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    5月10日 23:54

    もしもあの席に私がいたならどうだっただろう

    緊張するのは当たり前

    はい、緊張してまして、
    何がなんだか分かんなくて、、、
    なんてね、頭を掻いてすむはずもなく

    じゅうせきをになったみに
    あまるせきにはじないよう

    末席の隅で一言一句書き漏らさぬように、
    それが我が身に与えられた使命だからと
    懸命にメモを取るだろう
    当たり前に紙に残すだろう

    、、、誇りとして
    、、、プライドとして

    たかが、
    いたかもしれない存在だったとしても、、だ

  • わたしはわたしのために息をする

    わたしはわたしのために目を開き見、
    わたしはわたしのために耳を傾け聞く

    わたしの思いはわたしの昨日のためにあり
    わたしの思考はわたしの明日のためにある

    おまえはこんな生き方をするために
    この世に立ち寄ったのか

    問いながら

    誰のためでもなく
    わたしはわたしのために生きる

  • 初めて八ヶ岳に登ったのは、もう20年以上も前のこと

    美濃戸口から入り硫黄岳、横岳を経て赤岳へのルートを登ったのは紅葉の進んだ9月の終わりだった
    おおだるみ、こだるみ、迫り出す岩場を
    鎖場梯子にとっつき、赤岳天望荘にやっとの思いでたどり着き宿をとった

    西に茅野の町を東に小淵沢の町を、
    ポツポツと灯る街明かりを見下ろし
    明日の早朝に挑む八ヶ岳の最高峰赤岳を震える思いで仰ぎ眺めた

    いつもそう

    神経質な私はいつもそう

    ここにたどり着くまでの、足を踏み外せば奈落の底の景色を思い出し、
    それを超えて来た嬉しさで興奮し、
    そこが空気の薄い高所であることも手伝って
    床についても、寝なければならないのになかなか寝付けないでいた


    寝付けない夜の間、山には初雪が降りた

    薄い初雪
    下界では踏み縛れば難なく溶けていくだろう初雪

    でも、2800を超えるそこでは薄い雪は氷となり岩に張り付く

    アイゼンを装備してこなかった
    まさかとの思いからアイゼンを持って来なかった

    天気予報は晴れ

    少し日が当たれば薄い雪は溶けるかもしれない
    山荘から赤岳へ進むうちに岩に張り付いた氷は溶けるかもしれない
    だから、予定通りに赤岳を目指そう
    それを目標にここまできたんだから、、

    そう言う私にパートナーは言った

    今回は諦めよう
    これから何度でも来れるんだから、
    今回はやめよう


    あれから、20年以上経つけど、
    あれから一度も八ヶ岳には行っていない
    八ヶ岳の最高峰、赤岳への登頂は未だ果たせないでいる

    でも、諦めたことを一度として悔やんだことはない
    あの時、諦めようと言ってくれたパートナーに感謝さえしている

    あの時の私たちの力量では
    初雪の八ヶ岳に挑めるはずなどなかった

    幾多の山に足を踏み入れながら、
    何度も何度も思い知らされたから、、

  • 水は下に向かって流れる
    高い所から低い所へ
    ほんの少しの高低差を見つけ
    引力の法則にのって忠実に流れる

    ひとはこの流れを変えることを発明した
    ポンプがそう
    力を加えると水は上にスイスイ流れるようになる

    だけど、
    ひとが引力の法則に抗う前から
    水をスイスイと上に流してきたものがいる

    それは、植物
    植物は張った根から水を吸い上げ
    地上遥かな枝の先にまで水を届けることができる

    下から上へと
    引力の法則の届かないどんな力が
    植物には備わっているんだろう


    春に木を切ってはいけないよ
    切り口から水が流れ出てしまうから、、

    あんずの木を見ながら呟いた父の言葉を思い出す

    黒くなった幹に耳を当てれば
    とくとくと、勢いづいた水が
    上へ上へと流れていくのが聴こえるようだ

  • あんずの花が散る

    はらはらとあんずの花びらが風に舞う
    わずか10日足らずの命を終え地に落ちていく

    あんずの花は、散る
    桜や梅やさざんかと同じように
    いちまい、いちまい、花びらが散ってゆく
    風がなくてもその時がくれば自分の力で散る

    けれど、今年は花開いたと同時にやってきたひよどりに
    花の付け根をついばめられ、
    ぽたぽたと、いくつもの花が花の形そのままに地に落ちた
    まるで、椿の花のように

