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  • >>30

    ナトホさん

    >ところで、ラストの叫びには何かオチがあるのでしょうか?

    特にオチやダジャレはないはずですが、一応水野さんに確認してみましょう

    「え~、だって、オカ研のくせにまともな質問したと思ったら、いきなりエンディングでしょ?
     誰だって、超自然的な現象が起きたと思うじゃない。それで思わずオカルト~って
     叫んじゃったんだけど。勿論、私は超常現象なんて信じないわよ、フン」

    とのことでした。

  • >>27

    >「7つの扉」⑬ 完

    面白かったです♪
    伊丹くん、すごいなー。

    ところで、ラストの叫びには何かオチがあるのでしょうか?
    もしかして、オカルト研究会に決まったことが「オカルトォ~~!?」ということですか?

    (しょうもないことを聞いていたら、すみません。)

  • >>28

    半月さん

    相手が初心者なので一刀両断せずに抑制して頂いた事と察します。
    また、参考文献という形で教示して頂きました2作品についても
    「ずぶの素人ととは言え、小説を書こうとする者ならば、こころざしを高く持ちなさい」
    という欄外の送念(?)も有り難く受け取っておきます。

    有栖川有栖、法月綸太郎 ともに志向の到達点付近にいる作家さんです。
    新作以外は一応、全作読んでいます。パズラーとしては法月作、
    本格の読み物としては有栖川作といった感じで好んで読んでいます。
    余談ですがIMEの単語登録にも「ありあり」と「のりりん」で登録している
    唯一(唯二?)の作家名です。

    二階堂さんはちょっと小難しい印象で少し敬遠していますが
    「増加博士~」は未読のまま本棚にありますので、ネクストバッターボックスに
    立たせてみますね。

  • ・・・。

    数学がトラウマ教科な私には、この作 細部まで読む精神力がハナから欠如してんで、内容はおいといて・・


    先に、「有栖川が20の扉を素材にしたやつを…」と参考文献をあげたもんでしたが、
    こういう世界だと、
    有効な参考文献は、

    1: 法月綸太郎『しらみつぶしの時計』(同名短編集の、表題作)
    2: 二階堂さんだっけ?「増加博士」の…なんか適当な短編?

    かな。

  • >>26

    「7つの扉」⑬ 完

    沢田が一枚のカードを選び机の上に伏せて置いた。
    「では、最初の質問。行きますよ、良いですか、始めますよ」
    終始落ち着いた口調で喋っていた伊丹がだんだん早口になり慌てて話しだす。
    巧い。犀原はそう感じた。場の雰囲気が沈着冷静のままでは結果の差異が出にくい。
    声のトーンを高くしてさらにテンポアップして伊丹が最初の質問を繰り出す。

    「それは3で割ったら2余る数字ですか?」
    言い終えてすぐに顔を沢田の方に突き出し、答えを急がせる。
    ここが見極め所だ。犀原は沢田が答える刹那を凝視する。

    3の倍数なら、即答でノーだ。1余るならばホンの僅かな一瞬だけ答えが遅れてノーと言う筈だ。
    その僅かな時間差を見極めなくてはならない。イエスならば答える時間に関係なく3n+2の数字に限定される。
    これできっかり10から99の数字は3分割されて候補が絞れる。つまり32個以下の30個になるワケだ。
    説明されてやっと理解した伊丹先輩の狙いに驚いた。数理の法則を超越した実に悪魔的な発想だ。

    虚を突かれたように沢田は絶句した。それは僅か2~3秒の事だったが、その時間はイエスかノーかを考えるのに要した時間ではない。
    伊丹の狙いを理解するのに必要な2.5秒だった。
    そして質問には何も答えずにサッと伊丹に握手を求めた。

    「驚いたよ。伊丹。私の完敗だ」
    沢田と伊丹は先ほどの2名よりもずっと力強い握手を交わした。
    「さあ、みんな、勝負は見ての通り、オカ研の勝ちだ。私はオカルト研究会だけの顧問という事になる!」
    興奮した様子で宣言する沢田に部屋にいたみんなの悲鳴ともつかぬ声がこだまする。
    その中で一際高く大きな声で水野が意味にならない叫びを発する。

