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    *****

    随分昔の気がしますが、矍鑠とした石垣さんの朗読を聞かせていただきました。凛とした朗詠で、密かに持ち込んだテープレコーダーで録音し、家で何度も聞き返しました。確か「歴程賞」を受賞されたとき、私がお祝いの手紙を出し、その中でテープのことに触れましたら、「背筋が寒くなる思いです。」というご返事をいただきました。忘れられない方です。石垣さんの作品についておしゃべりしましょう。

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    コナン 12月12日 15:44

    >>5834

    こんにちは。
    やはり寒い日になりました(泣)。
    息子の部屋のエアコンが壊れ、これから修理の方が見えます。
    掃除も終わり、あとは待つのみ…(笑)。

    新川さんの作品をたくさん載せてくださいましたね。
    ありがとうございます。

    >自叙伝を出した老作家が…

    歳月の慈悲ですか。すばらしい言葉ですね。
    時間は慈悲深いもの、とも言えますね。
    できることなら、自分の過去が現在を作っていると思いたいですが
    穴があったら入りたい、と思うような過去もありますので(汗)。
    でも、不惑もとうに過ぎ、知名(50歳)、耳順(60歳)と順調(?)に
    歳を重ねた今、すべてが良し!と思えてきました。
    いやぁ、歳月はありがたいです!!

    >見あげると 空に…

    空を見上げる機会がなく、ついつい目先は下ばかり…
    という生活をしておりますが、空は無限の広がりを持ち
    どんなことでも受け入れてくれる寛大さを持ち、と
    本当にありがたい存在ですね。
    寒さで縮こまってばかりいないで、時には胸を張って堂々と
    空を仰ぎたいです。


    >雪うさぎ

    雪うさぎ、懐かしいですね。
    南天の葉と赤い実を使った雪うさぎは、雪の日の楽しみでした。
    雪だるまほど大きくなく、ちょうど家の中に飾れるサイズの
    空からのプレゼント、最近目にする機会がありません(泣)。
    新川さんの作品では、寝ている間にお母様が作って下さったもののようです。
    「起きなさい。雪の朝ですよ。」という優しい声まで聞こえてきそうですね。

    私からは、りんさんの「母の景色」です。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
       母の景色   石垣りん

    母は
    花のように美しくなくていい。

    花は四季を忘れるほど
    咲き競っているけれど。
    人の心を温室に入れるほど
    産業は発達していない。

    冷たい波に洗われて
    岩石の表情になっても
    濡れた白砂の横顔でもいい。

    やさしさは侵食され
    愛はうちくだかれ
    希望は流されても。

    半島のゆるぎなさで
    あなたは母でありすればいい。

    いのちの大陸につづく
    ちいさなちいさな陸地、
    母たち。
    手をつないで下さい、
    すばらしい海岸線が見えてくる。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    *りんさんの母親像は、かなり強い母です。
     しっかりと子を守る母、命をつなぐ母、、、
     安心を与えてくれます。

  • >>5833

      新川さんの詩の続き

    『見あげると 空に…』

    見あげると 空に
       星があった

       星があったことよりも
       見あげる ということを
       思い出したそのことに
       涙ぐまれた

       なんと あくせく
       下ばかり向いて
       世間ばかり見まわして
       暮らしつづけてきたことか

       こころが
       ふかくふかく 吸われていった
       ひろくひろく 広がっていった

       ふるさとの河原の
       洗われた小石のように
       空じゅうで 
       それが 光っていた
       
       
       『雪うさぎ』
                     
       雪をください
       大きなだるまをつくるほど
       どっさりでなくていいのです
       この木のお盆に ほんのひと盛り

       わたくしが子供の頃は
       東京周辺でも
       天からの年賀客のように
       お正月にはきまって雪が降ったものです
       朝目をさますと枕もとに
       母のつくってくれた雪うさぎが
       ちんまり坐っているのでした
       