    ひとつふたつと数えきれないほどの花を拾いながら、
    はらはらと散りたかっただろうな
    まだ結実できてもいないだろう開きかけのつぼみまでついばむなんてね
    自然の摂理とはいえ、無情なひよどりに憤りさえ覚えた

    鳥は光り物が嫌いらしいから、CDのジャケットを枝に吊るしておくといいらしいよ
    と、無残な花の屍を見たお隣さんが忠告してくれたけど、
    なんだかそれも無粋に思えて、
    見かけると声をかけ追っ払うという地味な手段しか対抗できずにいた

    かしこいひよどりは、全部の花はついばまない
    ちゃ~んとバランスを考えてついばんでる
    この木には大きな実がなる
    経験値なのか、知識なのか、ひよどりはちゃんと知ってるかのように
    充分結実できるだけの花は残してついばむ

    選ばれなかった、、いや、選ばれし花々は
    付け根にちゃんと実を孕んだだろうか

    ひとつふたつと花びらが散るようになってからは、
    盛りを過ぎた花には見向きもしなくなったのか、ひよどり
    鳴き声ひとつ聞かなくなった

    木は役目を全うした花びらを風に送りながら
    ずっとそうしてきたように
    今年も次の季節の支度にとりかかる

  • 三月

    今年も花が咲いた
    あんずの花が一斉に咲いた

    この木を植えてどれくらい経つだろう
    信州の町から苗木を携えて、何もない小さな庭に植えたのは
    25年以上も前のこと

    こんなに大きくなるなんて、、


    あんずは桜と違い桃や梅と一緒で
    剪定しなければ途中枝が出て伸び放題になる
    教科書によると、この木の剪定時季は冬
    一月か遅くても二月中には終えなければならない

    だけど、今年も剪定できなかった
    ただでさえ億劫なのに、
    真冬の寒空の下、高枝切りばさみを振りかざす気力もなく、
    それに加え、じっと枝を見れば、、、なんて健気、
    凍える寒さにじっと耐え春を待つ花芽のついた枝を
    切り落とすことにも気が乗らずに毎年冬を越してしまう

    去年剪定したのは八月
    我が家の剪定時季は毎年八月
    剪定教科書から逸脱した真夏に
    無精ひげのように伸び切ってもうもうと茂った枝を
    ご近所さんにどう思われるだろうと、重い腰をあげ、
    可憐な花の芽は切れなくても
    虫のついた葉にはさほどの情も移らず
    これでもかと容赦なくばっさり切り落とすのが常、

    冬になり葉の落ちた枝は不揃いで不恰好
    それでも、冬の寒さとマニュアルから逃れた花芽がびっしりとつき
    今年も暖かな陽気に誘われ、あれよあれよと花を開いている

