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不況下の株高」の予兆 悲観の揺り戻し、16年と類似
証券部次長 川崎健 2019/1/22 19:16

重要なのはこのとき相場は景気と企業業績の減速をどの程度織り込んだのか、だ。その織り込み具合とこれから出てくる実際の数字のズレこそが今後の相場展開を決めるからだ。

ヒントになるのが、上場企業の自己資本利益率(ROE)とPBRの動きだ。「PBR=PER×ROE」という恒等式が成り立つのでPER(株価収益率)が一定ならROEとPBRは連動する。だがグラフを重ね合わせると、ROEよりもPBRが落ち込む形で昨年秋から両者がかい離したことが分かる。これは景気悪化懸念から投資家の今後の利益成長への期待値(予想PER)が落ちたためと説明できる。

一方、企業のROEが投資家が求める最低リターン(株主資本コスト)である8%を満たせば、PBRがおおむね1倍と評価される経験則も知られている。

東証1部の12カ月予想PBRは約1倍だ。つまり現時点では9.2%のROE(12カ月先予想)が、来期にかけて8%まで低下するシナリオを株価は織り込んだことになる。

JPモルガン証券の阪上亮太氏は「来期の上場企業の1株利益(EPS)が15%程度下落しない限り、ROEは8%を割れない」と試算する。つまり、来期の15%減益が株安で織り込んだ企業業績の下振れ幅だ。

だが、今のところ来期の上場企業の2ケタ減益を具体的に予想している証券会社は皆無。野村、大和、SMBC日興の3社が昨年12月上旬に出した予想は、経常利益ベースで18年度が約9%増、19年度がおよそ8~9%増。年明けに予想を下方修正したゴールドマン・サックス証券でもEPSベースで18年度は3.1%増、19年度は5.2%増でなお来期は増益予想だ。

今後、これから本格化する7~12月期決算発表を経てこれが下方修正されるとしても、2ケタ減益に至らなければ悲観の修正から株価は上がる可能性がある。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の古川真氏は「相当の業績悪化をすでに織り込んでしまったため、これからは企業の業績下方修正が相次ぐ中でも株価が上がる不思議な現象が起きやすい」と予測する。不況と呼ぶほど今の日本経済は悪化していないが、80年代までよく起きた「不況下の株高」と似た状況だ。