       あの つめたくて
       かなしいほど美しい雪うさぎを
       わたくしも幼い娘に
       つくって見せてやりたいのです
       愛することにも 愛されることにも
       それなりのいたみや悲しみがともなうものだ
       ということを
       撫でられてとけてゆく雪うさぎが
       ちいさな掌に おしえてくれることでしょう
       わたくしがそれを知ったのも
       しぃんと静かな お正月の朝でした
       
    >等々 とても素敵な詩を書く方です。

  • >>5832

     こんばんは。
     雨が降っていますが、もうすっかり冬の雨となりました。
     この雨が遠くの地では雪となって降っている。
     そんな事をしみじみと思わせる冬の雨です。
     
    >春

     芭蕉の さまざまの事思ひ出す桜かな 
     
     或いは漢詩の 年々歳々花相似たり 歳々年々人同じからず
     
     そんなことを思わす詩ですね。
     私たちの一日は 一週間は 一月は 一年は いや一生ですら
     この大自然の営みの時間に比べれば、何と短くはかないのか。
     いや、だからこそ…りんさんの思いがよく伝わる詩です。

    >さて次は順番から言って新川和江さんですね(笑
     この方の詩もいっぱいこの掲示板で紹介しました。
     心に響く詩が多い。しかも決して難しい語彙を使って
     いないのが良い。
     

     『自叙伝を出した老作家が…』新川和江
     
     「池の底に沈んだ木の葉が
      いちまい いちまい
      浮き上がってくるように
      思い出されてくるものなのです」
     幼年時の些細な出来事まで克明に綴り
     大冊の自叙伝を出した老作家が
     そう言っていた
     若い日わたしがひそかに沈めた病葉(わくらば)も
     掬い出して日に翳(かざ)してみたら
     意外に
     うつくしい葉脈を見せてくれるかも
     それが歳月の慈悲ーーというものなのだろう
     
    >いやあどうですか、心に響きます。
     歳月の慈悲、良い言葉ですよね。
     生きていきましょう、この言葉を信じて。

  • >>5831

    >あじさいの花

    あじさいは、我が家にもありますが
    かなり不思議な花ですね。
    花が枯れたままドライフラワーのようになって
    生き続けている姿を見ることもあります。
    我が家は枯れた花は切りましたが、葉が枯れたまま
    残っています。来年、また素晴らしい花が咲くことなど
    想像もつきません。恐るべき生命力です。
    高田さんがお書きのあじさいは、濡れて美しさを増した様を
    表現されましたが、その姿を女性に譬えた点が、彼女らしいです。
    全女性への応援歌ですよね。

    りんさんの「春」です。
    春にはトピが消えていて、載せる機会がありません(泣)。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
       春    石垣 りん       

    ちいさい森のはずれに
    今年も桃が咲いた。

    去年とそっくり
    同じ景色で
    その間に月日が流れたことなど
    うそのよう
    その間に人が死んだり
    生まれたりしたことなど
    まるでなかったよう。

    季節は
    巡り来るたびに取り出される
    一枚の衣装で
    過ぎれば
    薄く薄く折りたたまれる。

    ちいさい森のはずれに
    今年の桃が咲いた。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    *こうした当たり前の光景が
     何とありがたいことか、と気づくのに
     少々時間がかかりましたが
     今でしたら、自信をもって、
     堂々と言えます。
     自然は偉大だ!と。

  • >>5830

    お早うございます。
    今日も寒いです! 
    暖冬といわれていましたが、やはり冬の寒さですね。

    深夜(?)まで、高田さんの作品のご掲載、
    本当に感謝感激です。
    石垣さん、茨木さん、高田さん、新川さんと
    日本には素敵な女性詩人がいらっしゃいましたね。
    女性の目線で、温かく、時には厳しい作品を
    お書きでした。

    >母の手

    本当に母親はありがたいです。
    優先順位の第1位が、わが子ですから。
    hanaikadaさんも私も両親を亡くしていますが
    父親は置いておく(汗)としても、
    母親は、まだ身近な感じがしてなりません。
    こんな風に、夜中に訪れて布団を直してくれるのは
    あながち夢ではないかも?と思います。
    ほんの刹那ですが、母に会えるのは嬉しいものです。

