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想うことの掲示板

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  • 2021/04/10 18:04
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掲示板のコメントはすべて投稿者の個人的な判断を表すものであり、
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  • >>4604

    ブラパス気になってたけど買ったのかー上髭気になって手が出なかったw
    岡本硝子見てみるー

  • 毎日新聞によると、世界の主要金融機関でつくる国際金融協会(IIF)は18日、世界全体の債務残高が2020年末に過去最大の277兆ドル(約2京8800兆円)に達するとの見通しを公表した。新型コロナウイルス感染拡大を受けて各国が財政出動を拡大した結果、世界債務の国内総生産(GDP)比は365%と19年末の320%から急拡大する見通し。

    IIFによると、20年7〜9月期の世界全体の債務残高は272兆ドルと前年同期から8%増加した。このうち先進国は8%増の196兆ドルで、GDP比は432%超と19年末から50ポイント超拡大した。

  • ドル円は3連休を控えて実需買いが強く早朝の安値103.74円から仲値まで103.89円付近まで上昇し、仲値決定直後は緩む場面もあったが、実需買いが続き一時103.91円まで上昇した。その後は上値が抑制されて103.85円付近で膠着後に103.75円付近で小康状態。本日は主な米経済指標の発表は予定されず、本邦3連休や欧米市場で特に来週の26日感謝祭を控えて、ヘッジファンド勢は新たな仕掛けは行い難く、週末のポジション調整に終始しそうだ。本邦実需も連休に下は103.50円、上は104.50円にリーブオーダーが観測されている。特に週末のポジションは持たないで様子見としたい。引き続き新型コロナワクチン関連・追加経済政策の行方などを留意。テクニカル的にドル円の下値の目途は11月18日の安値103.65円や11月5日安値の103.44円とし、上値の目途は19日高値104.22円や一目均衡表の基準線104.47円を意識し、株価と米長期金利をにらむ展開となろう。

  •  ダウ平均が初の3万ドル台に乗せたことで日経平均株価も堅調推移となったが、東京都が飲食店などに時短営業を要請する方針と伝わると、株価は上げ幅を縮小した。もっとも、ドル円は104.43-60円の狭いレンジ内推移に終始している。本日は10月米耐久財受注額や7−9月期米国内総生産(GDP)改定値、米新規失業保険申請件数、10月米新築住宅販売件数、11月米消費者態度指数(ミシガン大調べ、確報値)など重要指標の発表が続く。結果を受けてリスクセンチメントがさらに改善するか注目される。ドル円は月末が近いこともあり、無理にはポジションは取らず様子見としたい。テクニカル的な下値の目処は昨日安値104.15円や節目の104.00円など。上値は昨日高値104.76円や節目の105.00円などが意識される。

  •  今後の作戦としては、やはりクロス円でのロングポジションを中心にしておきたいところだ。ドル円は、動きが鈍くなってしまっており、なかなかやりにくい状態。しかし、全体が円安傾向のとき、ドル円が下落していくという展開は考えづらいので、これも基本的には押し目買いをねらっていくのがいいと思う。103円台があれば買っておけばいいのではないだろうか。ユーロドルは1.19ドル台が非常に重要なポイント。ここを上に抜けて1.20ドル台に乗ると更なる上昇の可能性がチャート上では出てくる。1.19ドル台で失速するとまたレンジの中に戻っていくと思う。よく見極めてからトレードに入ったほうがいいだろう。ポンドはEUとの交渉の行方がよく見えないので様子見。

  •  26日のニューヨーク外国為替市場でポンドは、ジョンソン英首相報道官発言「対面交渉を希望しているもののEU次第」や英大衆紙デイリーエクスプレス報道「交渉は完全に行き詰っている」などで下落、ポンドドルは1.3322ドル、ポンド円は138.93円まで下落した。
     ドル円は、米国市場が感謝祭の祝日で休場となり取引材料に乏しい中、104.22円までじり安に推移した。ユーロドルは、欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨(10月28−29日分)で「新型コロナウイルス感染拡大による景気回復の遅れや低インフレ長期化への懸念」が表明され、「必要なら追加緩和を実施する」との見解が示されたことで1.1885ドルまで軟調推移。

     本日の東京外国為替市場のドル円は、ニューヨーク市場が感謝祭翌日のブラック・フライデーで短縮取引のため閑散取引が予想されるものの、世界的な新型コロナウイルス感染第3波を受けて上値は限定的だと思われる。

     ドル円のオーダー状況は、上値には、104.50-70円に断続的にドル売りオーダー、104.80円にドル売りオーダー、超えるとストップロス買い、104.90-105.00円にもドル売りオーダーが控えている。下値には、104.10-20円に断続的にドル買いオーダー、割り込むとストップロス売り、104.00円にドル買いオーダーが控えている。
     ドル円のテクニカル分析では、攻防の分岐点である一目・基準線104.43円(過去26日間の高値・安値の中心値)と一目・転換線104.21円(過去9日間の高値・安値の中心値)の間で推移しており、放れに就くスタンスで臨むことになる。

     ユーロドルは、欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨(10月28−29日分)で12月10日の理事会での追加緩和措置が示唆され、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の拡大と延長、市中銀行へのさらなる長期資金提供への期待感が高まったことで伸び悩む展開となっている。
     ポンドドルは、本日、バルニエEU離脱首席交渉官が、EU加盟27カ国の外交当局者に交渉に関する最新情報を伝え、沿岸諸国の漁業担当相にも説明を行う模様で、英国との交渉が前進するとの期待感が高まり底堅い展開となっている。

  • 27日の海外市場でドル円は、アジア時間に一時103.91円まで売られた反動でショートカバーが先行し、一時104.21円付近まで値を戻す場面もあったが、上値は重かった。
     ポンドは英国と欧州連合(EU)の自由貿易協定(FTA)交渉で妥協点が見いだせずにいることで全面安。ポンドドルは一時1.3289ドル、ユーロポンドは0.9000ポンド、ポンド円は138.29円までポンド安に振れた。

     本日のドル円は104円を挟んだレンジ取引となるか。米国では感謝祭が終わったことで、ここから注目されるのが感謝祭期間でのウイルス感染拡大と、感謝祭後の米国のセール状況になる。
     感謝祭中は米国疾病予防管理センター(CDC)がウイルスの感染を懸念し、旅行を控えることを推奨したにもかかわらず、国民の移動を遮るにも限界があったため、今後はウイルスの感染拡大が予想されている。ワクチンの開発が進んではいるが、この週末も感染者数・入院患者数・死者数の増加は留まるところがない。11月の選挙で当選したフロリダ州の下院議員も感染が確認されるなど、ウイルスの感染状況に目を配る必要がありそうだ。
     ただし、ここ最近はウイルスの悪影響よりも、今後の経済回復に市場は目を向けている。感謝祭直後のブラックフライデーはウイルスの影響もあり多くは期待できない。英FT紙は「今年のブラック・フライ−デーにショッピングセンターに訪れたのは例年の約半分」と報じている。その一方で、前倒しで始まったサイバーマンデーはこれまでで最高の売り上げを記録し、1日の売上高は昨年の94億ドルを超えて100億ドル以上に達すると試算されている。売上高などの詳細が今後正確に発表され、市場予想を上回る場合はここ最近のリスクオン相場に拍車がかかりそうだ。
     