    「オカルトォ~~!?」

  • >>25

    「7つの扉」⑫

    予想を遥かに超えるスピードで順番が来てしまったオカ研。
    「仕方ない、判別の趣旨は判ったな、犀原、オレについて来い。あ、藤田も来る?」
    「お、俺は部長だよ、そりゃ行くよ。行くに決まってんだけど何も判ってないですがな」
    言葉遣いの怪しさが藤田の心理状態を物語っている。生徒指導室に向かう途中、伊丹から藤田には何の説明もない。
    いまさら、説明しても混乱するだけになるから、自信満々のフリをして堂々としていてくれと言われた。

    部屋に入ると岡本と吉川が椅子に座って待っていた。単なるオブザーバーというより伊丹の陽動作戦を封じる為にいるのは明らかだ。
    「君たちが最後だ。さあ、始めようかね」
    「先生、最初にちょっとお願いがあります。ゲームの条件についてもう一回確認させて下さい」
    来た。どんな搦め手を出すか、そしてそれを阻止すべく岡本と吉川が身を乗り出す。

    「先生の答えは必ずイエスかノーかで答えてくれますね?」
    「勿論だ。イエス、ノーで答えられない質問なら逆にアウトだ」
    「答えはすぐさま、つまり判り次第、間違えずに答えてくれますよね?ヘンな間を取ったり、判らないフリをしたりするようないわゆる盤外戦術なんてしませんよね」
    「当たり前だ。余分な策を労したりはしないさ」
    盤外戦術こそ伊丹の専売特許じゃないかと心の中でツッコんだのは本人を除く全員だった。

    「確認は以上です」
    えっ?
    と今度は伊丹と犀原以外の全員が思った。
    あまりにまともな確認事項だったからである。

  • >>24

    「7つの扉」⑪


    水野がオカ研のドアをノックする5分ほど前の生徒指導室には、沢田、水野そしてパズ研の岡本が集まっていた。
    「本当に一人で良いのか?」
    「大丈夫ですって、それよりもう時間です。早速始めましょう」
    沢田は何枚かの紙から一枚選んで机の上に伏せて置いた。
    岡本は躊躇う事もなく、最初の質問を始めた。

    「73以下ですか?」
    「答えはノーだ。おめでとう、取り敢えず、合格ライン突破だ」
    握手を求める沢田に当然という素振りでそれに応えようとする岡本。慌てて水野が口を挟む。
    「ちょ、ちょっと待って下さい。もう終わりですか?」
    水野も合格レベルのあらましを聞いてはいるのだけれど余りの呆気なさに不満が顔に出る。
    「これ以上続けても時間の無駄だけど、一応次の質問を聞いてみようか」
    沢田は岡本の方を向いて次の質問を促した後、二人同時に同じ言葉を発する。
    「89以下ですか」
    「89以下ですか」
    なっ、という顔で水野をふり向くと、水野はあきらめたような顔でお疲れ様でしたと呟く。
    じゃあ、Q研を呼んできますねと言って部屋を出ようとした時に岡本が沢田に尋ねた。
    「僕、このままオブザーバーとして残っても良いですよね」

    続いて現れたQ研のメンバーは吉川と川端の2名だった。
    吉川は岡本の姿を見たが何も言わずに席に着く。続けてノートとペンを持った川端も座る。
    「では、早速、始めてくれ」
    一枚の紙を伏せた沢田の言葉に吉川は一つ肯くとチラッと川端のノートを確認して質問を切り出す。

    「35以下ですか?」
    「イエス、ご苦労さま」
    と沢田は握手を求めて右手を差し出す。
    えっ、もう?と面喰らった顔の吉川に水野はつまらなさそうに言う。
    「どうせ、次の質問は19以下ですか、でしょう。私、オカ研を呼んできますね」

  • >>23

    「7つの扉」⑩

    焦る藤田に対して伊丹は悪びれもせずに、しらっと答える。
    「戦法の趣旨を理解してもらう為の必要な手順を踏んだだけだ」
    藤田の顔が怒りから驚きに、そして安堵の表情へと変わった。オカ研のメンバーは通過儀式に甘い。
    「え?じゃあ、勝算があるのか?ホントに?」
    「勝算はある。しかし、客観視できるデータが不足している。それを今からやって間に合うかどうか」
    「伊丹先輩、僕らの順番は3番手です。パズ研とQ研のやつらが7回ずつ質問するんだから、15分くらいは猶予があると思います」
    「よし、じゃあまずは犀原お前から始めるぞ。みんな、質問が聞こえないくらい離れていてくれ」

    伊丹と犀原が隅の方に行き、2人だけでゲームを始める。
    気になって仕方ない藤田はそっと聞き耳を立てて様子を窺う。
    数字を書いた紙を渡しては、同じ質問だと言っているようだ。
    伊丹の説明に犀原はしきりにビミョーですねという言葉を繰り返している。本当に大丈夫なのか?