    >愛の言葉

    確かに、まだ訳が分からない時分に
    こうしてわが子に語り掛けたことがありました。
    花の名前、動物、建物など 思いつくままです。
    傍から見たら、何してるの? と言われそうですが
    こんな時間が親子の絆を育ててくれたと思っています。

    無洗米は、お米を作ってくれた農家の方に失礼では?
    と思ってしまい、我が家では無理です!
    お米は素手で、冷たい水で研ぐのが正解と思いますよ。
    我が家の場合、田舎から玄米で買ってきて
    精米機で白米にしています。

    詩集の大整理、お疲れさまでした。
    このトピの影響で、詩集が増えたそうで、私としましては
    何と申し上げたら好いのか、迷います(笑)。
    色々な場所から、忘れていた詩集がひょっこり顔を出すので
    私も一大決心をして、整理しないと思います。
    でも、恐ろしい話ですが、たぶんまとめ始めると
    同じ詩集が何冊も出てきそうな…(笑)。
    日頃、いかにいい加減に生きているかが問われそうです(汗)。
    年末ですので、蔵書の整理には絶好の機会ですね。

    次に、りんさんの「春」を載せます。

  • >>5829

     こんな詩もあります。
     
     『あじさいの花』 高田敏子
     
     あじさいは
     雨にぬれて
     悲しみを洗っている
     悲しみを洗いながら
     美しく色を変えてゆく
     
     女(ひと)も しばしば
     悲しみにぬれる
     そして
     月日の流れに洗われる
     そして そうして
     美しさをましてゆく
     あなたの目は やさしく
     ほほえみは 匂やかに
     
    * 生きていれば本当に悲しく辛いことも多いのですが、
      この詩のようにそれを抱えながら生きていけばいつか
      その人の生き方そのものが美しく輝くでしょう。
     
     『愛の言葉』
     
     まだ 口もきけない赤ちゃんにも
     母親は いつも話しかけている
     「ほら 花よ!」「青いお空よ」
     
     こうして
     子どもが 大きくなるまでの間に
     幾千 幾万の 愛のことばが
     そそがれることでしょう
     
     明るい五月の空にむかって
     今日も 母と子が話している
     「ほらね 高い高い こいのぼり」
     
    * 母という偉大なものを、こんな切り口で詩にするのが
     高田さんの特徴でしょう。本当にホンワカします。
     
    >とまあ、もっともっと紹介する高田さんの詩はいっぱいありますが、
     時間がぁ~~

  • >>5828

     高田敏子さんの詩はホッとする。
     日溜まりのようなホンワカとした温もりに包まれる。
     題材は本当に身近なその辺にいくらでも転がっているようなものだが、
     それを詩にするのはできそうでできないことは、少し詩を書く私にも
     わかる。主婦の詩、家庭人の詩、強烈な言葉も印象もないが、結局は
     そんな日々の暮らしこそが幸せなんだと、私に再認識させてくれました。
     私は高田敏子全詩集の一冊しか持っていませんが、何回読んでも素敵な
     詩が多い。上質な詩と呼べば良いんだろうか。
     
     『母の手』
     
     夜半目覚めて
     廊下をこしらに近づいてくる
     静かな母の足音を聞くことがある
     それを空耳と知りながら
     ふすまがなお静かに開けられて
     母の手が 私のふとんをかけなおす気配を
     感じている
     
     母の愛は
     母が逝ってもなお
     寒い夜の私をあたために来る
     
     白髪の
     老いた母の 細い手
     
    >母の子に対する愛は深く果てなく、なんてことは言葉だけの表現。
     高田さんの詩を読めば、自分の心のどこかを、ギュッ、ギュッと
     押される感じがしますよね。そこが良いんですよね。