     上記のように米国の感謝祭後の相場は好悪両材料あるが、好材料のほうに反応する傾向が強い。懸念材料としては中東情勢だ。先週27日にイランの核開発を主導してきた核科学者が暗殺された。この件でイラン政府はイスラエルの関与を指摘している。イランとイスラエル間の緊張だけでこの事件が収まることは考えにくく、中東諸国とイスラエルとの国交を結ぶことの仲介をしてきたトランプ米政権も巻き込まれることは確実だろう。イランがイスラエルだけでなく米国に対しても矛先を向けた場合は、兼ねてからイランに対して圧力を高めていたトランプ大統領が、噂をされていた武力行使まで決行するリスクには警戒したい。

     ドル円以外では、今週もポンドを中心に欧州通貨の動きも要警戒となる。遅々として進まず時間切れの可能性もある英・欧州連合(EU)間の離脱後に備えた交渉は、英紙の多くが「最後の週」と報じていることで、本日も様々なニュースや発言で振り回されることになりそうだ。週末にも各紙が交渉について記載している。インディペンデンス紙は「(政府関係者の話では)EU側が英国水域での漁業権の譲歩が非常に少なく、承服できるような提案ではない」としながらも、「交渉の合意か決裂に関わらず漁業権の影響で英国の港湾はカオスを生むだろうが、決裂した場合は英国経済には大きな痛手」とし、最終交渉の継続性の重要性を説いている。また、タイムズ紙は「フォンデアライエン欧州委員長が合意に向けてバルニエ英EU離脱・欧州委員会首席交渉官に圧力をかけている」と記し、48時間以内にジョンソン英首相が欧州委員長とマクロン仏大統領との話し合いが行われるとも報じている。
     なお、本日発表される経済指標では本邦からは10月鉱工業生産速報など複数発表されるが、本邦の指標で為替市場が反応するのは難しいだろう。海外からは10時に発表予定の中国の11月製造業購買担当者景気指数(PMI)、16時発表予定で、いずれもトルコのからの10月貿易収支や7−9月期トルコ国内総生産(GDP)が東京時間での注目指標となりそうだ。

  • 今週の為替相場は根強いドル安圧力と、クロス円(対ドル以外)取引での円高圧力緩和の綱引きが想定される。

    今週の為替相場で注目されるのは、米バイデン新政権による政権移行準備の進展と経済チーム人事、コロナ対策を含めた今後の経済対策などが焦点となる。
    12月1日にはムニューシン米財務長官とパウエルFRB議長がコロナ救済法案に関連して議会公聴会で証言を行うほか、今週はFRB幹部による講演も相次ぐことで、今後のFRBの金融政策も注目されそうだ。

    前週までにはバイデン政権での財政出動強化観測が、米国の財政赤字拡大懸念などでドル安材料となってきた。新政権での財務長官にはイエレン前FRB副議長が有力となり、FRBとの協調強化期待が高まっている。先行き財政出動と国債増発に伴う米長期債金利の上昇(債券価格は下落)に対しては、FRBが緩和の強化や長期化で金利上昇を抑え込むという見方が拡大。ドル安の要因となっている。

    FRBに関しては11月25日に公表された11月4−5日開催のFOMC議事録で、資産購入(量的緩和、QE)のペースや構成を経済状況に関連付けるフォワード・ガイダンスに移行すべきとの見解が示された。さらには、期間や年限などを含む新たなガイダンスを近く示す可能性があることも判明している。早ければ12月15−16日のFOMCから協議される可能性があり、緩和スタンスの増強・長期化思惑もドル売りの材料となっている。

    同時進行で米国では、コロナワクチンの開発期待が高まってきた。米国株などの世界株高を支援していることで、安全逃避通貨であるドルは戻り売りの圧力が根強い。しかも来年にかけての米国ではワクチン開発でも「雇用の完全回復」に向けて、財政出動と金融緩和の継続が想定されている。FRB緩和などによる米国内での過剰流動性マネーが、リスクテイク機運の中で世界に分散投資される余地が残されている(米国からの資金溢出)。米トランプ政権の終焉見込みによる米国第一主義の修正や、貿易関税戦争の緩和も、ドルの国際分散回流を促す。これまたドル安材料となるものだ。

    今週以降はこうした材料が根強く着目される形で、全般的なドルの上限切り下がりや下値余地模索の「持続性」を見極める展開が続く。

  • 今週の為替相場は根強いドル安圧力と、クロス円(対ドル以外)取引での円高圧力緩和の綱引きが想定される。

    前週までにはバイデン政権での財政出動強化観測が、米国の財政赤字拡大懸念などでドル安材料となってきた。新政権での財務長官にはイエレン前FRB副議長が有力となり、FRBとの協調強化期待が高まっている。先行き財政出動と国債増発に伴う米長期債金利の上昇(債券価格は下落)に対しては、FRBが緩和の強化や長期化で金利上昇を抑え込むという見方が拡大。ドル安の要因となっている。

    FRBに関しては11月25日に公表された11月4−5日開催のFOMC議事録で、資産購入(量的緩和、QE)のペースや構成を経済状況に関連付けるフォワード・ガイダンスに移行すべきとの見解が示された。さらには、期間や年限などを含む新たなガイダンスを近く示す可能性があることも判明している。早ければ12月15−16日のFOMCから協議される可能性があり、緩和スタンスの増強・長期化思惑もドル売りの材料となっている。

    一方でFRBによる資産購入ガイダンス強化などについては、「あくまで緩和長期化の姿勢を示すポーズに過ぎず、実際の緩和強化はワクチン開発にらみの様子見」という見方も少なくない。
    12月15−16日FOMCは、現状維持に肩透かしに終わる可能性もある。その意味で12月FOMCにかけては、短期調整的な「米国株の高値圏での一旦の利食い売り」と「ドルの安値圏で一旦の買い戻し」のタイミング見定めも注目されそうだ。