    と、その時、部室のドアをノックする音が聞こえた。
    時計の針を見ると5分を少し過ぎた所だ。
    早い、早過ぎる。
    ドアの向こうから現れたのはやっぱり水野だった。

    「オカ研の皆さ~ん、時間ですよ~。すぐに生徒指導室まで来てくださ~い」

  • >>22

    「7つの扉」⑨

    伊丹は紙に91と書いて犀原に渡す。
    「質問には正確にイエスかノーだけで答えてくれ。いいか?」
    伊丹と向かい合った犀原側には部員全員が固唾を飲んで質問に答える体制になっている。

    「質問。その数字は素数か?」

    犀原は数字を凝視する。素数の意味は判る。でもこれって素数なのか?2とか3では割り切れないし、素数みたいな気もする。
    周りを見回しても困惑顔だらけだ。そもそも素数の意味が判らないものもいるかも知れない。
    答える事も出来ず、時間だけが過ぎて行く。5とか9では割り切れないのは明白だ。7は? 頭が混乱して良く判らない。
    スマホを出して電卓計算をしてみる。
    「あ、ノーです。91は7×13で、因数に分けられるから素数じゃない!」
    「その通り。今、犀原はイエス、ノーの2択で答えた。でもな実際には4択で答えたとも言えるんだ」
    何を言っているのか解らないという顔が部屋中を支配した。

    「91という数字に対してそれが素数であるかどうか、沢田だって少し時間が掛かるだろう。逆に偶数や3や5の倍数はすぐに素数じゃないって事が判る。つまり即答でノーだ。11や13、17、19なんかは数学教師であれば即答でイエスだろう」
    「即答でイエスとノー、少し考えてイエスとノー、この4種類に分かれるという事ですね。でもそれだと即答でノーの数がかなり多い気がするけど」
    「そうだな、ざっと70個くらいは即答でノーに該当するだろうな。それと沢田なら2ケタの素数くらいは全部憶えているかも知れない」
    「じゃあ、この質問はダメじゃないですか」
    「だから、一例を示すって言っただろ」

    ここまでのやり取りが時間の浪費だと知り、藤田が怒り出す。
    「おいおい、何やってるんだよ、約束の1時間まであと、2分しかないのに!」

  • >>21

    「7つの扉」⑧

    開けられたドアから入ってきた伊丹を全員が一斉に振り返る。泣きそうな声で藤田が声を出す。
    「いたみー、オマエどこ、行ってたんだよ~」
    「ん?オレ?Q研の山崎がお好み焼きをおごるって言うから、怪しいなあと思ったんだけど。おふくろ食堂でテイクアウトにするって言ったら急に慌ててメールとかしてんの。ますます怪しいんでそれで急いで戻ってきたんだけど」
    手にしたお好み焼きの袋を軽く上げて爽やかに言う。
    「怪しいと思ったのに、お好み焼きだけはゲットするのか、まあいい、俺たちはオマエを必死に探していたんだぞ」
    「探していたって、外山もか?アイツなら校門の辺りでダウジングをしていたぞ、オレが目の前を通り過ぎても気付かないくらい集中していた」
    「あ、あのバカ・・・」

    「時間がないんです。とにかく、伊丹先輩、ここに座って下さい。実はかくかくしかじかで・・」
    業を煮やした犀原が手短に事情を説明する。その間、伊丹は焦るでもなく、お好み焼きをムシャムシャと頬張る。
    そんな様子を見て藤田が時計をチラッと確認して言う。
    「約束の1時間まで後、10分しかないんだ。どうだ、伊丹、このミッション、クリア出来るか?」
    「う~ん、エレガントってのはオレには良く判らないんだけど・・6回で特定出来れば合格という約束を取り付けたのは、お手柄だったな」
    「そんな事、言ったって先輩、理論的に6回では出来ないですよ。ヘンな質問したら即、アウトですし」
    「イエスかノーで答えられる質問をして3種類の答えを引き出せば3分の1に絞れる」