  •  いやあ、本当に寒い。
     先ほどお米を研いで今炊飯器で炊きあがるのを待っています。
     今晩は鮟鱇+牡蠣鍋、う~ん相変わらずグルメじゃ(笑
     時々無洗米を使おうかとの思いがよぎるのですが、あの冷たい水で
     研ぐという行為位は残しておかなくちゃありがたさが半減する、と
     の思いでこれからも頑張ろう(大したことじゃありませんが…)
     
     さて昨日は、詩集の大整理?を敢行しました。
     作家別にすぐわかるように並び替えただけなんですが(__;)、それに
     してもここにお邪魔するようになったからか、ずいぶんたくさんの詩人
     の詩集を買ったものだと我ながらびっくりしています(笑
     あとわずかですが、できるだけ私が読んだ詩人たちを紹介したいですね。
     
    >二月のあかり

     冬の芽(冬芽)が好きですねぇ。
     特に桜。2月頃から固い芽をつけますが、あの中で春咲く準備をしている
     んだなあ、とおもうと、とても愛おしくおもわれます。
     私たちは結果(開花など)しか見ていませんが、その前にはいろいろな準
     備があってのこと、そのことをお母さんの比喩でたとえるのが、さすが、
     りんさんらしい。
     冬野には何もないように思われますが、地中にはその日のために、一生懸
     命仕事をしているものたちがいる、この事を心がけなくちゃ、ね。

  • >>5826


    お早うございます。
    こちらは寒い寒い一日が始まりました(泣)。
    雪国では、降雪中の事故も発生していますね。
    高齢の方がやむなく雪下ろしをされていての惨事です。
    私も田舎に帰るたびに目にしますが、お年寄りの単身所帯が
    徐々に増えています。色々な問題もあるでしょうが
    住み慣れた土地を離れるのは、身を切る思いでしょう。
    でも、心配なことも多いですよね。
    移動販売車や町が補助金を出して安く利用できるタクシーなど
    多少の対応はしてくれているようですが、
    なかなか難しいです(泣)。正解がありませんので。

    茨木さんの2作のご紹介、ありがとうございました。
    「歳月」は、彼女の死後刊行された詩集でしたね。
    早世されたご主人に寄せた作品の数々に
    彼女の別の一面を知った思いがしました。
    与謝野晶子並みの情熱家だったように感じました。
    常にブレない感性で、小気味よい作品を作られていましたが
    心の奥底では、こんなに熱い火が燃えていて
    それが彼女の創作のエネルギーだったのか、と
    私なりに納得がいきました。

    私からは、りんさんの「二月のあかり」です。
    2月には、このトピも消えていますので、
    今のうちに。。。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

       二月のあかり     石垣りん

    二月には
    土のなかにあかりがともる。

    遠足の朝など
    夜明けの
    まだ暗い空の下で
    先に起き出したお母さんが
    台所のデンキをつけるように
    旅のしたくを始めるように。

    二月にはぽっかり
    土の窓にあかるいものがともる。
    もうじき訪れる春を待って。

    草の芽や
    球根たちが出発する
    その用意をして上げるために
    土の中でも
    お母さんが目をさましている。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    *春を待つ気持ちが、柔らかく優しく表現されていますね。
     読み手の心にも、ほっこりあかりが灯るようです。

  • >>5823

    書き急ぎするわけじゃありませんが、茨木さんの詩集歳月より
    印象に残った二編を紹介させて下さい。
    私の心情にぴったしの詩でした。

      『歳月』 茨木のり子

      真実を見きわめるのに
      二十五年という歳月は短かったでしょうか
      九十歳のあなたを想定してみる
      八十歳のわたしを想定してみる
      どちらかがぼけて
      どちらかが疲れはて
      あるいは二人ともそうなって
      わけもわからずに憎みあっている姿が
      ちらっとよぎる
      あるいはまた
      ふんわりとした翁と媼になって
      もう行きましょう と
      互いに首を締めようとして
      その力さえなく尻餅なんかついている姿
      けれど
      歳月だけではないでしょう
      たった一日っきりの
      稲妻のような真実を
      抱きしめて生き抜いている人もいますもの
      