    米国の新政権では財務長官にイエレン前FRB議長が就任の見通しとなっており、古巣のFRBとの関係強化期待が高まっている。しかし、イエレン財務長官となっても、「FRBによるイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)やマイナス金利などの追加緩和強化は非現実的」(米国系金融機関幹部)との見方も少なくない。米国では金融業界(ウォール街)による政治的な影響力が絶大であり、「金融業界に死活問題となる金利の消失や、長短金利差の利ざや消失には、政治力などを駆使して断固反対する」(同)可能性があるという。

    こうした米金融業界の政治力を踏まえると、来年にかけては改めて「世界的な金利消失の中での米国の一定金利残存と延命」が着目される展開もあり得る。現状から来年にかけてのドル安局面は、長期スパンでドルの買い場となる可能性も無視できない。

  •  ユーロドルの上昇が1.22ドル台を前にして一旦ストップしている。オシレーター系のチャートは軒並み、ユーロドルの買われ過ぎを示している。こちらは膠着状態に入ってきた可能性が高いと考えている。また、コロナワクチンの接種がイギリスでスタートし、アメリカでも年内に始まる予定。こうした流れは世界経済にとっては非常にいい話だ。特に人や物の動きが活発化してくるので、資源やエネルギー関係は当然活況となってくると考えられる。となると、資源国通貨には当然上昇期待が高まってくる。一番分かりやすい通貨は豪ドルだろう。豪ドルは、足元でも上昇傾向にあるが、これはまだ、続くとみている。世界経済の正常化は、新興国にとっても非常に明るいニュースであるので、メキシコペソなどの通貨の上昇も今後ますます期待できるのではないかと考えている。

  • 無条件ベーシックインカム:それは社会の革新なのか幻想なのか?

    ──ドイツでは15年ほど前から、無条件ベーシックインカムが何度も議論されてきた......
    コロナ危機で、多くの人々が経済的困難に陥っている......

    ■ ドイツでの議論

    ドイツでは今、無条件ベーシックインカム(Unconditional Basic Income =UBI)をめぐって、賛否両論の議論が繰り広げられている。進行中のコロナ危機により、多くの人々が経済的困難に陥り、生計のために戦っている時に、人々はUBIを鮮明に意識するようになっている。毎月の基本所得は、人々に基本的な安全を提供し、存在への恐れを軽減することができるからだ。

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    ドイツでは、ハルツ改革と呼ぶ社会保障制度の抜本的な修正の必要性が議論され、パンデミックは、私たちに多くの政策を見直す機会を与えている。東西ドイツ統一後の労働市場政策では、労働者を守ることに主眼が置かれ、解雇や有期雇用契約に対する厳しい制限、失業者に対する手厚い保障などが実施されてきた。

    ■ ハルツ改革の課題

    2002年8月、ハルツ委員会の改革案が当時のシュレーダー政権に提出され、高失業率と硬直した労働市場システムの修正を求めた。この改革は、失業保険からの給付金だけで生活し、再就職しない失業者を減らし、失業率を下げるという目的があった。つまり手厚い給付金で生活できてしまうことで、労働意欲が低下するという問題である。

    UBIが議論されるときに必ず参照されるハルツ改革は、職業紹介所などの組織の再編、派遣労働に関する規制緩和など、特に失業保険と生活保護の融合を行なった。一方、ハルツ改革をめぐっては、「社会の二極化」を懸念する批判もあった。現在、UBIをめぐる反対派の議論の中心でもある「人々は基本所得があれば、わざわざ仕事をしない」という論点は、このハルツ改革のトラウマに起因している部分も多い。

    UBIを支持するドイツ国民が急増するなか、その賛成論の多くが、根本的な阻害要因を直視していないと指摘する批判も根強い。善意がうまく行くとは限らないからだ。

    ■ UBIの推進動向

    昨年、ドイツにおけるUBIの実証実験のために、200万人の実験参加者を募ることに成功した民間事業「マイ・ベーシックインカム(Mein Grundeinkommen)」の目的は、UBIの主題に関して十分に根拠のある結果を取得し、白熱する議論を検証するためである。ドイツ経済研究所 (DIW)が主導するこの実験では、200万人のうち、最終的には1,500人の研究参加者が多段階のプロセスで無作為に選ばれ、そのうち122人が今年6月から3年間、毎月1,200ユーロ(約15万5千円)を受け取ることになる。

    ベルリンの政治団体である「遠征ベーシックインカム(Expedition Grundeinkommen)」は、UBIの実現に向けた国民投票を呼びかけており、2023年から独自の公的資金によるモデル実験を開始しようとしている。

    そこに今、EU加盟国の活動家、組織、ネットワークからなる「EU全体の無条件ベーシックインカムに関する欧州市民イニシアチブ」が動きはじめており、EU加盟各国で100万人の賛同署名を集めることを目標に、欧州委員会への働きかけを開始している。

    ■ UBI賛成論の背景

    UBIは、労働市場だけでなく、私たちの日常生活のほぼすべてに影響を与える。UBIを用いたこれまでの小規模なモデル実験では、人々の生活満足度や健康状態も、経済的安全性によって改善されることが示されている。また、社会の結束力が変化し、民主主義がより多くの参加と共有を通じて強化され、家族や女性がより安定を得られるようになり、環境に対する人々の行動も変化することが示されている。

    ドイツでは15年ほど前から、無条件ベーシックインカムの社会政治的ユートピアが何度も議論されてきた。基本的な考え方はほとんど変わっていない。国のすべての国民は、その見返りに何かを提供することなく、基本的なニーズを調達する毎月のお金を受け取る。

    賛成派は、ベーシックインカムを、貧困からの脱出、官僚主義や国家の強制から解放され、芸術やその他の価値ある仕事を支援するための手段、人生で何かを創造したいという人間の願望への貢献、あるいは相互信頼によって特徴づけられる社会への自主参加のいずれかと見ている。

    ■ ロボット化する人間

    ベーシックインカムはまた、急速に進むデジタル化や自動化のために自分の仕事を失うことへの人々の不安を軽減する可能性がある。今年2月に発表された「COVID-19後の労働力」というマッキンゼーのレポートは、今後10年で、4,500万人の米国の労働者がロボットやAIによる「自動化」によって失職すると予測しており、パンデミックの前に予測されていた3,700万人を大きく上回っている。

    同時に仕事の総数は増加し、そのほとんどは自動化を補強し、補完する「人間がロボット化」する仕事だと指摘した。コロナ禍の影響もあり、米国で激増した仕事は、eコマースの倉庫要員だった。また、総雇用数は増加するものの、「今後10年間のほぼすべての純雇用の伸びは、高賃金の職業になる」と報告書は予測している。

    これは、時代が求めるデジタル技術などのスキルを持たない低賃金労働者にとっては朗報ではない。ますます社会の二極化が進むなか、コロナ危機の際には、多くの自営業者や被雇用者が収入源を断たれたため、UBIの考えは再び追い風となっている。

    ■ UBIを阻むものは何か?