    どこで嗅ぎつけたか
    ひよどりがおたけびをあげ
    めじろがせわしなく枝から枝へ乱舞する

    無色だった庭は
    あんずの花を合図に
    他の木々の花々も咲きほころび始めた


    、、、、、春がきた

  • 今年の仕事が終わった

    最後のひとりを、ばいばいと送り出した後
    お疲れさまと仕事場を出る

    ひとり稼業のあのひとは
    今年も窓硝子を磨き、床にワックスをかけ
    お疲れさんとひとり
    今年の鍵を掛け家路に着くのだろうか


    きんっと空気が音を立て
    澄んだ夜空には半分にも満たない月が浮かぶ

    取り立てて何もなく
    良いことも悪いこともない1年だった

    なにもないということは
    それは、とてもしあわせなこと

    会ったこともないひとの言葉が
    まろで懐かしいひとの言葉のように
    しんしんと心に積もる

  • 昨日の夕方から降り始めた雨
    しくしく泣くのかなと思っていたら、
    屋根を地面を叩きつけるような、号泣

    なにがあったんだろう

    この季節には似つかわしくない雨音に
    思わずにはいられなかった

    、、、もっと気温が低ければ雪になったかも

    別にクリスマスを祝うような歳でもないけど
    ホワイトクリスマスになっただろうに
    それを喜ぶいくつもの顔が浮かんでは消えた

    世界中の夜空を飛び回っている(だろう)サンタクロース、、濡れなければいいけど



    無粋な雨は
    すっかり葉を落とした庭木たちに
    少しばかりの泣き痕を残して朝を迎える前に上がった


    ひとあめごとにきせつはすすむ

  • いつもの帰り道、
    東の空に昇ったばかりの月

    満月は昨日、
    1日分だけ少しひしゃげた月が
    それでも見事なほどの大きさで
    ぽっかりと浮かぶ


    月の大きさはどうやって決まるのだろう

    地球と月の距離は
    多分、、変わらない

    なのに、同じ満月でも季節によって大きさが違う

    昇ったばかりの月は黄色い

    暗い夜空に黄色く浮かぶ月を見ていると、
    まるで宇宙を見ているような気になる

    、、確かにね

    わたしは間違いなく宇宙に向かって
    立っているんだけどね

  • トサミズキの葉が散り始めた

    トサミズキの葉はあんずの葉が散り始めてから
    重い腰をあげるようにゆっくりと黄色く染まり始める
    この木は葉の染まり方が他の葉と違いとても特徴的で、葉脈だけ緑色に残し黄色く染まる
    黄色い葉にくっきりと描かれた葉脈の緑の線は
    まるでクレヨンで描かれた絵のようでとても美しい

    緑に残った葉脈もやがては黄色く染まり
    淡い黄色だった葉は日が経つにつれ濃い黄色から橙色へと染まりを進める
    子どもの頃、絵の具を混ぜ合わせて作った色のように
    緑色と黄色と橙色がひとつの葉の上で混ぜ合わさっていく様は毎日観ていて飽きない

    橙色が進むとやがて枯れ葉と同じ茶色に染まる
    それからやっと、トサミズキの葉は落ちる

    高さのさほどない低木からの落葉は
    風に舞うこともなく
    足下の地に戻るように静かに落ちる

    たまに、
    すぐ横で佇むビバーナムスノーボールの紅い葉の上に
    染まることなく立ち止まるけれど、、


    同じ日に植えたこのふたつの木は
    同じ年月をここで過ごしたくせに
    身体の奥に秘めた遺伝子に忠実で
    決して隣の色に染まることはない

    黄色は黄色に
    紅は紅に
    与えられた己を見極め
    降り注ぐ自然の光にだけ反応し忠実に染まる


    朝の柔らかな陽射しは雲に遮られ
    この町、午後には雨になる予報

    晩秋と初冬の間に揺れる淡いカーテンを開け
    寒さがこの町に腰をおろし始めた

  • 雪が降ってた

    山里を抜ける頃からちらちら降り始めた雪は
    峠を越える古いトンネルを抜けると
    予想した通りの雪景色に変わった

    除雪の間に合わない道は白く
    立ち往生している車の横を抜けながら
    何度も何度もタイヤを換えてきて良かったと思った

    天気図に描かれた気圧配置と
    数え切れないくらい足を運んで身に付いた勘が
    雪になるかもしれないと教えてくれた


    ここの雪はわたしの住む町に降る雪とは違ってとても軽い
    こんな雪がほんとに積もるの?
    年に一度か二度、降る雪は大きく重く
    そんな綿雪しか積もらないと信じてた頃は
    軽くしんしんと降る小さな雪が
    あっと言う間に辺りを白く包む様に、驚いた


    11月の雪
    まだ、11月の雪
    すっかり冬を迎えたここでも
    暖かい日が戻ればすぐに溶けてしまうだろう
    根雪にはならない淡雪


    山は吹雪いていると聞き
    立ち入ることは出来なかったけれど、
    ぱちぱちとはぜる薪ストーブの音を聴きながら
    窓越しに外灯に照らされ風に流れる雪を
    飽きもせずにいつまでも見てた