    90個の選択肢で3分の1になれば、30個。32個以下だから残り5回で確定となる。
    素早く計算し、いち早く犀原がもっともな疑問をぶつける。
    「それはそうですけど、2択質問で3択回答なんて、そんなオカルト的な事が出来るワケないです」
    オカルト研究会の部員にあるまじき発言であるが、それを否定する部員は誰もいなかった。
    「相手がコンピューターならばな。でも沢田は理論的な思考の持ち主ではあるけれど、決して計算が特に早いわけではない。人並みだよな」
    お坊ちゃまタイプの沢田は確かにそんな印象だ。数学教師と言っても、計算速度そのものは普通だ。正確性は高いけれど。
    「だからどうなるって顔だな、じゃあ、一例を示してみよう」

  • >>20

    「7つの扉」⑦

    あたふたという言葉を体中で表現しながらオカ研に戻った藤田は部室にいる部員にコトの経緯を話したが、あたふたは広がる一方だった。
    「部長、我々の予算はどうなるんですか?全額カットですか?」
    「夏に予定していたセレブなオカルト合宿は取りやめですか?楽しみにしていたのに~」
    「顧問がいなくなったといって、まさかすぐに廃部なんてことには・・・」
    悲観的な空気だけが充満する。
    「ええーい、落ち着け!とにかくだな、一刻も早く伊丹を探すんだ!」
    藤田の叫びに犀原が答える。
    「すぐに探検隊を出動させました。校内は内田に、学校の近辺は外山を向かわせています」
    そうか、と俯く藤田には字面だけの人選に気付く余裕は無かった。
    「でも、もし、伊丹が見つからなければ俺たちだけでやらねばならないな」

    「部長、一度、我々だけでそのゲームをやってみて練習してみましょう」
    ますます暗くなる状況の中、犀原が前向きな発言をする。
    「そうだな、じゃあ、俺が数字を適当に書くから、お前らで順番に質問してみろよ」
    藤田は紙に数字を書くと杉下の方を向いて質問を促す。

    「えっ、ボクですか?困ったな、え~と、その数字、部長はどっちかという好きな方ですか」
    「・・・・答えはノーだが、それを知ってどうする? 次!」
    「えーと、つまり、こうですか。候補を絞る質問だから、偶数ですか?とか?」
    そうそう、グッドな質問ですと先輩をホメる犀原。ノーと答える藤田に次の番の権田川が勢い込んで言う。
    「じゃあ、じゃあ、それは奇数ですね、でしょ?でしょ?」
    誇らしげな権田川にほぼ全員が頭をかかえる。イエスと答える代わりに藤田は力弱くつぶやく。
    「れ、練習はもうこのくらいにしとこうか」
    えー、まだ4回も質問できるのにぃ、と不満顔の権田川を見てコイツだけは同席させないと心の中で誓う藤田。
    今の所、唯一練習の成果とも言える結論だ。

    「質問6回で特定するなんて事が出来れば自動的に合格なんだけどなあ」
    「でも、部長、それは数学的に言って絶対に有り得ないです」
    比較的冷静な犀原が淡い望みを打ち砕く。
    「そうだろうなあ、岡本と吉川もそんな口振りだったしな」
    その時、部室のドアをガラッと開けて一人の男が入ってきた。

    「伊丹!」

  • >>19

    「7つの扉」⑥

    「僕が思うに、ベターな方法は半々よりも6回で済む確率が上がる方法だと思うんですよ。半々で進めると残った数が奇数になる場合が出て来て、それが3回続けて少数になる方の答えが出る場合に於いて6回で数字が特定される。つまり、1/8、12.5%がその方法の成功確率です」
    全員、ここまでの話には理解がついているようで、肯いたり、相槌を打ったりしている。

    「そもそも、スタート時の90個の可能性というのが中途半端です。2の7乗は128ですから38個の余地がある。128ではキリが悪いけど1から100の数字で行っても良さそうなものです」
    ここまでも大丈夫。みんな川端の次の言葉を待つ。

    「では、最初の質問で数を絞る方針を採った場合、質問が8回になってしまうリスクを避けられる最大数は?」
    これには数人の頭からクエスチョンマークが浮かんだようだ。だが、ここは吉川が答える。

    「64だ。64までは半々で行っても6回で数字は限定できる」
    「その通りです。部長。もしも答えが少ない方の集合に属するならば残りはイッキに26個の数に減る。言うまでもなく、26は32より少ない数字だから残りは5回以内で正解に辿り着く」
    おー、と言う声がどこからともなく上がった。

    「少数の属に特定出来る確率は26/90。28.9%です。これは先ほどの12.5%よりも優秀です。100個の選択肢があると64を引いても36余る。これだと32より多いのでゲームの設問として不適当です。これが1から100の数字としなかった理由です」