    基本的な考え方がはっきりしていても、設計の仕方は千差万別だ。ポジティブな観念的な見通しだけでは、ドイツ政府を本気にさせるUBIの実現は簡単ではない。

    月の基本所得はいくらが妥当か?それは既存の社会的収入の全部または一部を置き換えるべきなのか?それにはどのような税制が伴うのか? 特に、基礎所得が本当に無条件に支払われ、それ以上の所得がなくても最低限の社会的・文化的生活水準を満たす水準にあるのかどうかについては、次のふたつの基本的な問いを明確にする必要がある。

    ・無条件のベーシックインカムは、その設計によっては労働意欲を著しく阻害する可能性があり、熟練労働者の不足と潜在的な労働力の減少が予想される時代に、どのように適合するのか。

    ・ベーシックインカムの結果として生じる政府支出の大幅な増加は、どのように財源化されるべきなのか。

    最初の質問は、ハルツ改革の課題となった市場経済の中心的な役割を果たしているインセンティブの問題である。UBIによって、従来の税金、社会保障、労働市場や経済全体への影響は多大である。たとえば、UBIは低所得者層の賃金構造を大きく変えると考えられる。低所得者のためのより高い賃金は確かに望ましいが、従業員の交渉力が強化され、不快でストレスの多い仕事や退屈な仕事には、大幅に高い賃金が要求される可能性がある。

    UBIの結果、企業にとってはコストが上昇し、消費者にとっては物価が上昇することになりかねない。旧来の賃金体系が続く海外に、企業が移転する可能性もある。今より高い賃金を支払う準備ができていない場合、いくつかの仕事は放置される可能性もある。これは家事関連のサービス業にも影響を与え、分業を前提とした経済もダメージを受けるというのがUBI懐疑論の主張である。

    ■ 仕事のインセンティブとは何か?

    UBIは増税で賄われることになる。これは主に、すでに高い税金を払っている人たちの労働意欲を混乱させるかもしれない。税負担の増加によって、企業や高所得者層が海外に移転したりすれば、非公式経済で働くインセンティブを強化することにもつながる。これらはすべて、ベーシックインカムの財源となる税基盤を侵食する可能性である。

    UBIを支持する人々は、インセンティブの役割に疑問を抱いている。生活が保障されているからこそ、人々皆、本当の仕事を見つけ、「創造的に働く」という議論である。確かに、労働者の内発的動機づけは重要であり、労働努力は金銭的なインセンティブのみによって動かされるものではない。

    明確な労働倫理があれば、個人が金銭的に利益を得られなくてもボランティアとして働くことを選択するように、少なくともしばらくはインセンティブを除外することができる。しかし、金銭的なインセンティブは労働時間と余暇の決定において中心的な役割を果たすことは事実である。

    加えて、次のことを考慮しなければならない。人々の労働精神には、すべての人が自らの生活に責任を負うという通念がある。これはおそらく、人々が最初から持っている倫理観である。しかし、もし誰もが自分の努力なしに、いくらかの快適さで人生を乗り切ることができるという確信を持って成長したらどうだろうか?UBIは仕事と人生の意味についての議論にたどり着く。

  • ■ UBI実証実験の課題

    すでに他国のパイロット・プロジェクトでもそうであったように、実験結果の意味合いは限定的になる可能性が高く、実験の成果に最初から疑問を持つ批判も多い。その最大の理由は、実証実験プロジェクトの期間が限られているため、参加者には従来の仕事を続ける意欲が最初からあることである。

    3年後には、自分たちの仕事だけで生計を立てる必要がある。したがって、参加者はプロジェクトの実施段階で既存の収入源を維持することに関心を持つ。創造的な仕事を選択し、社会貢献をめざす人が増えるというUBIの効果は、3年間の期限付きでは実証することは難しい。人々が基礎所得を得ているにもかかわらず従来からの仕事を続ける理由は、いずれ3年後には給付されなくなるUBIの期限を反映した対応である。

    第二の資金調達の問題では、UBIを提唱する人たちによって、費用は小規模なものに限定されている。しかし、UBIが少なくとも社会的・文化的な生存水準をカバーするのであれば、その費用は実際には膨大なものとなる。今ある年金や児童手当、失業保険の受給権などがUBIによって消滅し、今日のすべての社会保障を現状のUBIだけで実現することは困難であるため、実際の社会支出は大幅に増加するだろう。

    そして、最大の問題が残っている。ドイツが一方的にベーシックインカムを導入すれば、それが引き金となる国際移住についての問題である。もし一国だけでUBIを導入するとしたら、移住者にとっての影響は非常に大きく、国境を厳格に守らなければならないという議論を呼ぶ。同時に、企業は生産拠点を海外に移せば、国は税収基盤を失うことになる。そのため、UBIが国際的に調整され、多くの国で同時に導入されない限り、この制度は急速に瓦解する可能性がある。

    UBIの重要な主題は、税金、資金調達、金額、実施モデルではなく、すべての人が生涯にわたって無条件に保護されることである。一つはっきりしているのは、UBIは、誰もが自分のお金を増やすためのものではなく、誰もがより安全になるということなのだ。

    無条件の基礎所得という考えは確かに良い考えだ。しかし、善意から好結果への道のりは長く険しいことが多い。限られた時間での実験では、UBIの好結果を確実に把握することは困難だろう。UBIを幻想に終わらせないためには、その可能性と課題をめぐる議論に抜本的な視点の変化が必要なのである。

  • バフェットは本当に過去の人? 大暴落を予見していた人たちの共通点

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    株価が不安定だ。日経平均株価は大台の3万円回復を31年ぶりに成し遂げた後、一気に下落した。コロナ禍で経済環境は目まぐるしく変動し、株式市場にとって好材料ばかりがあるわけではない。しかし、株は上がれば下がるとアタマでわかっていても、強気相場で他人が株で儲かっているのを指をくわえて静観などしていられず、大金を投じる人も多いのではないだろうか。こういうときにどう行動すればいいのか、心理学・脳科学面から冷静に考えてみよう。スーザン・ケインの『内向型人間が無理せず幸せになる唯一の方法』から、ハイリスク投資の心得を2回にわたってお送りしてきた。今回が最終回だ。
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     経済危機の話となると、それを予見していた人々の話がつきものだ。そして、そういう話の主人公はFUD(恐れ(fear)、不確実(uncertainty)、疑い(doubt))を心に抱いているような性格である場合が多い。彼らは、自分のオフィスのブラインドをおろし、世間の多数意見や仲間からのプレッシャーとは距離を置いて、孤独に仕事に集中するようなタイプだ。

