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「走る神」は、かくも無慈悲だったのか? オリンピックの合間に開催される陸上世界選手権のことである。これもモスクワ五輪を資本主義国がボイコットし、そのお返しで、ロサンジェルス五輪を社会主義国がボイコットし、その代替として始めた大会である。オリンピックの前哨戦ぐらいしか見られていなかったこの大会を、メジャー大会に引き上げたのが、ジャマイカ出身のウサイン・ボルトの出現であった。何時も世界最速記憶を期待させてくれた。

  オリンピックの100、200、リレーで3冠を獲得して来たボルトが、今大会を最後に競技会から引退すると発表した。陸上ファンは、最後の金メダルを獲得し有終の美を飾るものと期待していた。ところが、100メートル決勝のスタートで出遅れ、3位になるという誰も予測していなかった結果になった。ボルト本人が一番ショックを受けたことだろう。

  ボルトは、容姿に似合わず可成りの人格者らしい。ボルトを取材した知人のディレクターから聴いた話であるが、他人に対し、もの凄く気を遣う男らしい。また、陸上で獲得した相当な金額を、ジャマイカの子供たちのために寄付しているという。恩返しの積りだろう。

  第4走者としてバトンを受けたボルトは、先行する英国と米国を追うとした矢先に、ハムストリングスに異変を来たし、その場で蹲ってしまった。その隣の隣を走っていた日本に追い抜かれ、これでメダルの獲得は夢と終わってしまつた。全く以て予測しなかった結果だったが、会場の観客は暖かい拍手を送った。それは誰もがボルトの功績を認めているからである。

  「走る神」のことであるが、ボルトに試練を与えたとしか思えない。トップを維持することは難しいことではあるが、30歳での引退は早過ぎるのではないか。そして、ボルトはこのリレーでゴールまでたどり着いていないので、未記録のままである。それを東京五輪で再度挑戦しろ、と示唆したのではないかと思った。東京五輪で、ボルトが「リベンジ」のため引退を翻し挑戦してくれば、陸上競技がこの上なく盛り上がるであろう。「走る神」は、その試練を与えたのではないか、としか思えてならない・・・。(日本チームは3位に食い込み銅メダルを獲得した。素晴らしい結果であるが、実質的には4位であった。このことを胸に置き、東京五輪では更なる上位を目指して欲しい)

島津惟新義弘公 「走る神」は、かくも無慈悲だったのか? オリンピックの合間に開催される陸上世界選手権のことである。こ