院物理学課程に進みますが、「新聞などのメディア向けにウェブサイトの開発などを支援するソフトウェアを提供する」というアイデアを思いつき、わずか2日間で退学しています。こう考えていたようです。

    「大学生の時、将来人類にとって最も重要になるものは何かを考えた。答えはインターネット、持続可能エネルギー、そして複数の惑星での生活の3つだった」(『週刊東洋経済』2013.1.12)

    「Zip2」を創業、「貧しくてもハッピーであれ」
     マスク氏にはビデオゲーム開発の才能もありましたが、「心の底から好きなことではあっても、生涯の職業として人生を賭けることはできない」(『イーロン・マスク』p61)と判断。上記の3つを追いかけることを決め、すぐにできることであるインターネットを最初のビジネスとして選びます。そして弟のキンバル・マスク氏とともにオンラインコンテンツ会社「Zip2」を起業しています。

     しかし、起業はしたものの、当時のマスク氏には資金がありませんでした。アパートより安い賃貸オフィスを借りて、そこで寝泊まりをして、シャワーは近くのYМCAで浴びて、たまに行くファストフードが唯一のごちそうという貧しい生活だったといいます。ですが、マスク氏が貧しさに負けることはありませんでした。こう振り返っています。

    「貧しくてもハッピーであることは、リスクを取る際に大きな助けになります」(『日経ビジネス』2014.9.30)

     やがてITブームが到来し、マスク氏の会社も順調に成長。1999年にZip2はコンパックに3億7,00万ドルで買収され、マスク氏も2,200万ドルを手にしています。

    「Xドットコム」の立ち上げ、「ペイパル」の成功
     そのお金をもとにマスク氏は次の夢に向かいます。オンライン金融サービスと電子メール支払いサービスを行う会社「Xドットコム」の立ち上げです。

     ちょうどその頃、ピーター・ティール氏が創業したコンフィニティという会社も同様のシステム「ペイパル」を開発、オークションサイトの「イーベイ」で使われ始めていました。2002年にXドットコムとコンフィニティは合併、社名を「ペイパル」とし、最大株主のマスク氏は会長(のちにCEО)に就任しています。

     優れたサービスを生み出しながら権力闘争も多かった会社ですが、ペイパルの成功こそがマスク氏にその後の「世界を救う」ための挑戦を可能にしてくれたのです。

     2000年3月、Xドットコムとコンフィニティが合併して誕生したペイパルのCEОにはビル・ハリス氏が就任、マスク氏は会長となり、CFОにはピーター・ティール氏が就任しています。

     合併によって無益な競争から解放され、資金調達も順調に進んだこともあり、この合併は最初こそ成功したように見えました。しかし、両社の企業文化の違い、マスク氏とティール氏の考え方の違いもあり、社内での抗争は激しさを増していきます。

  • 「テスラ家電」「アップル自動車」の破壊的イノベーションに備えよ

    <テスラによるエアコン事業参入は、同社が持つ中核技術と将来的な狙いを考えれば何の不思議もない>

    コロナ危機の深刻化で各企業は業績低迷に苦しんでいるが、こうした状況にもかかわらず、水面下では想像を超えるイノベーションが進行している。気が付いたときには、多くの業界で主役が交代しているかもしれない。

    電気自動車(EV)大手のテスラは、家庭用エアコン事業への参入を検討している。正式発表はないが、イーロン・マスクCEOは「家庭用エアコン事業を2021年に始めるかもしれない」と発言しているので、何らかの準備をしているのは間違いないだろう。EVメーカーのテスラがなぜ家電に進出するのかいぶかしむ声もあるが、マスク氏の本当の狙いが分かればその意味もハッキリしてくる。

    EVの基幹部品であるバッテリーは、かつて日本メーカーの独壇場だった。だが厳しい使用環境に耐える大容量バッテリーの開発は難航し、この壁を乗り越えたのが、バッテリーについて何の技術も持たないテスラだった。同社は持ち前の高度なソフトウエア技術を駆使し、既存の電池セルを流用する形であっという間にEV用大出力バッテリーを開発してしまった。

    つまりテスラの中核技術は自動車ではなく電力を制御するソフトウエアにある。テスラは再生可能エネルギーの普及を見込み、太陽光パネルに接続できる家庭用蓄電池システムを商品化しており、日本国内でも既に販売している。