     二〇〇八年の大暴落の当時、利益をあげた数少ない投資家のひとりは、〈ボウポスト・グループ〉と呼ばれるヘッジファンドのマネジャーであるセス・クラーマンだ。クラーマンは着実にリスクを避けながら成果をあげる手腕で知られ、自分の資産のかなりの部分をキャッシュで保有していることでも有名だ。二〇〇八年の大暴落から二年間、多くの投資家が群れをなしてヘッジファンドから撤退するなか、クラーマンはボウポスト・グループの資産をほぼ二倍の二二〇億ドルにまで増やした。

     クラーマンはその偉業を、明確にFUDにもとづいた投資戦略でなし遂げた。「ボウポストでは、恐れが大人気で、投資について言えば、あとで残念がるよりも今怖がるほうがずっといい」と、彼はかつて投資家への手紙に書いた。

     二〇〇八年の大暴落へと続く数年間、クラーマンは「慎重さを固持した数少ないうちのひとりで、その発言はちょっとどうかしているのではないかと受けとられていた」とカリーは言う。「みんながお祭り騒ぎをしているときに、彼はきっと地球最後の日に備えてツナの缶詰を地下に備蓄していたのだろう。そして、誰もがパニックに陥ったとき、彼は買いに回った。それは分析の結果じゃない。そういう性分なんだ。たぶん、彼はセールスマネジャーになっても成功しなかっただろう。だが、今の時代の偉大な投資家のひとりだ」

     同じように、マイケル・ルイスは二〇〇八年の大暴落への道筋を描いた『世紀の空売り』(東江一紀訳)のなかで、世間が好況に酔っていた二〇〇〇年代半ばに破滅がやってくることを見通していた数人の人物を描いた。そのひとりはヘッジファンド・マネジャーのマイケル・バーリ。バーリは大暴落までの数年間、カリフォルニア州サンノゼのオフィスにこもって財務諸表を綿密に検討した末に、世間の人々とは反対の見解に達した。そして、FUDにもとづいた投資戦略をとった。人づきあいが苦手な投資家ペアの、チャーリー・レドリーとジェイミー・マイ。彼らの投資戦略もFUDだった。

    投資で成功するのに必要な唯一のこと

     もうひとつの例は、二〇〇〇年のITバブルの崩壊を背景にしている。登場人物はネブラスカ州オマハ出身で、内向型を自認し、気が向けば何時間もひとりでオフィスにこもることで知られている。そのウォーレン・バフェットは、あきらかに知的な持続性、賢明な思慮分別、警告信号に気づいて対処する能力の持ち主であり、彼自身だけでなく投資会社〈バークシャー・ハサウェイ〉の株主たちに巨額の富をもたらした。バフェットは周囲の人々が判断力を失っているときに注意深く考えることで知られている。「投資で成功するのにIQは関係ない。普通の知性を持っているなら、必要なのは、トラブルの種になるような衝動をコントロールする気質だ」とバフェットは言う。

     一九八三年から毎夏、ブティック型投資銀行〈アレン&Co.〉はアイダホ州サンヴァレーで一週間のカンファレンスを開催する。これはただのカンファレンスではない。派手なパーティや多様なアクティビティ、そして招待客が同伴する子供たちを世話する大勢のベビーシッターまで用意された、至れり尽くせりの豪華な催しなのだ。接待側はメディア産業に顧客が多く、これまでの招待客のリストには、トム・ハンクス、キャンディス・バーゲン、ルパート・マードック、スティーブ・ジョブズといった、ハリウッドセレブや新聞業界の大物、シリコンバレーのスター、有名ジャーナリストらが名前を連ねている。

     アリス・シュローダーが書いたバフェットのすばらしい評伝『スノーボール』(伏見威蕃訳)によれば、一九九九年七月、バフェットはこのカンファレンスにいた。彼は毎年、ビジネスジェット機で家族をひきつれてここを訪れ、ゴルフコースを見渡せるコンドミニアムで他のVIP招待客とともに過ごしていた。年に一度のサンヴァレーでの休暇を楽しみ、家族一緒の時間を持ち、旧友たちと再会できることを喜んでいた。

     だが、この年、カンファレンスの雰囲気は例年とは違っていた。ちょうどテクノロジー・ブームの最盛期で、新顔の参加者が数多くいた。まさに一夜にして大金持ちになったIT企業の社長や、彼らに資金を提供するベンチャー投資家たちだ。彼らはすばらしい成功を収めていた。人物写真で知られるアニー・リーボヴィッツが『ヴァニティフェア』誌に掲載する「メディアのオールスターたち」と題した写真を撮るためにやってくると、彼らは口々に自分も被写体にしてくれとかけあった。

    「ウォーレンも老いたな」

     もちろん、バフェットはそのひとりではなかった。彼は先行き不透明な企業をめぐる投機的な熱狂に巻き込まれたりはしない、保守的な投資家だ。彼のことを過去の遺物として片づける者もいた。だが、バフェットはまだまだ強力な存在で、カンファレンスの最終日に基調講演をした。

     バフェットは数週間かけて講演内容を熟考し、入念に準備をした。演壇に立つと、まずは自分の短所に触れる話をして注目を集めてから(昔の彼は人前で話すのが苦手で、デール・カーネギーの話し方講座で学んだという)テクノロジー関連企業の勢いがもたらしている好景気がそう長くは続かない理由について、詳細な分析を披露した。データを調べ、警告信号に気づいたバフェットは、それが意味するものについてじっくり考えたのだ。彼が予測を公的に発表したのはじつに三〇年ぶりだった。

     シュローダーによれば、その講演を聴いた人々はあまり感銘を受けなかった。それどころか、バフェットの話はその場の人々の雰囲気に水をさすものだった。彼らはスタンディングオベーションで拍手を送ったものの、多くの人々が彼の考えを無視した。「ウォーレンも老いた。頭のいい男だが、今回は機会を逃したな」と彼らは陰で言い合った。

     その日の夜、カンファレンスは盛大な花火とともに閉幕した。例年どおり、大成功だった。だが、その集まりのもっとも重要な部分――ウォーレン・バフェットが発した、市場が衰退する兆しありとの警告――は翌年、まさに彼の警告どおりに、ITバブルが弾けるまであきらかにされなかった。

     バフェットは過去の実績を誇りに思っているだけでなく、つねに自分の「内なるスコアカード」にしたがっていることも誇りに思っている。彼はこの世界を、自分の本能に焦点をあてる人と、周囲に流される人とに二分している。「自分であれこれ判断するのが好きなんだ」とバフェットは投資家としての人生を語る。