      
      『占領』 茨木のり子

      姿がかき消えたら
      それで終り ピリオド!
      とひとびとは思っているらしい
      ああおかしい なんという鈍さ

      みんなには見えないらしいのです
      わたくしのかたわらに あなたがいて
      前よりも 烈しく
      占領されてしまっているのが

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  • >>5821

     いやあ、寒い。
     でもこれが冬だ! そしてその先に春があるのじゃ。
     
     マサさんも少しは元気になられましたかねぇ。
     自分に与えられた寿命を生き切るようにお伝え下さい。
     そして前にも言いましたが、奥様が、あなた素敵な生き方だったわ、
     私の選んだ人だけの事はあるわ、本当にご苦労様でした、と、そう
     言ってもらえるような人生を歩まれる事を祈念しているとお伝え下
     さい。
     
    >水の星

     ほんとうにね、この星が、水の星がある奇跡、幸運。
     なのに人間たちときたら…
     茨木さんの、人間に対する、いや現代人に対する、警鐘とでも言うんで
     しょうか、そんな思いが伝わってきます。
     ここは背骨のように茨木さんの詩を貫いている思いのように思います。
     便利さと引き替えに失ったものへの警鐘かもしれませんね。
     
     今度の家で息子4Kが映るテレビを買うそうで、私は彼が見ているお古を
     もらいます(笑 でもまあ、綺麗に見えるかの問題じゃなく、作品の
     内容の問題だとおもうんですけど…

  • >>5821

    文字数が足りませんので、こちらに…

    hanaikadaさんはご存知と思いますが、私ははこのトピ以外に
    「重松清さん」というトピを持っています。
    昨夜、こちらのトピにマサさんから
    ~hanaikadaさんに、くれぐれも宜しくお伝えください~
    との伝言がありました。

    奥様が亡くなられた直後は、色々な愚痴を聞いていただいたお礼と
    (辛いことを思い出させてしまった)お詫びだそうです。

    このトピも閉鎖になってしまい、何とも寂しい限りです(泣)。

  • >>5820

    こんばんは。
    やはり例年通りの寒さがやってきましたね。
    今年初めてエアコンを暖房にして使いました。

    茨木さんの「マザー・テレサの瞳」をありがとうございました。
    彼女の無償の愛は、瀕死の病人を励まし、
    飢えに苦しむ子を救い、、、と
    言葉では言い尽くせません。
    医療行為ではなく、ただ彼ら彼女らに寄り添うことで
    安らぎを与えてくれましたよね。
    偉大としか言いようがありません。
    茨木さんは、彼女の瞳に「狂」を見つけられたようですが
    マザー・テレサの行為そのものが、まさに「狂」でした。
    己を突き動かすものに誠実に向き合い、
    粛々と己の道を歩まれました。
    報われないことも多々あったでしょうし、
    むしろそちらのほうが多かったことでしょう。
    私は彼女の行為に、人間の「善」の可能性を見た気がします。

    私からは、茨木さんの「水の星」です。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
       水の星    茨木 のり子

    宇宙の漆黒の闇のなかを
    ひっそりまわる水の星
    まわりには仲間もなく親戚もなく
    まるで孤独な星なんだ

    生まれてこのかた
    なにに一番驚いたかと言えば
    水一滴もこぼさずに廻る地球を
    外からパチリと写した一枚の写真

    こういうところに棲んでいましたか
    これを見なかった昔のひととは
    線引きできるほどの意識の差が出てくる筈なのに
    みんなわりあいぼんやりとしている

    太陽からの距離がほどほどで
    それで水がたっぷりと渦まくのであるらしい
    中は火の玉だっていうのに
    ありえない不思議 蒼い星

    すさまじい洪水の記憶が残り
    ノアの箱舟の伝説が生まれたのだろうけれど
    善良な者たちだけが選ばれて積まれた船であったのに
    子子孫孫のていたらくを見れば この言い伝えもいたって怪しい