    ブラボー!手嶋が興奮した声を出して立ち上がった。それを制して川端は続ける。
    「ここで終わっては詰めが甘いです。残り26になった場合も半々ではなく16と10に分かれる質問をする。以下同様です。これで完璧かと」
    「素晴らしいよ、川端。これで我がQ研の栄光の座は安泰だ」
    部員総立ちの中、吉川は川端に握手を求めて近づく。

    こんな芝居掛かった一連のやり取りが終わる頃、一通の新着メールが山崎から手嶋に届いた。

  • >>18

    「7つの扉」⑤

    パズ研が答え合わせをしている頃、Q研ではまだ結論が煮詰まってなかった。
    「なあ、これって実は高等数学の問題で凄くレベルが高くて誰も合格にならないように裏で水野が画策してるんじゃないか?テンモンの顧問も掛け持ちだから、いつでも交代可能だし」
    引っ掛け問題の傾向と対策を担当している田淵が疑惑を口にする。

    「いや、流石に水野だってそこまではしないだろう。あわよくば、くらいには考えてるかも知れないけど」
    副部長の神田は女に甘い。しかし、今回の見解は妥当のように見える。部長の吉川は一つ肯いてこう言った。
    「よし、じゃあ、そろそろ目標を明確にしよう。不合格レベルの平凡な答えの一つ上を行けば合格になると思う。この場合の不合格レベルの答えは、半々に絞っていくという手法で間違いないだろう。誰でも思いつく方法だしな」
    「果たしてオカ研でも思いつくかな」
    下級生の手嶋が茶々を入れ、数人の薄笑いが起こる。
    「いや、あそこは伊丹がいるからな。あいつは何をするか判らないぞ、油断は禁物だ」

    「準備は万端ですよ、部長、伊丹さんは部活の遅刻常習犯だから、まだ廊下をぶらぶらしていてですね、お好み焼きをおごるからって、ふるさと食堂まで連れていくのに成功したって先ほど山崎からメールが」
    「おおっそうか、流石、手嶋、悪賢さでは水野と並ぶねぇ」
    「名参謀と呼んで下さいよ、水野さんと並べられても嬉しくないっすよ」
    「ふるさと食堂まで行って食べてから帰ってくれば1時間は経過するな、よし、これでオカ研は落ちた」
    「じゃあ、改めて問題のおさらいをしましょう」
    Q研きっての理論派と目される川端が舵を取り直す。

    「半々方法がアウトと仮定してそれよりもベターな方法ってのは、どんな基準数値としてベターとするのでしょう」
    川端は命題を部員に問い掛け、周りを見回した。腕を組み唸っている者、何か考えがありそうな者、パソコンをいじってる者、考えているフリをする者、様子は様々であるが全員が川端の言葉を待っている。
    先に正解などを言おうものならば途端に川端の機嫌が悪くなるからだ。
    そしてたっぷり間を取ってから川端は口を開いた。

  • >>17

    「7つの扉」④

    「と、いうワケなんだ」
    パズ研の部室では岡本がゲームの経緯を部員に説明していた。
    「そんなの、答えは一つと違うの?対象数は10から99の90個。半々にしていくと45、切り上げで23、12、6、3、2。これで7回。必要最大数は7回だって事は明白だ。奇数が残った場面で運よく少数の方に寄れば45、22、11、5、2で6回。でも運の良さは問われないんだろう?2択なんだから半分ずつ絞っていけばいいんとちゃう?」
    熟考タイプの多いパズ研のメンバーでは珍しい直感即答派の大谷が早速、結論を急ぐ。

    「だからお前はオッチョコチョイと言われるんだよ、それのどこがエレガントなんだよ」
    筆記問題に強い梶川がダメ出しをする。
    「それは間違いなく顧問取り消しレベルに想定している回答だ、この闘いが指名制でお前が回答者でなくて良かったよ」

    「まあまあ」
    部長の岡本が取りなす。大谷は早押しクイズ大会では貴重な戦力だ。内紛は避けたい。
    「今回のゲームは俺たちの土俵でやるようなもんだ。これはピンチではなく、沢田の顧問部数を一つでも減らして俺たちの予算を多めに獲るチャンスだ。下手を打たないように確実に仕留めたい」
    部員たちは肯く。
    パズ研の面々に追い込まれた雰囲気はなく、すでに大多数の部員が同じ結論に至ったようだ。
    「さっきの半々手法はきっとオカ研が提案するさ、もしかしたらQ研だってそれしか思いつかないかも」