     「システィーナ礼拝堂の天井画を描いているようなものだ。『なんてすばらしい絵だろう』と褒めてもらうのはうれしい。けれど、それは自分の絵なのだから、誰かに『なぜ青ではなく、もっと赤を使わないんだ? 』と言われたら、それで終わり。あくまでも自分の絵だから。彼らがなんと言おうがかまわない。絵を描くことに終わりはない。それがなによりすばらしいことのひとつだ」(古草秀子)

  • 米国はいずれ日本のようになるのか

    1990年代まで、日本は破竹の勢いだった。日本は、米国を経済面で追い抜くことをめざしていた。だが今、米国を追い上げているのは、別のアジアの経済大国である。するとこんな疑問が湧く。日本にいったい何が起きたのか? 米国の投資家は、日本の経験から何を学べるのか? サンフランシスコの投資顧問会社、デルタ・インベストメント・マネジメントの共同創業者で、マーケットに詳しいニコラス・アトケソンとアンドルー・ホートンに聞いた。

    ──1970年代から80年代にかけて、日本は世界経済をリードする存在でした。輸出大国で、最先端で高品質の製造業を誇っていました。日経平均株価は1989年末に史上最高値をつけます。その後の日本に何があったのでしょうか。

    アトケソン:日本は今も世界3位の経済大国ですが、30年たっても日経平均は当時の水準を取り戻せていません。なぜか。主に人口動態と競争が原因です。日本の人口は減っていて、高齢化も進んでいます。日本は世界有数の長寿国であると同時に、出生率は低下し、移民はほとんどいません。一方、競争面では、中国や韓国、東南アジアの大半の国々が、大規模で、日本よりもコストが安く、しかも優秀な製造業を擁するようになりました。

    ──日本も状況を改善するために手を打ったが、あまり功を奏しなかったと。

    ホートン:成長のテコ入れやデフレリスクの軽減のために、日本政府は金利を引き下げます。過去25年間、日本の10年物国債の利回りは低下しています。4年前、日本の新発10年物国債の利回りはマイナスをつけ、足元もゼロ近辺のままです。

    10年物国債の利回りは長期的な経済成長見通しの指標です。ほかの条件がすべて同じであれば、急成長している国では長期金利が低成長の国よりも高い傾向にあります。

    ──米国ではどうですか。

    アトケソン:日本と同様に、米国も長期的な経済成長率が下方シフトしており、10年物国債の利回りは数十年にわたって下落傾向にあります。ただ、日本と違って、マイナスになったことはありません。

    マクロ経済成長の観点から言うと、昨年8月に約0.5%だった10年物米国債の利回りは今週(2月下旬)、1.3%程度まで上がっており、成長見通しの改善を示しています。金利が上昇すると株価収益率(PER)に下押し圧力がかかりますが、長い目で見れば、インフレの少ない成長は経済停滞やデフレよりもずっと良いものです。

    ──投資家については。

    ホートン:成長の先行きを占う指標は株式市場です。S&P500種株価指数は今週、史上最高値を更新しています。

    ──つまり米国は比較的好調で、日本より良い状態にあると。S&P500は2008年の金融危機時の6倍近くに高騰しています。日経平均は3倍ちょっとですから、2倍の伸びということになりますね。

    アトケソン:日本と同様に、米国も高齢化やグローバルな競争の激化に直面しています。ただ、日本に比べると、米国の経済システムはオープンで、そのため人口の伸びも大きく、ダイナミックな資本市場の資金に支えられたイノベーションも活発で、また世界中から優れた人材がたくさん集まってきています。

    金利が上昇すると、PERの高い株はPERの低い循環株よりもパフォーマンスが悪くなるかもしれませんが、金利の上昇は成長見通しの向上を示しているわけですから、総じてプラスの指標と言えるでしょう。

    ──米中の競争が今後どうなるかはわかりませんが、ある程度の希望はもってよさそうですね。

  • 天才起業家か、一大疑獄事件の主犯か…ジェフ・ベゾスの上司だった“ヤバい日本人”の正体

    「日本のネット広告の父」がまとめた“奇跡の買収”…ジェフ・ベゾスとリクルート、1987年の“伝説の交渉”とは から続く

     時価総額8兆円を超える総合情報企業「リクルートホールディングス」を立ち上げた江副浩正氏。世界に通用する大企業をつくりあげた手腕には経営者としての能力に疑いの余地がない。しかし、彼の存在は、「起業の天才」ではなく「リクルート事件」の主犯者として歴史に名を刻むことになる。

     ここでは、“光”と“闇”を見た天才の生涯に迫った、ジャーナリストの大西康之氏による書籍『 起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男 』(東洋経済新報社)の序章を引用。日本が生んだ天才起業家の栄光と挫折の一端を紹介する。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

    ◆◆◆

    同じ未来を見ていたベゾスと江副

     ジェフ・ベゾスと江副浩正。1987年の秋から1988年の秋までのほんのわずかな時間、ふたりの天才の軌跡が交わった。

     江副がリクルートの前身「大学新聞広告社」を創業したのは、ベゾスが生まれる4年前の1960年(昭和35年)である。ふたりの間には親子ほどの年の差があった。ファイテルは創業まもないベンチャーでベゾスはそこの平社員。江副はそのファイテルを買収した会社のトップ。立場は天と地ほども違ったが、ふたりは間違いなく同じ未来を見ていた。もしあのとき、ふたりがコンピューター・ネットワークの未来について語り合っていたら、意気投合していたに違いない。

     ベゾスはプリンストン大学を出てからの自分のキャリア形成について、「後悔最小化のフレームワーク」という独特の思考方法を使ってこう説明している。

    「80歳になったら、自分はウォール街を去ったことを後悔するだろうか? ノー。インターネットの誕生に立ち会えなかったことを、自分は後悔するだろうか? イエス」

     ファイテルを買収したときの江副も同じである。江副は社業がコンピューター・ネットワークと融合する未来を予見していた。

     リクルートがコンピューターを導入したのは1968年。ほとんどの会社に電卓もなかった時代のことだ。企業から請け負っていた適性診断テストの採点にIBMのコンピューターを使った。コンピューター導入を決めたときの社内報で、江副は、日本経済新聞の『情報革命』という朝刊1面の特集記事を引用しながら、コンピューター・ネットワークへの熱い想いを語っている。