    ■アップルは自動車分野に参入か

    再生可能エネルギーが主流になれば、多くの世帯がバッテリーや発電設備を備え、相互接続されるのは確実である。広域分散電力システム(いわゆるスマートグリッド)の安全な運用のカギはソフトウエアであり、テスラはその中核技術を握っている。

    つまり、EVや家電製品、バッテリー、太陽光パネルは全て「電力」というキーワードを介して相互に結び付くことになり、テスラはこの分野での圧倒的なナンバーワンを狙っているのだ。

    当然、この動きは自動車業界のパラダイムシフトとセットになる。正式発表は行われていないが、米アップルは自動車分野への参入準備を進めており、近くEVを製品化する見通しである。

    従来品とは設計思想が根本的に違う
    中国の配車アプリ最大手「滴滴出行(ディディ)」も配車サービス専用EVを、25年までに100万台規模で普及させる計画を打ち出しており、同じく中国のネット大手の百度(バイドゥ)も自動運転システムを搭載したEVの販売に乗り出す方針を明らかにしている。

    これらIT企業が製造するEVは、従来の自動車とは設計思想が根本的に違っており、最初にITサービスがあり、クルマはその付属品という位置付けでしかない。「アップルカー」は、イヤホンやアップルウォッチと同様、iPhoneの周辺機器でしかなく、実際、製造は全て外部委託される見込みだ。

    テスラのエアコンにせよアップルカーにせよ、既存の家電メーカーや自動車メーカーが従来基準で勝負するのは危険である。スマホはパソコンなど従来型コンピューターに比べて明らかに性能が低いが、身に付けられることの価値は無限大であり、同じ基準で競争すること自体が無意味である。

    経営学的にはこうした事象を「破壊的イノベーション」と呼ぶが、場合によってはあっという間に業界の主役が入れ代わる。既存メーカーはよほど覚悟しないと、気付いたときには椅子がなくなっている可能性すらある。

  • そこで手を挙げた会社がLIXILだった。

    えっ、日本のメーカーじゃないか!

    画面の前で思わず叫んだ。番組『天才の頭の中 ビル・ゲイツを解読する リミテッドシリーズ パート1』は次のテロップで終わる。

    「2018年11月 世界屈指の製造業者リクシルが――ビルのトイレの量産を発表しました」

    2018年11月6日、LIXILはメディアや関係各社に次の見出しのプレスリリースを送っている。

    「LIXILがビル&メリンダ・ゲイツ財団とともに家庭用に世界初の『Reinvented Toilet』試験導入に向けパートナーシップを締結」

    「Reinvented Toilet」とは、再発明されたトイレという意味。ドキュメンタリー番組で見た広場に置かれた試作品は住宅のように大きい。デザインは施されていなかった。自己発電でウンチを処理し、しかも飲用水もつくるという機能は完成した。しかし、まだ製品化できる段階ではない。そこからのプロセスをLIXILが引き受けるという。実に夢のある事業だ。

    製品化への第一歩へ

    LIXILの発表文には、こう書かれていた。「株式会社LIXIL(本社:東京都千代田区、以下LIXIL)は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団(以下ゲイツ財団)と世界初の家庭向け『Reinvented Toilet』を開発し、2つ以上のマーケットへ試験導入することを視野に入れた、パートナーシップを締結しました。LIXILは技術、デザイン、商品開発における専門家チームを結成し、世界中の民間企業と協働しながら、試作品のトイレの開発をリードしていきます」

    Reinvented Toiletの一刻も早い商品化を、世界中が待ち望んでいる。その一方で、LIXILは、実はReinvented Toilet開発以前に、すでに発展途上国のためのトイレを開発するプロジェクトを行っていて、ゲイツ財団との交流もあった。

    Reinvented Toiletに取り組む前、2010年代に入り、LIXILは開発途上国向け簡易式トイレシステム、SATO(サト、SAfe TOilet)の開発にも着手していた。いかに少ない水で、いかにシンプルで、いかに衛生的で、いかに丈夫なトイレを低コストでつくるかというプロジェクトだ。