    岡本が手をパンパンと打って全員に呼び掛けた。
    「よし、じゃあみんな、答え合わせといこうか」

  • >>16

    「7つの扉」③

    「7回」

    パズル研究会の岡本が口を挟んで即答する。吉川は大きく肯き、藤田はポカンと口を開けている。
    「その通りだ。流石に早いな」
    「必要回数の答えはもう判っていますが、そうすると回数の少ないもの勝ちですか?それだと運による要素が多すぎる」
    吉川が当てずっぽう、もしくは怪しげな手法でもってオカ研に攫われる事を恐れて牽制する。
    「いや、そうじゃない。必ずしも回数には拘らない。もっともエレガントな質問方法を展開した研究会を優先する。同等であれば2部掛け持ちにするし、3者とも同じ水準をクリアすれば今まで通りにする。逆にどこもクリア出来ないとなれば3部とも顧問を取り下げる」
    水野の口角が少し上がった。やっぱりだ、と岡本と吉川は感じた。

    質問は?の声に岡本は尋ねた。
    「先生はすでに合格ラインの回答水準を描いていますか?」
    「ああ、それについては水野と打ち合わせ済だ。その水準に達するかどうかだけで判断する」
    はい、と手を挙げて吉川が尋ねる。
    「今すぐ、ここでそのゲームを行いますか」
    「いや、それではそれぞれの部員に申し訳が立たないだろう、1時間の猶予を与えるので説明と作戦会議に充ててくれ。1時間後にパズ研、Q研、オカ研の順に各部3名を連れてここに戻ってきてくれ」

    澱みなくゲームの説明を終えると、この催しを陰で操ったと思われる水野は満足の笑みをこぼした。
    そしてここまで黙って聞いていた藤田が最後に質問した。
    「エレガントさというのが僕には良く判らないですけど、もしも最大でも6回で当てられる質問をしたらどうなりますか」
    「いかにもオカルト研究会らしい質問だな。その時は文句なく合格とするさ」
    岡本と吉川はせせら笑うような素振りをしたが、水野は余計な事を!と言うような視線を沢田に送った。
    沢田は少し慌てながらも若干の修正を加えて厳然とした口調で宣言した。

    「質問のルールは判ったな、イエスかノーでしか答えられない質問に限る。
    それ以外の質問をしたら即、アウトだ。では一時間後にまた会おう」

  • >>15

    「7つの扉」②

    「それで、先生、ゲームって一体どんな試験なんですか?」
    クイズ研究会の吉川が恐る恐る尋ねる。
    ゲームという軽いノリではなくこれが生き残りを賭けたふるい落としである事は明らかである。
    「や、試験なんてそんな大層なものじゃないけど」コホンと空咳をする。
    「えー、君たちの同好会は理知的な思考、論理を重んじる集まりだと聞いている」

    皮肉まじりの視線の先でチラッとオカルト研究会の方を向く。まだ一言も発していない部長の藤田が首を竦める。沢田は数学の教師であるので一応、論理的な思考の持ち主である。一方でお坊ちゃま育ちのせいか少し抜けた所もある。パズル研究会の顧問を引き受けたのは自然な流れであったが、クイズ研究会、通称Q研と混同して顧問の手続きを済ませてしまった。クイズ研究会にしたら渡りに舟である。問題はその直後にオカルト研究会、通称オカ研の副部長の伊丹によってまんまと嵌められて図らずも顧問になってしまった事にある。沢田にとっては痛恨の出来事である。
    伊丹の説明では純粋理論を極める研究会との事であったがその実態がオカルト研究会である事を知ったのは、やはり顧問承諾用紙が提出された後のことである。このいきさつについては話すと長くなるので割愛するが、切りたがっている会がオカ研である事は明白であり、先の皮肉がオカ研に向けられたのもその事情があっての事である。

    「繰り返すが3つの掛け持ちは厳しいものがある。そこでゲームによって君たちの理知性を試してみたいと思う。そのゲームによって理知性に欠けると私と水野が判断した研究会からは残念であるが顧問を降りようと思う」
    と、少しも残念そうでない口ぶりで言う。
    「さて、そのゲームだけど、実にシンプルなルールのゲームだ。私が紙に書いた2桁の整数をイエスかノーかで答えられる質問のみ繰り返してその数字を限定させるというものだ。理知的な君たちの事だから数理的な必要最大回数はすぐに判ると思うが・・」