    〈記事はその結びで、「第一次産業革命は農業社会から工業社会への歴史を開いたが、情報革命は工業社会の次にくる知識産業社会──知識産業が主導する未来社会を形成する、いわば21世紀への階段なのだ(中略)」と新たな可能性への追求を迫っている。(中略)わが社でもテスト事業における新たな可能性を追求すべく電子計算組織の導入を決定しました。(中略)同システムのレンタル料は、既に導入済みの1230(筆者注:IBMの機種)、同追加分および付帯費用含めて月額150万円、年間1800万円になります。これはわが社の現在の資本金に近い額です。経営的にはかなり危険性の高い投資活動です。しかし導入が遅れれば、それだけ別の危険性を大きくします〉(1967年8月11日付『週刊リクルート』)

     資本金に匹敵する投資で社運をかけたコンピューターの導入から20年間、江副はずっとコンピューター・ネットワークによる「知識産業社会」の到来を待ち続けた。

     そしてついに、1984年、日本でも通信の自由化が決定する。日本の通信を独占していた日本電信電話公社(電電公社)が民営化されNTTになると同時に、民間企業に通信事業への門戸が開放された。江副は、情報通信分野に怒濤のような投資を開始する。1987年のファイテル買収はその流れの中で打った重要な布石のひとつだった。

    30年前に江副が着手していたクラウド・サービス
     断じてその場の思いつきではない。タイミングを計り、狙いすました上での買収だ。待ちに待った知識産業社会、コンピューター・ネットワークの時代がやってくる。東大、京大の理工系の学生を大量採用し、腕っこきのコンピューター・エンジニアを中途採用して、江副は新しい時代に飛び込んだ。

     1987年にファイテルを買収した江副は、ニューヨークとロンドン、そして日本の川崎に「テレポート(通信機能を備えた巨大コンピューター基地)」を作り、3つの拠点を国際回線で結んで金融機関などにサービスを提供しようとしていた。コンピューターのパワーや通信回線の速度は今とは比べ物にならないが、現在アマゾンの収益源の柱となっている「アマゾンウェブサービス(AWS)」と同じものを、30年以上も前に構想していたのだ。つまりクラウド・コンピューティングである。

     アマゾンは、世界最大のネット小売業者だが、もはやそれはアマゾンの一部でしかない。アマゾンの事業の中でもっとも高い収益を上げている(年間約130億ドル)のが、企業向けのクラウド・コンピューティングのAWSなのである。

     AWSは、各企業がコストをかけて独自のサーバーを持つという、それまでの常識を覆した。財務会計から給与計算、顧客管理からそのデータの解析まで、ありとあらゆるサービスを用意している。セキュリティも万全。なんとCIA(米中央情報局)までもが顧客になっている。しかも、江副が狙っていたとおり、地球上あらゆるところにサーバーがあるので、たとえば深夜ロンドンで使われていないサーバーを日中の東京で企業向けに稼働させれば、電力コストが下げられるうえ、使用効率が上がるのでメンテナンスにかかる人件費も相対的におさえられる。サービス価格は企業が自前のコンピューターを持つよりはるかに安い。

     アメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)、マクドナルド、あるいは動画配信で急成長しているネットフリックス、日本企業では、日立製作所、キヤノン、キリンビール、ファーストリテイリング(ユニクロ)、三菱UFJ銀行など、世界中の名立たる企業がAWSを利用している。

    「あれだよ、あれ。僕はあれがやりたかったんだ」

     もし江副浩正が生きていたら、アマゾンのAWSを見て、そう言ったことだろう。

    襲いかかった最強の捜査機関
     江副は2013年1月31日に東京駅で倒れ、人事不省のまま2月8日に息を引き取った。76歳だった。

     いや、実際にはもっと前、52歳のときに日本という国に殺されていたのかもしれない。

     日米欧を繫ぐ夢の実現に着手した矢先、思いもしない方向から飛んできた直撃弾によって、その社会的生命を撃ち抜かれたからだ。

     江副に襲いかかったのは、捜査権(被疑者を逮捕・拘束し取り調べる)と公訴権(被疑者を裁判にかける)を併せ持ちほぼ百パーセントの有罪率を誇る“最強の捜査機関”東京地検特捜部だった。通常、事件は、警察官が捜査し、容疑者の身柄や証拠類を検察に送致して(送検)、検察官が事件を起訴するか不起訴にするか決める。しかし特捜部だけは、容疑者を拘束し取り調べ、起訴できるオールマイティな捜査機関なのである。

    「賄賂」をバラ撒いた容疑で逮捕
     皮肉なことに、追及の火の手は江副が築こうとした「日米欧テレポート」のひとつ、日本の川崎から上がる。

     江副がつくろうとしたのは大型コンピューターを何十台も設置し、大容量の高速回線で結ばれた情報通信ネットワークの要となる「データセンター」。そんなものは当時の日本にはない。前例のないものを作ろうとするとさまざまな規制の壁が立ちはだかった。だが、川崎市のやり手の助役(いまの副市長職に当たる)は、川崎駅西口前の広大な工場跡地の再開発に強い意欲を持ち、江副の「テレポート構想」に理解を示した。再開発の敷地は容積率の制限で14階建てのビルしか建てられなかったが、「特定街区」に指定され、20階建てが可能になった。

     江副は、子会社のマンション・デベロッパー「リクルートコスモス」がグループ企業で初めて上場することが決定すると、この助役にコスモスの未公開株を譲渡した。譲渡といっても無料で渡したわけではなく、同じくリクルートの子会社のノンバンク「ファーストファイナンス」から資金を貸し付けて、株を買ってもらったのだ。コスモス株は上場後に値上がりし、株をすぐに売った助役は、あっというまに1億2000万円の差益を手にした。

  • >>4634

    〈「リクルート」川崎市誘致時 助役が関連株取得 公開で売却益1億円 資金も子会社の融資〉──1988年6月18日、朝日新聞の社会面トップに大見出しが躍る。

     株価や地価が急騰するバブル景気の真っ只中、ふつうの年収ではマイホームが買えなくなってしまった人々は、これを読んで怒りに震えた。その後、朝日のみならずすべてのマスコミが追及をはじめると、首相の竹下登、大蔵大臣の宮澤喜一、中曽根康弘・前首相、安倍晋太郎・自民党幹事長など政界実力者、官界では労働省(現・厚労省)、文部省(現・文科省)トップの事務次官、新聞社の社長やNTT幹部など財界の有力者に未公開株が譲渡されていたことが次々と発覚する。株を配った江副と、それを受け取った政・官・財の要人への悲憤慷慨は燎原の火のように燃え広がった。

     1988年11月に江副は、国会に証人喚問される。時代が昭和から平成になった翌89年2月13日、自分の会社の未公開株という「賄賂」をバラ撒いた容疑で東京地検特捜部に逮捕された。