    軌道を逸れることもなく いまだ死の星にもならず
    いのちの豊饒を抱えながら
    どこかさびしげな 水の星
    極小の一分子でもある人間が ゆえなくさびしいのもあたりまえで

    あたりまえすぎることは言わないほうがいいのでしょう

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    *谷川さんの「孤独」の共通するものがありますね。
     地球の存在そのものが、一つの奇跡ですよね。

       <続きます>

  • >>5819


     『マザー・テレサの瞳』 茨木のり子

     マザー・テレサの瞳は
     時に
     猛禽類のように鋭く怖いようだった
     マザー・テレサの瞳は
     時に
     優しさの極北を示してもいた
     二つの異なるものが融けあって
     妖しい光を湛えていた
     静かなる狂とでも叫びたいもの
     静かなる狂いなくして
     インドでの徒労に近い献身が果せただろうか
     マザー・テレサの瞳は
     クリスチャンでもない私のどこかに棲みついて
     じっとこちらを凝視したり
     またたいたりして
     中途半端なやさしさを撃ってくる!

     鷹の眼は見抜いた
     日本は貧しい国であると
     慈愛の眼は救い上げた
     垢だらけの瀕死の病人を
     ――― なぜこんなことをしてくれるのですか
     ――― あなたを愛しているからですよ
     愛しているといる一語の錨のような重たさ
     自分を無にすることができれば
     かくも豊饒なものがなだれこむのか
     さらに無限に豊饒なものを溢れさせることができるのか
     こちらは逆立ちしてもできっこないので
     呆然となる

     たった二枚のサリーを洗いつつ
     取っかえ引っかえ着て
     顔には深い皺を刻み
     背丈は縮んでしまったけれど
     八十六歳の老女はまたなく美しかった
     二十世紀の逆説を生き抜いた生涯

     外科手術の必要な者に
     ただ繃帯を巻いて歩いただけと批判する人は
     知らないのだ
     瀕死の病人をひたすら撫でてさするだけの
     慰藉の意味を
     死にゆくひとのかたわらにただ寄り添って
     手を握りつづけることの意味を

     ―――言葉が多すぎます
     といって1997年その人は去った

  • >>5818

    こんばんは。
     寒いですねぇ。
     
     茨木のり子さんも、読んでいて感銘を受ける詩が多いですよね。
     一番かどうかは知りませんが、私にとっては今回紹介する詩は
     とてもインパクトがあり、自分の考えの大きな部分で一致して
     いました。よくぞ詩にしてくれた、そんな思いでいっぱいです。
     科学万能、数字万能、有意差万能、エビデンス万能の世界にお
     いて、一石を投じる詩だと思うのですが、なかなか取り上げら
     れる事がない。ちょっと残念です。

  • >>5817

    お早うございます。

    お孫さんのご誕生、おめでとうございます!!
    奥様が存命でしたら、きっと、、、とお思いでしょうね。
    何はともあれ、新しい命が生まれたのは、嬉しいニュースです。
    これからの健やかなご成長をお祈りします。

    吉野さんの「一枚の写真」のご紹介、ありがとうございます。
    我が家は息子たちが中学生になった頃から、
    家族写真を撮っていません(泣)。
    年頃の照れなのでしょうが、そのまま現在に至っております(汗)。
    この作品のひな祭りの姉妹、本当にほほえましいですね。
    「幸福」が加わったご家族の、ご多幸を想像します。
    みんな、好い人生を送ってほしい、という親の願いは
    子にも必ずや伝わるものと信じます。

  • >>5816

     こんばんは。
     新しい孫が加わりました。
     家内を亡くして長い歳月が過ぎました。悲しみは心の奥に深く流れています
     が、生きていれば、こんな嬉しいことにも出会えます。
     人生は結局、悲しみ、喜び、半々で帳尻が合うんじゃないでしょうかね。
     