    この件について、グローバルな衛生の解決に取り組むコーポレート・レスポンシビリティ部の長島洋子さんに話を聞いた。

    「開発途上国の農村地域などで、安全で衛生的なトイレがないため屋外で排泄している人がたくさんいることはご存知でしょうか。その結果、水源が汚染され、下痢性疾患により毎日約800人の子どもが命を落としていると言われています。女子児童や女性たちは用を足しに行く途中で暴力や嫌がらせの被害にさらされているのです。適切な衛生環境のない学校では、特に生理期間中の女子生徒への影響が大きく、多くの女児が中退を余儀なくされています」

    開発途上国には、トイレ環境がないために教育を受けられなくなる子どもまでいるのだ。日本で暮らしていると考えも及ばない現実である。

    水洗トイレは、日本では当たり前になっている。しかし世界を見渡すと、下水道の整備や改修ができない地域、敷設が現実的ではない地域は多い。そこでSATO事業がスタートした。

    虫による病原菌の媒介と悪臭防ぐ

    SATOの便器は、排泄量にもよるが、約0.2~1リットルの水で洗浄できる。カウンターウエイト式、つまり、排泄物と水の重さで弁が開き、動力を使わずに閉まる方式だ。ハエをはじめとする虫による病原菌の媒介と悪臭を防ぐ。

    「ゲイツ財団ではトイレ再開発チャレンジをテーマに、さまざまなトイレプロジェクトを支援しています。簡易式トイレシステムSATOの初代モデルは、バングラデシュでの住民へのヒアリングのもとゲイツ財団の助成を受けて開発され、2013年から販売を始めました。二度目の助成ではSATOの3つの新型モデルのフィールドテストをザンビア、ケニア、ウガンダ、およびルワンダで実施しました。2016年には三度目の資金助成を受け、グローバル展開をさらに加速させています」

    ビル・ゲイツがReinvented Toiletの試作モデルを発表した2018年には、LIXILはゲイツ財団から三度の助成を受け、すでに信頼関係が構築されていた。

    現在、アフリカのタンザニア、エチオピア、ナイジェリアをはじめ、アジアのインド、ネパール、バングラデシュや、さらに中南米のペルーやハイチなど38カ国1860万人以上の人がSATOのトイレシステムを利用している。

    「最初に進出したバングラデシュでは、2019年に事業としても黒字化を達成することができました。収益を上げる持続可能な事業でありながら、社会に貢献できることを実証できたのです。ただ、国や地域によって事情はさまざまで、衛生面における意識にも違いがあります。清潔なトイレがなぜ必要なのかを理解してもらわなくてはいけません。

    そのために、多くの現地のパートナー企業や国際機関と協力して活動を進めています。地域の人たちに安全で清潔なトイレの利用を呼びかけ、衛生に関する学習プログラムの実施など、トイレの設置を増やす活動を展開しているパートナーは、ソーシャルビジネスであるSATOにとって重要な役割を担っています」

    トイレをつくるだけではなく、現地の人たちの衛生面での意識を高めるための活動が必要だというのだ。

    「ビジネス」としても成立させる必要がある

    そして、社会貢献としてだけでなく、ビジネスとしても成立させなくてはならない。そうでなければ、それぞれの国や地域では持続しない。根付かない。そのために、SATOの各国にいる約40人のスタッフは地域の人たちとのコミュニケーションをはかり、現地に根差した活動になるように働きかけている。

    「水まわりや住宅建材のメーカーであるからこそ、LIXILはその専門知識や規模を活用して、2025年までに1億人の衛生環境を改善することを目標にしています。SATOはトイレの普及活動に加えて、手洗いソリューションも始めました。2020年、新型コロナウイルスが世界中で感染拡大するなか、手洗いの重要性が再認識されています。

    しかし、トイレ同様、世界人口の40%が家庭で手洗いの設備を利用できない状況にあります。このような環境で暮らす人が、後発開発途上国では人口の75%にも上ります。水道や水や石鹸が使えていないのです。こういった地域の多くはSATOのトイレシステムが進出している地域でもあります。そこで、上下水道が十分に整備されていない地域向けに、少量の水でも使うことのできるSATO Tapという手洗い器も開発しました」