     東京・銀座にふたつの自社ビルをもつ「成り上がりの起業家」江副浩正にバッシングを浴びせる人々の怒りを背に受けて、特捜部は、検事52人、事務官159人を動員して、延べ3800人を聴取、リクルートや関連会社など80ヵ所を捜索した。「戦後最大の疑獄」リクルート事件である。

     江副は、政財官の大物20人が有罪となった一大疑獄事件の「主犯」として断罪される。

    社史から消えた創業者
     こうして、戦後もっともイノベーティブだった天才起業家の業績は、見果てぬ夢とともに歴史から抹消された。

     創業者がいなくなったリクルートは、事件後も成長を持続すると、江副が亡くなった翌年の2014年10月東証一部上場を果たし、時価総額7兆8000億円の企業となった(2020年11月時点)。だが、リクルートのホームページ上の社史には、リクルート事件のことも、創業者・江副浩正の名前もない。

    「リクルート事件・江副冤罪説」を唱えるジャーナリストの田原総一朗は、当時、リクルートコスモス上場の主幹事を務めた大和証券会長の千野冝時に尋ねている。資本主義社会では株は上がりもするし下がりもする。上場前の株は「賄賂」になるのだろうか、と。千野はこう答えた。

    「企業がはじめて、店頭や東証二部などに上場するときに、つきあいのある人、知人、社会的に信用のある人々に公開前の株を持ってもらうのは、当たり前のことで、どの企業もがやっている証券業界の常識ですよ」

    世界の成長から取り残された日本経済
     ひとりの起業家を、社会全体で吊るし上げ、犯罪者の烙印を押した「リクルート事件」とは、いったい何だったのか。

     江副の「部下」だったジェフ・ベゾスは、アマゾンの株式時価総額が1兆5000億ドル(約160兆円)に迫り、1663億ドルを保有する世界一の資産家になった(『フォーブス』誌の世界長者番付)。アカデミー賞授賞式会場の客席に座ると、司会者が紹介しテレビで大写しになるほどアメリカを代表する名士でもある。

     コンピューター・ネットワークに未来を見たふたりのその後の明暗は、日本経済と米国経済の今に投影される。

     リクルート事件で江副が逮捕された1989年、日本企業はわが世の春を謳歌していた。その年の「世界の株式時価総額ランキング」を見ると、1位は民営化から5年を迎えたNTT。2位から5位までに日本興業銀行(現・みずほ銀行)、住友銀行(現・三井住友銀行)、富士銀行(現・みずほ銀行)、第一勧業銀行(同)の大銀行がずらりと並ぶ。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)が7位、東京電力が9位で、ベストテンのうち実に7社が日本企業である。その下にはトヨタ自動車、日立製作所、松下電器産業(現・パナソニック)、東芝といった製造業が名を連ね、ベスト20社のうち実に14社が日本企業だった。

     30年後の2020年10月末時点の世界ランキングで、50位以内に入っている日本企業はトヨタ自動車(49位)ただ1社。トヨタの時価総額は約24兆円で、韓国・サムスン電子(16位、約40兆円)にも遠く及ばない。ベスト10には中国のアリババ・グループ(6位)とテンセント・ホールディングス(8位)が顔を出し、トップ50には実に9社(香港のチャイナモバイルを含む)の中国企業が名を連ねている。

     リクルート事件から30年。つまり平成の30年間、日本経済は世界の成長から完全に取り残されたのである。

     一方、世界のランキングの上位はこうなっている。

    新しい企業を生まない国になってしまった日本
     1位アップル、2位はサウジアラビアの国営石油会社のサウジアラムコ、3位アマゾン・ドット・コム、4位マイクロソフト、5位がアルファベット(グーグルの持ち株会社)、6位アリババ・グループ・ホールディング(中国)、7位フェイスブック、8位テンセント・ホールディングス(中国)、9位がバークシャー・ハサウェイ、10位がウォルマート。10社中7社が、「知識産業」であるベンチャー企業だ。

     1989年の米国ランキングでトップ10に名を連ねたIBM、エクソン、ゼネラル・エレクトリック(GE)、AT&T、タバコのフィリップモリス、デュポン、ゼネラルモーターズ(GM)といった伝統企業はいずれも上位からはじき出されている。この30年で米国経済を構成する細胞はそっくり入れ替わった。

     新型コロナウイルスの感染拡大で消費や雇用が1930年代の大恐慌並みに落ち込んだ2020年の夏、知識産業を代表するGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)の株式時価総額の合計が600兆円を突破し、東証一部上場企業2170社の合計を上回った。

     日本の最強企業、トヨタ自動車を含む日本の自動車メーカー9社は時価総額の合計で米国の電気自動車(EV)ベンチャー、テスラに抜かれた。年間の販売台数で見れば900万台を超えるトヨタに対し、テスラはわずか37万台。だが株式市場は、EVと自動運転によって古い自動車産業を破壊しようとするテスラに軍配を上げた。

     日本はいつから、これほどまでに新しい企業を生まない国になってしまったのか。答えは「リクルート事件」の後からである。

     リクルート事件が戦後最大の疑獄になったことで、江副が成し遂げた「イノベーション」、つまり、知識産業会社リクルートによる既存の産業構造への創造的破壊は、江副浩正の名前とともに日本経済の歴史から抹消された。

    古い日本を脱ぎ捨てる千載一遇のチャンス
     だが日本のメディアが、いやわれわれ日本人が「大罪人」のレッテルを貼った江副浩正こそ、まだインターネットというインフラがない30年以上も前に、アマゾンのベゾスやグーグルの創業者であるラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリンと同じことをやろうとした大天才だった。その江副を、彼の「負の側面」ごと全否定したがために、日本経済は「失われた30年」の泥沼にはまり込んでしまったのである。

     新型コロナウイルスのパンデミック禍は、古い日本を脱ぎ捨てる千載一遇のチャンスでもある。しかし正しく生まれ変わるためには、どこでどう間違えたのかを、真摯に問い直さなければならないだろう。江副が遺した大いなる成功も大いなる失敗も歴史から葬り去ってはならない。なぜなら、大いなる失敗もまた、大いなる成功への始まりになることを、人類は歴史上なんども経験している。

     私(筆者)は、江副浩正の生涯をたどることで、戦後日本が生んだ稀代の起業家があのとき見ていた景色、そして「もし」この男の夢が実現していれば、どんな日本になっていたのかを考えてみたい。未完のままのイノベーションを完成させてみたい。

     コロナ禍という人類未曾有の危機にある私たちが、今からこの国で、未来を切り開き、生き抜いていくためにも。

    【前編を読む】「日本のネット広告の父」がまとめた“奇跡の買収”…ジェフ・ベゾスとリクルート、1987年の“伝説の交渉”とは

    大西 康之

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