    「7回」

  • 「7つの扉」①

    N高の生徒指導室では1人の教師と4人の生徒が狭い部屋の中に集まっていた。
    「やあ、みんな、こんな所に呼び出してすまない。今日は私からお願いがあってここに集まって貰った」
    3人の男子生徒は顔を見合わせて訝しんだ。生徒指導室という所はとにかく落ち着かない。
    建物の構造的に防音になっているせいか、ここで話があるという事は何か良く無い話が始まるという先入観、いや事実に裏付けされた実績があるからだ。しかし、もう一人の女子生徒は落ち着き払っている。それどころか何かわくわくした期待感すら漂わせている。

    3人の緊張感を察したのか、教師の沢田はことさら気さくな口調で要件を切り出した。
    「なあに、そんなに深刻な話じゃあない。これから君たちに簡単な頭脳ゲームをやって貰おうと思う」
    「ずのうゲーム?」言葉が頭で正しく変換されないかのような反応を3人が示した。

    「ここに集まった3人の共通点には当然気付いていると思うけど、私は君たちの同好会の顧問だ」
    3人は揃って肯く。
    「3つの掛け持ち顧問になって1ケ月になるが、やっぱり3つ掛け持ちというのはどうもな・・」
    沢田は言葉を濁してから続ける
    「他の先生方も掛け持ちしている例はあるけど3つというのは流石に1人もいない」

    ここにきて話の趣旨が見えてきた3人に緊張が走る。同好会での顧問は形式的なものであり
    特に何を指導をするでもなく、誰が顧問になっても差し支えないのだが、沢田の場合はちょっと違う。
    彼はここの理事長の甥であり、海辺に別荘を持っている。他の平教師とは大きく異なる利点があるからである。沢田が顧問になれば、同好会の予算に頭を悩ます事もなく、夏の合宿と称して一週間ほどのバカンスを
    楽しむ場所を提供してくれる一大パトロンになるからだ。

    「あの・・それで水野は何でここにいるんですか」
    パズル研究会の部長である岡本がおずおずと切り出す。
    「ああ、彼女は立ち合い人だ。審査に参加してもらう」
    「よろしくね、知ってるとは思うけど自己紹介。天文部部長の水野でーす。
     中立で公正な立場でこのゲームに参加しまーす」
    ウソつけ、どうせお前の入れ知恵かなんかだろう。
    予算欲しさにテンモンが沢田を狙っているというウワサは聞いている。
    3人は心の中で毒付いた。

  • >>13

    「折れ折れサギ」3/3

     勢いよく山本はスタートした。それでいて端と端はきちんと合わせ、力強く折り目を付けた。
    山本は彼なりに考えて後でやり直すような事にならないように手順を工夫したようである。
    1回、2回、3回と数秒単位で折り作業が順調に進む。楽勝だ。時計の針を横目で見ながら山本はそう思った。
    5回、6回と折り続ける山本の表情が変わった。サイズが思ったよりも遥かに小さいのだ。
    7回折った時点でそれは名刺くらいの大きさになっていた。時間はまだたっぷりある。しかし8回目を無理矢理折った時、その新聞紙はもはや四角い紙の塊となっていた。それをさらに折るのは完全に不可能だった。

    「キジマ、てめえ!」凄む山本にキジマはニヤニヤしながら涼しい顔で答える。
    「どうした、まだ時間はたっぷりあるよ。後、2回折れないかなぁ、無理かなぁ、ボクちん、切手サイズになった新聞紙を是非見たかったんだけどなぁ」
    「キサマ!折れない事が判っていて、時間制限に気を取らせて、お、俺を嵌めやがったな!」
    「でもまあ、誓いのダンスも済んだことだし」

    二人の中では誓いの踊りは絶対的な証文だった。うぐぐ、とうめいて山本は叫んだ。
    「判った。オレも男だ。昼メシはおごる。だがな、よーく覚えておけ。俺は賭けに負けたんじゃない。騙されたんだ。詐欺にあったんだ!」
    「そうだな、その通りだ。俺もそう思う」
    と言ってキジマは手を差し出した。
    「ん、なんだ?この手は?」

    「2,000円」


    約2300字 (3H30M)