    これから春まで何度、雪に出会えるだろう

  • 雨が降ってる

    夜明け前に降り始めた雨が
    この時間になってもやまない

    はらはらと
    紅く色付いたあんずの葉が
    泣きながら落ちてくる

    ビバーナムスノーボールの葉も
    トサミズキの葉も
    額紫陽花の葉も
    それぞれに与えられた色に色づき始めて
    小さな庭は一気に冬景色へと変わる


    不思議なのは
    花が咲いた順に
    葉も色づきはじめること

    わたしの庭では
    いちばん最初に春を告げたあんずの木が
    いちばん最初に冬支度を始める

    降り注ぐあんずの葉に促されるように
    下に佇む木々たちは葉を染め始める

    紅く、黄色く、
    雨に濡れた葉は
    少し生気を取り戻したかのように
    艶やかに揺れる


    週半ばには
    この季節いちばんの寒さになるとか、

    山は雪だろうなぁ

    タイヤ、、換えなければ

  • 琵琶湖の南、滋賀の桐生に
    金勝山という山がある

    かねかつやま、、と書いて
    こんぜやま、と呼ぶ

    いくつかの山が連なるさまから
    金勝アルプス、
    湖南アルプスとも呼ばれる

    麓のキャンプ場から2時間ほどで
    てっぺんの天狗岩に辿り着ける

    左に比叡山遠く武奈ヶ岳
    右に三上山、
    それらの山裾に広がる街並みが
    ぐるりと琵琶湖を取り巻く美しい景色を
    ここからは一望できる

    数え切れないほど足を運んだ

    杉林を抜け、せせらぎの音を聞きながら
    落葉樹の森を緩やかに登り、
    木々に囲まれた稜線を歩くコースは
    変化に富みとても楽しい


    この山を成す背丈の低い落葉樹は
    人の手によって植えられたもの
    この金勝山は
    治山事業によって再生されつつある山だ


    山はひと昔前までは
    木ひとつない裸山だったそうだ

    京の都の神社仏閣、おそらく御所などを作るための木を
    この山から伐採した
    東山北山、京の町にだって山はあるのにね
    ここの山なら平気と
    お隣の滋賀の山の木を根こそぎ剥ぎ取って
    今の京の町は作られた

    後に残った無残な裸山は
    当然のように災害を招いただろう
    麓の村や町は雨が降る度に土砂を含んだ洪水に襲われたそうだ


    山に緑を取り戻そう

    裸山を仰ぎ見ながら
    仕方がないと諦めず
    誰かが声を挙げてくれたから
    せせらぎの音に包まれ緑に覆われた美しい山ができた


    ひとの手の入らない自然でできた山もいいけれど
    琵琶湖の南にゴツゴツと鎮座する
    この金勝アルプスは、、誇りだ

  • 帰り道
    空には切り損ないの
    薄切り大根

    まん丸にはまだ足りない
    少し歪な形で
    煌々と明かりを放つ


    今日から11月




    、、、、おめでとう

  • ひんやりと肌寒い朝、
    昨日から降り続いた雨は止む気配を見せぬまま
    時にきつく葉を地を打ち付け
    昼前にやっと上がった

    ひと雨ごとに季節はすすむ

    泣き濡れた葉の陰で
    その生涯を閉じた小さな生き物は
    次に繋ぐ命を
    湿った地のどこかに残せただろうか


    きみはなんのためにうまれたの?

    、、、命を繋ぐため

    鳴く蝉すべてが
    子を腹めたわけではないだろう

    幼な子の手にかかり生き絶えた蝉を
    わたしはいくつも地に葬った


    10月
    生き残れし小さな生き物は
    次に繋げる命を抱え
    冬支度を始める

  • 10月の声を聞いたかのように、
    お隣の庭のムクゲが花の時季を終えた

    なのに、なのに、
    そろそろその季節を迎えたはずの
    金木犀の香りがしない
    むせ返るほどの香りに包まれるはずが
    、、、一向にしない

    どうしちゃったんだろうと思うけど、
    わたしより、
    わたしたち人間より、
    植物たちのほうがずっと
    自然の営みに忠実に生きてるはずだから
    心配するには及ばないだろう