    後発開発途上国の人々を救うべくトイレの開発は、今さまざまに展開され、世界に広がっている。

  • あのビル・ゲイツが「トイレ革命」に挑戦する訳

    2億ドルを投じて新しい汚水処理装置を開発

    開発途上国では、トイレの不衛生、あるいはトイレがないことによって感染症にかかり、多くの人が命を失っている。

    そんな開発途上国の状況と本気で向き合っているアメリカの経営者がいる。ソフトウェアの世界的企業、マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツだ。彼は開発途上国の死者数を減らすために、約2億ドル(約210億円)の資金を投じて新しいタイプの汚水処理装置を開発した。

    NETFLIXで明かされた2億ドル投資

    そのプロセスは、アメリカの動画配信サービス、NETFLIXのドキュメンタリー番組『天才の頭の中 ビル・ゲイツを解読する リミテッドシリーズ パート1』で見ることができる。

    「第3世界では水で死に至る」――『ニューヨーク・タイムズ』の記者、ニコラス・クリストフが書いたこの記事がきっかけで、ビル・ゲイツはトイレの問題に本気で取り組むことになった。

    番組内の解説によると、世界には自宅にトイレを持たない人が40億人以上いる。アフリカ、南アジア、中南米には、屋外で排泄をせざるをえない地域が少なくない。

    アフリカはとくに深刻だ。下痢によって年間300万人が命を失っている。幼い子どもの状況はとくにひどく、その12%が5歳の誕生日を迎えることなく息を引き取っているという。

    理由は水と排泄物の問題だ。トイレの環境が整っていない地域では、排泄物を流す川の水がそのまま飲用水にされている。しかも、その川で子どもたちは水遊びまでしている。健康でいられるはずがない。

    汲み取り式トイレがある村でも、バキュームカーや下水処理施設はない。便器のまわりは汚れ放題。そこで排泄をする人はほとんどいない。屋外のほうがまだましなのだ。『天才の頭の中』では、屎尿で汚染された川で遊ぶ子どもたちや汚れたままの便器の様子をありのまま映している。

    「僕のいる世界では下痢で子どもを失う親など、1人たりとも会ったことがない。そこで不思議に思った。世界は大量にある資源を使って撲滅策を講じているのか?」

    パソコン寄贈だけでは効果が実感できない

    ビル・ゲイツは疑問を投げかける。社会貢献として、ビル・ゲイツはマイクロソフトを通じてアフリカに多くのパソコンを寄贈していた。しかし、その効果がなかなか実感できない。

    そんないきさつで、ビルと妻のメリンダ・ゲイツが運営する慈善基金団体、ビル&メリンダ・ゲイツ財団は約2億ドルを投じて、途上国の命を救うためのトイレと下水設備の開発を始めたのだ。

    では、アフリカに先進国と同じような下水道や下水処理施設をつくればいいのか――。

    ビル・ゲイツは思案する。それは、現実的ではない。数百億ドルものコストがかかってしまい、開発途上国には普及しない。そこで、ワシントン州セドロウーリーにあるジャニキ社のCEO(最高経営責任者)で機械工学士のピーター・ジャニキを訪ねる。

    ジャニキ社は軍事用の機密部品をつくっている会社。そこに開発途上国を救うための汚水処理装置の開発を依頼した。ピーター・ジャニキは、最初はとまどったが、ビル・ゲイツの熱意に応え、装置の開発を始める。

    「トイレに溜めた排泄物を燃料にできないか?」
    「トイレで便を燃やして自己給電できないか?」
    「トイレの機能から配管や水をなくせないのか?」

    ビル・ゲイツはピーター・ジャニキに、次々と課題を持ちかける。

    そして18カ月をかけて、水も電気も使わず、排泄物を溜めるタンクもいらない汚水処理装置「オムニプロセッサー」を開発した。

    オムニプロセッサーは次のような装置だ。

    (1)ウンチの水分は蒸気にする。固形物は燃やす
    (2)自己発電。蒸気エンジンで汚水処理装置に電力を供給する
    (3)蒸気の水は飲用にする

    排泄物が見事に飲用水に変身

    この装置の完成にビル・ゲイツは満足する。5分前にはウンチだった水をピーター・ジャニキから受け取り、ゴクゴクと飲み干してみせる。パフォーマンスだったとしても、なかなかできることではない。真剣さが伝わる。アフリカのダカールの子どもたちが、浄化装置から生まれた水をおいしそうに飲む様子も映される。