  • >>12

    「折れ折れサギ」2/3

    「さて、そろそろ、メシにしないか。実を言うと俺は凄く腹が減ってる」
    山本が立ち上がって新聞を脇にどかす。
    「やっぱりお前、腹が減っていたか。ところで今日もA学食の超大盛りカレーだよな」
    「おう、それ以外に選択肢はねえ。250円で満腹になるんだから肉が見つからないカレーとて文句は言えねぇよ」
    「じゃあ、その前に恒例の昼メシ賭けをするか」
    「そうだな、キジマ、何か新作の賭けネタはないか?」
    「それが、丁度お誂え向きなのがあるんだ。今、読んでた新聞なんだけどな、それを時間内に折れるかどうかってヤツだ」
    「新聞を折る?どういう事だ?」
    「その新聞の一枚を開いた状態から半分に10回折る。制限時間は2分でどうだ?」

     山本は頭の中で計算した。新聞を半分に折るのは簡単そうに見える。一回折るのに10秒も掛からないだろう。
    10秒掛ける10回としても2分弱だ。2分なら折れそうな気がするが、キジマの新ネタは思いもよらぬ罠があったりして過去の勝敗は圧倒的にオレの負け越しになっている。それというのも新ネタにチャレンジするという魅力に抗しがたく、条件通りに受けてしまうからなのだが。しかし、今月財布は決してラクとは言えない。

    「4分でどうだ?」
    「バカ言え、そんなにやれるか。2分30秒ならば・・」
    キジマの言葉を遮るように山本が力強く宣言した。「じゃあ、3分だ」
    「し、仕方ないな・・じゃあ、半分を10回、3分以内に」
    二人は【原住民の誓い】を舞ってこぶしを合わせた。これで賭けは成立だ。

     山本は新聞を広げて机の前に正対し、集中力を高める姿勢に入った。頭の中では作戦と手順が渦巻いていそうだ。
    「じゃあ、あの時計の秒針が12の所になったらスタートだ。時間は11時45分だから11時48分がタイムリミットになる」
    そう言うキジマの態度には隠しきれない余裕の笑みがあったのだが、今の山本にそれを察する能力は失われていた。

    「Ready Go!!」

  • 「折れ折れサギ」1/3

     部室のドアを開けると新聞を広げて寝そべっている男が一人いた。
    「よう、山本、何読んでるんだ?」
    「見れば判るだろう、新聞だ。常に社会にアンテナを張る俺のルーティンワークだ」
    「へえ、お前がそんな事してるなんて知らなったな。それで何か変わった事は載っているか?」
    「努力を惜しんで、何でも簡単に済まそうとする。それがキジマの悪い癖だ」
    木島と呼ばれた男は目をパチクリさせてから肩を竦めてみせた。

    「まあいい、大事件は特に起きていないが世の中は相変わらず小さな悪事と醜聞に満ちている。
     何も変わらないくらいにな。でも、変わらないが故に不思議に思う事もあるってもんだ」
    「山本、一体何をワケ判らん事を言ってるんだ、さてはお前、腹が減っているな?」
    「変わらんと言ったのはいまだにオレオレ詐欺の被害が出ている事だ。そして不思議なのは
     何でこれだけ騒がれていて、まだ引っ掛かるヤツがいるんだろうって事だ」
    「それだけ詐欺師の方も巧妙になって来ているんだろ?切磋琢磨してるって見方も出来るな」
    「キジマ、お前詐欺師の味方か!そう言えばお前はいかにも詐欺師っぽい風体だよな」
    「人聞きの悪い事を!そういうお前だって意外にコロリと詐欺に引っ掛かるかも知れんぞ」
    「い~や、俺はそんなものに引っ掛からんぞ、絶対にだ」
    こうなると、二人のやりとりは以下のワンパターンコースを辿る。
    「絶対に?」「絶対だ」「賭けるか?」「よし、受けて立ってやろう」

    「で、条件は?」
    「そうだな、一週間以内に山本がサギに遭ったら俺に2,000円、遭わなければお前に500円」
    「よし、決まりだ。オッズは4:1だが、俺が完全に有利だ」
    「そ、そうか?」
    「詐欺に遭ったかどうかは主観だろ?万が一、遭ったとしても、それを認めなければいい。
     納得ずくの取引だと主張すれば、詐欺に遭ったと証明できない」
    「おいおい、そこまでして勝ちたい?」
    「いや、万が一の話さ。そもそも俺が詐欺になんか引っ掛かるはずがねえ!良し!賭け成立!」

     そう言うと二人はゴリラのような変な踊りを舞った。そして右手のこぶしを頭上で叩き合わせた。
    これこそ彼ら呼ぶところの【原住民の誓い】である。これを舞った以上、否応なしに賭けは成立。
    後から、あれは冗談だったとか覚えていないなどという言い訳は一切通用しない神聖なる誓いなのだ。

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