    時を風に問い
    花は草は木は
    ただそこに佇む

  • 今宵は中秋の名月

    満月には二日早い
    少しひしゃげた月が
    神々しい光を放ちながら
    雲ひとつない夜空に浮かぶ


    なぜ、満月でもないのに名月なんだろ

    完璧な丸が美しいとは限らない、、

    そうね、むかしのおひとは風情があったのね

    ススキの穂を活けて
    団子を皿に乗せて
    ペッタンペッタン餅つきをする
    月のウサギを探そうか、、、

  • 裏庭に出る勝手口を開けると
    小さな庭の向こうに畑が広がる

    猫のひたいより狭い裏庭で陽の当たる夏だけ
    万願寺唐辛子を育てるわたしとは違って
    畑の所有者さんは季節ごとに見事な野菜を作られる

    土に化学肥料を混ぜて
    虫よけにと時折薬も撒いて、、
    青々とした美しく立派な野菜を作られる

    スーパーに並ぶ野菜だって
    そうして育った野菜がほとんどなんだけど、
    目の前でその光景を見ると
    美しく立派な野菜たちが
    少しも美味しそうに思えなくなる

    規模からして
    おそらく家族と、余ればご近所に配る
    それくらいの量しか作らない畑なのに
    これでもかと化学肥料を混ぜ
    神経質なほど薬を撒く必要があるんだろうか
    ご家族は美味しいと食べているんだろうか

    うちの万願寺だって
    雨に運ばれた化学肥料が土に溶け
    風にのった薬がかかってるかもしれないんだけど、、

  • 雨が季節を押したのか
    この街、一気に秋模様

    隣の庭のムクゲの花がまだ咲いていて、
    その隣では木犀の花がポツリポツリと咲き始めた
    街がこの花の匂いに包まれるのももうすぐ


    新聞に浅田次郎さんのエッセイが載ってて
    毎朝楽しみに読んでる

    昨日のエッセイに
    若い頃なかなか小説家として芽が出ない頃
    自分の中に優先順位があって、
    ご飯を食べることよりも本が大事だったと、
    そして、
    本よりももっと大事だったものがあって、
    それは花だったと書いていた
    空腹で詰め込む知識もなくても
    部屋に花が絶えることはなかったと、、、

    殺風景な部屋に飾った一輪挿し

    素敵だなと思う
    それが浅田さんの根底に流れる美学なんだろうなと思う


    花を好きなひとが好きだ


    帰り道、
    花を買ってこよう

    今夜は半分に膨らんだ月が
    空の真ん中辺りに浮かんでいるだろう

  • 毎日同じ道を通って仕事場へ向かう

    ほぼ同じ時間に家を出て
    ほぼ同じ時間に通る電車を踏切で見送り
    ほぼ同じ時間に国道を横切る横断歩道を
    ぽっぽぽっぽ、、と音にせかされ渡る

    同じ道でも毎日が少しずつ違う
    道端に生えている雑草は
    昨日と同じ形はしていないし
    見上げた空の色、雲の形
    ほほを撫でる風さえ毎日違う

    わたしのひとみを通して景色は映り
    わたしの歩幅に合わせてわたしの時間は流れる
    、、、、流れているようにみえる


    1キロ足らずの道のりで
    ほぼ毎日出会うひとがいる

    どこで暮らし
    どんな仕事に就き
    どんなものを好み
    どんなものを嫌い
    どんなことを考えながら毎日この道を歩いているのか
    なにひとつ知らないけれど
    毎日すれ違う日々を重ね
    いつしか軽く会釈を交わすようになった
    小さな声で「こんにちは」と挨拶をすることもある

    おそらく、これからも
    軽く会釈を交わし、
    時折「こんにちは」と挨拶するすれ違いから
    はみ出ることはないだろう

    このひとにもこのひとのひとみを通した景色が映り
    このひとの歩幅に合わせた時間が流れていて
    その時間の中にわたしは溶け込むことはないだろう


    誰もが自分だけの景色を持ち
    誰もが自分だけの時間の流れを持つ

    それは
    果てない景色の中の一齣で
    際限ない時間の流れのなかの一瞬でしかないのだけれど、、

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