    オムニプロセッサーの完成をビル・ゲイツは中国の北京で発表するが、もう1つ重要な課題があった。コストだ。

    この装置を1台組み立てるには約5万ドル(約525万円)かかる。そんな高額では、アフリカでは普及しない。なんとしても量産体制をつくり、1台500ドル未満にしなくてはならない。それには量産でコストを下げられる製造業者を見つける必要があった。

  • 中央銀行デジタル通貨(CBDC)が、PayPayなどの民間のスマホ決済などには驚異となる理由

     中国は昨年10月にハイテク都市の深センを皮切りにデジタル人民元の大規模な実証実験をスタートさせた。デジタル人民元とは、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency、CBDC)と呼ばれるものとなり、それ自体が法定通貨となる。

     カンボジアの中央銀行は昨年10月28日に、中央銀行デジタル通貨システム「バコン」の運用を開始した。中央銀行デジタル通貨はカリブ海の島国バハマでも本格的な運用が始まった。

     日銀は現時点で中央銀行デジタル通貨を発行する計画はないとしているが、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくとしている。

     米国の次期財務長官に指名されたイエレン氏は1月19日の議会公聴会で、暗号資産(仮想通貨)に関わるマネーロンダリングやテロリストの利用等、犯罪に利用される点が課題だと指摘した。

     さらにビットコインなどの暗号資産の価格の動きからも、それが通貨として利用できるものではないことは明らかである。

     これに対し、民間のデジタル通貨の発行機運も一時高まっていたが、今年1月に発行予定となっていたはずのリブラ改めディエムは、いまだ発行されていない。

     中国は4大国有商業銀行を保護することも目的として、アリババなどのIT企業の金融事業に対して徐々に規制を強めた。

     インドはビットコインといった民間の仮想通貨を国内で禁止し、公的なデジタル通貨を創設する枠組みを提供する法律を今国会の予算会期中に導入する予定と伝えられた。

     これは既存の金融システムそのものを壊しかねないとの懸念から、既存のものを保護したいとの意向とともに、民間デジタル通貨に対するリスクも意識されたものと思われる。  この動きからみると民間デジタル通貨が波及するにはハードルが高いのではないかと思われる。

     そして、もし中銀デジタル通貨が発行される場合には、中央銀行は金融仲介機能の維持、信用創造機能への影響、既存業態のビジネスモデルへの影響、などを注視する必要があると指摘されている。

     金融仲介機能の維持、信用創造機能への影響は既存の金融システムを保護する必要からとみられるが、注意すべきは既存業態、例えば資金決済業のビジネスモデルへの影響である。

     つまり、中銀デジタル通貨が普及するとPayPayなどの資金決済業に大きな影響を与えかねない。中銀デジタル通貨には手数料は発生しないが、資金決済業には手数料が発生する。また信用度も違うため、影響は免れない点も意識しておく必要があろう。

  • [23日 ロイター] - 新型コロナウイルスワクチンに関する有望な臨床試験(治験)結果の報告が相次ぐ中、米保健当局は12月半ばのワクチン接種開始に向け準備を進めている。

    米政府の新型コロナワクチン開発促進策「ワープ・スピード作戦」を指揮するモンセフ・スラウイ氏は、米製薬大手ファイザーと独ビオンテックが共同開発するワクチンの緊急使用許可が12月11日にも承認される可能性があると指摘。

    「承認から24時間以内に各州が必要と申請した場所にワクチンが輸送される」とし、「承認から2日後には各地でワクチン接種が可能になると予想している」と述べた。

    ファイザーは18日、ワクチンの95%の予防効果が確認され、重篤な副作用も見られなかったとする最終結果を発表。20日に緊急使用許可を米食品医薬品局(FDA)に申請した。

    このほか米モデルナが16日にコロナワクチンの94.5%の効果が確認されたとする暫定結果を発表。英製薬大手アストラゼネカは23日、英オックスフォード大学と共同開発するワクチンについて深刻な副作用を起こさず感染を予防できる有効率が約90%だと明らかにした。

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