    >吉野さん、好きな詩がありすぎて困ってしまいますね。
     まずあの穏やかなお顔が良い(笑 詩の内容そのままのお顔ですからね。
     有名な祝婚歌も結婚する二人だけじゃなく、生きていく知恵です。
     夥しい数の、は母の限りない愛を歌っており、読むたびに妻の事を思い出し、
     涙ぐみます。その他余りにも多すぎます…
     
    >生命は

     吉野さんの代表作の一つでしょうね。
     人間も含め完璧な生命(もの)なんてありえない、お互いがお互いに
     影響し合ってこの世ができている。このバックボーンがこのような美しい
     詩を作らせたのでしょう。常に完全なものへの疑問を抱いていた方だった
     ように思います。不完全な(特に人間に)ものへの慈しみのまなざしが、
     多くの共感を呼んだ気がします。
     
     「一枚の写真」
     
     壇飾りの雛人形を背に
     晴着姿の幼い姉妹が並んで坐っている
     姉は姉らしく分別のある顔で
     妹も妹らしくいとけない顔で
     姉は両掌の指をぴったりつけて膝の上
     妹も姉を見習ったつもりだが
      右掌の指は少し離れて膝の上

     この写真のシャッターを押したのは
     多分、お父さまだが
     お父さまの指に指を重ねて
     同時にシャッターを押したものがいる
     その名は「幸福」 
     
     幸福が一枚加わった
     一枚の写真
     
     この詩もすてきだぁといつも思い出しています。
     特に家族写真を撮るときに噛みしめながら撮っています。
     幸せの意味がじんわりと心に沁みてきますよね。

  • >>5815

    長くなりそうなので、新しいページを使います(笑)。
    今日は吉野さんの「生命は」です。この作品も大好きです。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

       生命いのちは   吉野 弘

            生命は
            自分自身だけでは完結できないように
            つくられているらしい
            花も
            めしべとおしべが揃っているだけでは
            不充分で
            虫や風が訪れて
            めしべとおしべを仲立ちする

            生命は
            その中に欠如を抱いだき
            それを他者から満たしてもらうのだ

            世界は多分
            他者の総和
            しかし
            互いに
            欠如を満たすなどとは
            知りもせず
            知らされもせず
            ばらまかれている者同士
            無関心でいられる間柄
            ときに
            うとましく思うことさえも許されている間柄

            そのように
            世界がゆるやかに構成されているのは
            なぜ?

            花が咲いている
            すぐ近くまで
            虻の姿をした他者が
            光をまとって飛んできている

            私も あるとき
            誰かのための虻だったろう

            あなたも あるとき
            私のための風だったかもしれない

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    *最後がすてきですね。私も誰かの役に立っているという安心感、
     生きる上での張り合いに繋がります。

  • >>5814

    こんばんは。
    こんなに気温の差が激しいと、体調も心配になります。
    お医者様の話では、この頃風邪の患者さんが多いとのことでした。
    お互いに衣服で調節して、ほどほどの体温を維持しましょう!

    レオ・レオニは「スイミー」の作家ですね。
    私の場合、谷川さんの功績は「マザー・グース」の翻訳です。
    詩人という職業(?)を確立した功績も大きいですね。
    昔で言えば、小林秀雄が評論という領域を拓いたことに似ています。

    hanaikadaさんは、新しいお孫さんが生まれるそうで
    素敵な年の瀬を迎えますね。おめでとうございます。
    認知症の家族のご相談、最近よく耳にします。
    かつて例のない長寿社会になり、単純に喜んでばかりも
    いられませんよね。看る側にゆとりがないと、優しく接することも
    できませんし、かと言って見限るわけにもいきません(泣)。
    本当に深刻な問題ですよね。

    >年下の子より手渡すお年玉

    金額が微妙でしょうから、それが正解と私も思います。
    お年玉を袋に入れる時が楽しいでしょうね。
    羨ましい限りです!!

      <続きます>

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